評価文(評語)フォーム 結果発表
1999年 夏休み企画より


 子どもの書いた作文に評価文(評語)をつけてもらうというこの企画、書いてメールで送ってくださったのはなんと2名!たいへんありがとうございました。
 送っていただいた作品をここでどのように取り扱うかにで、次回やったときの反応がまた違ってくるのではないかなあ、と思います。ここでは、「どくしゃの声」なども活用して、みんなで検討していきたいと思いますので、ご協力をよろしくお願いします。
 まず、掲示した作文は、次の通りです。

   ぼくの夏休み                      
                     禿山小学校6年2組  民上 夏夫
  
  今年の夏休みは、ぼく達6年生にとって、6年生になって最初の夏休みであり、
小学校生活最後の夏休みだった。  
  そしてその日は、禿山市沿線で禿山小学校が一番早く7月19日だった。
  その夏休みで一番印象に残っているのは、洛都に7回も行ったことだ。どうして
かというと、ぼくは目が少し悪くて、右目が1.5なのに左目は0.2なので、洛
都市4条14丁目のバス停の前で有名な、梅野眼科に毎日毎日通うことになったの
である。
  それでどういうことをするのかといえば、まず、眼科に飛びこんで、受けつけに
「民上です」というと、間もなく、「民上さん」と言う声が聞こえる。そして診療
室に入っていすにすわると、目薬チョンで終わりだ。そしてクライマックスは、会
計に「民上です」と言う。すると「180円です」という返事が返ってくる。そし
て180円を払って終わりだ。
  幸いこの通院も、8月19日をもって終わりになった。その間、視力左目が0.
2だったのが、な、なんと1.0にも回復したのである。
  通院通いの夏休みも、そんなに悪いものでもなく、kmsだのカクイだの、北武
デパートだの、〒だのにも行けた。特に郵便局は、切手収集家のたまり場なので、
洛都に行けただけ得をした。そう言えば、最近話題になっているkmsと北武の連
絡通路(北武の地下、五階、九階とkmsの地下、五階、八階)も見れた。カクイ
のすしもおいしかったし。
  ぼくにとって今年の夏休みは、苦くもあり、笑いもこもった夏休みだと都合よく
思った。
                                            −完−

 さっそくいただいた1通目は、SOLOさん(教育関係者)からでした。(8月22日受信)

「災い転じて福となす」といった夏休みだったのですね。「苦くもあり、笑いもこもった」という気持ちは伝わってきました。一番感心したのは「クライマックス」という言葉の使い方です。ちっとも盛り上がらないクライマックス! 最後の夏休みの「苦さ」がユーモラスに伝わります。切手収集家とどんな交流があったか書くともっとよかったかもしれません。残念だったのは「都合よく」という気持ちがよく伝わらなかったところ。今度は言い方を工夫してみてください。楽しい作文でした。目がよくなってよかったですね。

 確かに、「都合よく」というのはよくわからない表現ですね。それにしても一言で「災い転じて福となす」というのは絶妙です。
 その後、数度に渡って締切を延ばしたのにも関わらず、いただいたのはこれ1通のみに終わってしまいました。ちょうど私の学校の校内研修で作文指導における評価・評語について研究していた真っ最中だったので、私の学校で研究ブロックを組んでいる5〜6年の先生にも書いてもらうことにしました。
 しかし、次のような理由で書きにくいからなんとかしてくれ、と言われました。
○場面設定がない。国語の授業で書いたのか、そうでないのか。
○この子がどんな子だかわからないので書きにくい。。
○書きぶりが老成しすぎ。ホントに子どもが書いたのかしらん。
 そか。HPであんまり来なかったのもそんな理由があったのかもしれない。
 そう思った私は、次のような場面設定を加えてみました。
 (もっとも、白状するとこの作文、私が小学校6年生の時に書いたものです。実際は42人の学級でした。他はほぼ当時のままの場面設定です) 

この作文が書かれた「場面設定」。
 ○夏休み明けのある日、学級活動の時間に書かれました(国語の時間ではありません)。
 ○6年2組の児童数は25人で、民上夏夫(たみじょう・なつお)君はその中の1人です。
 ○あなたは担任の先生で、25人が書いた作文の1つ1つにコメントをつけますが、この作文はその中の1つです。
 ○禿山(はげやま)市は人口約3万、洛都(らくと)市は人口約35万です。禿山から洛都までは電車で約1時間半、電車は一日6往復しています。要するに、禿山はちょっとした過疎の町、洛都はちょっとした都会です。
 ○民上君の作文は、400字詰原稿用紙2枚分です(正確にいうと、1ページ200字詰めの作文帳で約4ページです)。学級の中では平均的な長さです。

 そして、フォーム上で、評語を書くときに意識した観点も書いてもらうことにしました。
 再出発して、最初にいただいたのがこれ。
 中島正子さん(教育関係者)です。(9月5日受信)

評語:自分の足で、いろいろなところに出かけてさまざまな体験をしたんだね。ちょっぴり大人になったきぶんかな。
観点:自分の生活するせかいのひろがりを意識させ、評価した。

 「自分の生活するせかいのひろがり」−これは、書いた本人も、指摘されなければ意識しないことが多いと思うので、この視点はとても良いと思います。

 ということで、この2通のみでした。
 ちょっと寂しいので、私の学校の先生方に書いてもらったものも載せます。校内研究資料より引用。

評語:通院ばかりの夏休みになってしまったようですが、1.0にまで回復してよかったですね。通院のかいがありましたね。
観点:民上君が思ったこと、感じたことに共感できるような評語を書こうと思いました。


