メールマガジン「実践!作文研究」
第73号(2001.6.24)


調べ学習に役立つ作文技術の情報誌
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第73号 2001年6月24日発行(毎週日曜日発行)

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。「実践!作文研究」第73号をお届けします。
 今回は、茨城大学の大内善一さんによる「メディア・リテラシー
を育てる作文授業づくり」です。第69号に続いての論考です。
 また、先週も申し上げましたが、前号の石井さんの「コピー作文」
実践と合わせて読むと、一粒で二度おいしいということになっていま
す。バックナンバーはこちらにありますので、ぜひお読みください。

 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/

         ◆     ◆     ◆

−−2.メディア・リテラシーを育てる作文授業づくり−−
                      茨城大学教育学部
                         大内 善一

──────────────────────────────
  メディア・リテラシーを育てる作文授業づくり
                                                《第3回》
──────────────────────────────

 今回は、前回に引き続いて「メディア・リテラシーを育てる作文
授業づくり」について具体的な実践の在り方を提案します。
 メディア・リテラシーを育てる作文授業といっても、私が考えて
いる実践の方向は、従来の作文授業を大幅に変えるというものでは
ありません。なぜなら、従来の作文授業の中にすでに無意識のうち
にメディアを活用した作文授業が存在してきているからです。
 以下のような実践がその参考例です。

I 「コピー作文」の実践
 ―広告・宣伝コピーという表現媒体を活用して自分の考えを説得
 的・創造的に表現する―

 一番目に掲げたいのは、ご存じ「コピー作文」です。詳細につい
ては、拙編著『新しい作文授業・コピー作文がおもしろい』(1997
年7月、学事出版)を参照していただければ幸いです。この方の中
で、私は「コピー作文」の授業づくりの意義に関して以下のように
述べました。
┌────────────────────────────┐
│◎ 広告・宣伝コピーを作るためには、表現しようとする対象│
│ の特徴を性格に把握しなければならない。そのためにものの│
│ 見方が的確となる。                  │
│◎ 広告・宣伝コピーを作るためには、表現しようとする対象│
│ の特徴を第三者に好感が持たれるような言葉でズバリと書き│
│ 表さなければならない。つまり、相手の共感を得るために、│
│ 相手の心を推し量った適切な言葉遣いと効果的な表現技法が│
│ 求められる。適切な表現を生み出そうとして、一語一句の末│
│ にまで心を砕くために、よりいっそうの思考の集中が要求さ│
│ れる。また、他人の心を推し量る豊かな感性、鋭い語感とが│
| 養われる。                      |
│                      (19〜20頁)│
└────────────────────────────┘
 「コピー作文」の授業では、広告・宣伝コピーというメディア
(=表現媒体)を学校作文のジャンルに導入することを通して、コ
ピーの表現の持つ功罪を批判的に受け止める一方、これを積極的に
活用して、自分の思うところを効果的に表現し、相手を説得する能
力を育てることを目指します。
 なお、「コピー作文」は、総合的な学習での学習成果をまとめる
活動、例えば「新聞づくり」や「ホームページづくり」などにも活
用できます。「コピー作文」は、メディアを活用するだけでなく、
メディアそのものをも創り出す能力を育てることにも通じています。

II 「聞き書き」の実践
 ―他者との出会いという直接体験から独自の「メディア」を創り
 出す―

 藤本英二教諭に「聞き書き『仕事の話を聞く』の実践―異質な他
者と出会わせる」(『たのしくわかる高校国語I・IIの授業〈説明・
論説・作文〉』1990年9月、あゆみ出版)という実践があります。
 藤本氏は、高校生の表現に見られる「自足的な世界をうち破」ら
せ、「自分の感性とは異質な他者に出会」わせることを目的として、
「インタビュー」の結果を「聞き書き」にまとめさせる(文章化)
させる実践を試みています。「インタビュー」活動に主眼が置かれ
れば、それは「話すこと・聞くこと」の指導が中心となります。こ
れを「聞き書き」という活動にまで発展させると、これは「書くこ
と」の指導に重点が移ってきます。
 「聞き書き」は、ルポルタージュや民話のように明らかに一個の
〈作品〉です。インタビューの結果得られた内容を「聞き書き」に
まとめる過程において、インタビュアーは「客観的に存在する他人
の発話を自分の感性を通過させて、どう再創造するか」ということ
が課題となります。
 藤本氏のこの実践からは、(1)「インタビュー」活動を通して
の「一次情報=自己の身体感覚にもとづく直接経験」の重要性の再
認識、(2)この一次情報から、「一人語り形式」や「ルポルター
ジュ形式」による文章表現活動を通して、自らがより望ましい「二
次情報」(=インタビューイの人生や人柄・性格、生き方などをリ
アルに再現したもの)を創り出すという体験をさせるという意義を
取り出すことが出来ます。

III 「新聞の投書欄を活用した作文指導」の実践
 ―「新聞の投書欄」というメディアを活用して自分の意見を社会
 に問う―

 貝田桃子教諭に「新聞の投書欄を活用した作文指導(対象学年:
高校1〜3年生)」(貝田桃子著『創作し伝え合う国語科授業』2000
年4月、学事出版)という実践があります。
 貝田氏が行った授業の流れは、以下のようになります。
┌────────────────────────────┐
│1 「今、世の中は、少年犯罪など『学校』という場所にかか|
| わる暗い部分がクローズアップされることが多いです。しか|
| し、多くの高校生が日常考えていることが世の中に紹介され|
| ることは少ないですね」                |
│2 「高校生が自分の意見を、教室内だけにとどめておくので|
| はなく、今、感じていることを社会に問おうとする意識をも|
| って書くことはとても重要なことだと私は考えています」 |
│3 「皆がふだん考えていることを、書いてみよう」    |
│4 「新聞の投書欄は、日常の感想や疑問を年代に関係なく社|
| 会に意見を問う場所です。もし、自分が投書するならば、と|
| いう意識で意見を書いてみよう」            |
│5 「書いてみたあとで、実際に投稿してみたいと思った人は|
| 投稿してみよう」                   |
|                        (13頁)|
└────────────────────────────┘
 貝田氏によるこの実践からは、「新聞の投書欄」という表現媒体
から摂取した、社会という公の場へ向けての意見の述べ方を参考に
して、自らも社会に対して自分の意見を問うていくという、双方向
性を帯びた表現活動になっているところに意義を見出すことが出来
ます。
 なお、貝田氏は、この作文指導をステップとして、「新聞の投書
欄を活用した音声言語指導」という意見発表会の指導にもつなげて
います。この実践も「メディア・リテラシーを育てる国語の授業」
ということが出来ます。

IV 「模擬電子掲示板」を活用した「双方向型作文学習」の実践
 ―「電子掲示板」というメディアの機能を活用して双方向の意見
 交換を行う―

 高木輝夫教諭に「『伝え合う』力を高める国語科学習指導の在り
方―中学校第1学年『双方向型作文学習』の教材開発を通して―」
(『平成12年度 茨城県10年次研修講座課題研究報告書』)という
実践があります。
 高木氏が述べている実践のあらましは以下のようなものです。
┌────────────────────────────┐
│ 本実践は、従来、「話合い」という音声言語によって行われ│
│ていた意見交換を文字言語によって行おうとするものである。│
│ 具体的には、インターネット上に設定された一つの画面に、│
│同時に接続した複数のパソコンから入力されるテキストを次々│
│と表示する「チャット」や「電子掲示板」などと呼ばれている│
│ものを目指した。                    │
│ しかし、実際にはこのようなことを行う環境が整っていない│
│ので、現在の環境で、少しでも近いものをと考え、名称を「模│
│擬電子掲示板」と名づけ、以下のような学習活動を行った。 |
│ 準備としては、ノートパソコンとTVを接続詞、ノートパソ│
│コンがTVに映るようにしておく。            │
│ 今回は、文学教材の「大人になれなかった弟たちに…」にお│
│いて「僕」から見た「母」の姿を読み取る学習で、従来なら話│
│し合いで行っていた学習者同士の意見交換を「模擬電子掲示 │
│板」で行うことにした。時数は、ノートに個人でまとめを行う│
│慈顔に1時間、「模擬電子掲示板」による意見交換に2時間を|
│割り当てた。                      │
|                        (4頁)│
└────────────────────────────┘
 この実践は、私がかねて提唱していた「双方向型作文学習」(拙
著『「伝え合う力」を育てる双方向型作文学習の創造』2001年3月、
明治図書)を受けて行われたものです。
 「電子掲示板」というメディアの機能を活用して、これに近い状
況を工夫して設定し文字言語を使用して双方向による意見交換を行
わせている点が面白いと思います。意見交換では、「ペンネーム」
によって行わせているために、それぞれの発言が誰のものか分から
ないという〈匿名性〉から、平素は「自信がない」等の理由で発言
に消極的な生徒でも積極的に参加出来たようです。
 この実践は、今後、パソコン上に映し出される〈匿名性〉の強い
情報に対して関わり合い、これに対応していくための一つの手掛か
りを与えてくれているところもあって、電子メディアの活用の仕方
と、これへの対応の仕方という二つの点で意義を認めることが出来
ます。

 以上、紙幅の都合もあってほんの一部の実践しか紹介できません
でした。どうぞ、これまで行われてきた作文授業の中から、メディ
ア・リテラシーを育てることにつながっていくような実践を探し出
して、さらに、その方向を強化していく作文授業づくりを試みてい
ただければと思います。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 大内善一(おおうちぜんいち)
 秋田大学教育文化学部教授を経て、現在、茨城大学教育学部教授。
 全国大学国語教育学会(全国理事)、
 日本教育技術教育学会(理事)、
 日本言語技術教育学会(理事)、
 日本読書学会、表現学会等に所属。
 著書に、『戦後作文教育史研究』(教育出版センター)、
 『国語科教材分析の観点と方法』(明治図書)、
 『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)、
 『戦後作文・生活綴り方教育論争』(明治図書)、
 『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)、
 『コピー作文がおもしろい』(学事出版)その他がある。
 茨城大学教育学部国語教育講座ホームページ
 http://evfs.edu.ibaraki.ac.jp/kokugo.htm

         ◆     ◆     ◆

−−3.ホームページ進化情報−−
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○アクセス数が43000を突破しました。いつもご覧戴きまして、あ
 りがとうございます。
○おもしろ作文道場は第21回「○月×日は△△の日!」です。
 独創的な記念日をつくってください。

         ◆     ◆     ◆

−−4.編集後記−−

★次号予告
 07/01 No.74 佐内信之
          「総合的な学習のための作文技術 第3回」

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編集主幹  上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.com
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