評語:夏休みの出来事を持ち前のユーモアもまじえて書いています。夏休みは楽しかったですか?
観点:この作文の独特の口調(文の調子)に注目しました。


評語:
君の夏休みは、決して「苦い」ものではなかったと思います。もし、目が悪くなく、眼科通院の必要がなかったら洛都へ行ける回数はもっと少なくなっただろうし、もしかしたら家を出る前に「今日は眼科が終わったら○○へ行こう」なんて考えてワクワクしていたこともあったんじゃないかな。眼もよくなったし、行きたいところへも行けてHappyな夏休みだったと思いますよ。それから、せっかくよくなった視力です。大切にしましょう。
観点:
1.国語の授業の中で書いたものではないので、表現については触れていない。
2.文面からこの子の性格及び担任との関わりを思い浮かべた。
3.成果があったと自分でも認めているところを肯定し、「つまらない夏休みではなかったと思う」という担任の感想を伝えようとした。


評語:夏夫君が眼科にいるのが目に浮かぶようです。それにしても視力が良くなって良かったですね。良く見える目で楽しいことも沢山見つけられたね。
観点:作文を書く技術的なところをまずほめ(引用者註、提示した文にいくつか線がひいてある)、次に作文の内容にそって話を進めてみました。


 それぞれの先生の、いろいろな持ち味で書いてもらった評語を比較してみて、明らかになった課題がいくつかあります。

○ やはり、表現にしろ、内容にしろ、肯定・共感があると子どもはうれしい。(うれしかった!)
○ 国語の授業で書いた作文かそうでないかで、評語を書く視点が変わることがある。作文の技術的な点(表現)に触れた評語と、意図的に触れなかった評語(上の3つめ「国語の授業の中で書いたものではないので、表現については触れていない」と記述)とがありました。SOLOさんは主に表現について評価し、中島さんは内容について評価を入れています。もっとも、SOLOさんのときは場面設定がありませんでした。場面設定があったらSOLOさんも表現については書いていなかった?


 ところで、これも校内研究資料として、私が出した資料があるので、その一部をここに載せます。

子どもが書く意欲を持つ評価(評語)の書き方について 松田善啓
※参考資料 上條晴夫『子どもを励ます評価文の書き方』(学事出版ネットワーク双書)

1. 1つだけホメる。
2. 表現方法を指摘する。
3. 文章構成を分析する。
4. かかわりを評価する。
5. 共感を書く。

1.1つだけホメる。
(例)※ いいところのたくさんある作文だと思う。いいところを全部書きたいが、1つだけ書くことにする。それは、この作文には算数で勉強したことがいくつも使ってあることだ。・5ミリ×5ミリ5ミリ・たて4センチ、よこ2.5センチ、高さ5ミリ。・直径15センチ。
 1つの作文で、あれもこれもホメるわけにはいかない。仮に複数の優れた点があっても、1つに絞り込んで書く方が効果はある。あれもこれもだと焦点がボケてしまう。1つだけドカンとホメると、ホメられた子どもの定番ワザになりやすい。そして、他の子どもたちもマネがしやすい。

2.表現方法を指摘する
 次の表現方法は「指摘」をすることによって子どもたちはどんどん身につけていく。
1.オノマトペ 1.比喩 3.会話文 4.擬人法 5.誇張法 6.列挙法 7.文末表現 8.固有名詞 9.数字 10.引用

3.文章構成を分析する
 (省略)

4.かかわりを評価する
 友達の作文でマネのできそうなことはどんどん指摘する。そうすることで、まわりの子の作文力もぐんぐん伸びる。
1.『ながら』をほめる
 子どもたちに、人や物の動きを、ていねいに思い出して書けといっても、なかなか書けるようになりません。
 でも、「おはしでもちあげ、、、ながら」のような、、、、ながらを使ったことについてほめてあるようにすれば……
 書くくせがついてきます。
2.『よく見ると』をほめる 子どもたちに,その日常生活の中で、「よく見ると」という習慣をつけさせるということは
 ものごとをいいかげんにしないという子どもを育てることになるのです。です から、ごく、ささいなことでも、「よく
 見ると」と書き,その結果を書いてあったときは、ぜひほめてやりたいのです。
3.『…というと』 『…というと』ということばは、それによって、説明をひき出し、そのあとで、『…です』とか、
 『…だからです』というように、説明のことばを結びやすくする力を持っています。……多少目ざわりではあっても、
 読み手に、分かりやすく説明することの初歩の段階として、おおいに赤ぺんでほめてやりたいと思います。
 (亀山五郎著『子どもをはげます赤ぺん《評語》の書き方』(百合出版)の要約)

5.共感を書く。
(1.驚く 2.質問する 3.曖昧さをただす。)
(作文ノートへの指導例) 
「…国語は、多分私があまり発言しようとしてないからだと思います。国語は自分でちゃんとすれば、おもしろくなるから平気です」
※なぜ発言しようとしないのですか。そこのところを書いてください。 
「…一回聞く方に回ると、いつ自分が言ったらいいのか、分からなくなるとが全部です。…」
※ 参考になりました。発言のさせ方、考える時間、速いということですね。

 当然、この企画の正解は一つではありません。でも、よりよい評価について、皆さんと一緒に考えていけたらいいな、と考えています。
 書いてくださったみなさん、ありがとうございました。そして、また新しい企画を立てたときは、もっと多くの皆さんに参加してもらいたいなあ、と思います.

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