メールマガジン「実践!作文研究」
第7号(2000.3.12)


論理的思考を鍛える「さくぶん情報誌」
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 メールマガジン「実践!作文研究」
 第7号 2000年3月12日発行(毎週日曜日発行)

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 今回のリレー連載は、佐内信之さんの「名人の作文授業を追試す
る」です。「追試」というのは、ある実践について、後からその通
りに実践して確かめることを指します。今回は、大正・昭和期の国
語教育者、芦田恵之助(1873〜1951)の授業についてです。

         ◆     ◆     ◆

−−2.リレー連載「名人の作文授業を追試する」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

============================================================
名人の作文授業を追試する(第一回)

   【芦田恵之助】・・・句点による切断法
============================================================

■原実践の紹介

 芦田恵之助は日本の国語科教育における「伝統の中の巨峰」とさ
れる人物である。(『教育科学国語教育』No.376「入門 芦田恵之
助」明治図書 5ページ)

 その芦田が作文の推敲指導について、以下の提案を行っている。

   文の連接を指導するには、文の切断からはいらねばならぬ。
  甚だ矛盾のやうだが事実である。尋三の文章は不正なる連接を
  してをる。甚だしきは全文悉く一続きの文になつて、意義の把
  捉し難いものすらある。(中略)余が従来試みて有効であると
  信じてゐるのは、句点の利用である。句点は文の終結したとこ
  ろに施すものであるから、全文一本になってゐるような文は、
  これを施して始めてそれと気がつくのである。この点に注意の
  むかつた後でなければ、指導も効を奏しない。故に連接法の指
  導はまづ切断法からわけいるべきである。(『国語教育名著選
  集2 教式と教壇 綴り方教授』明治図書 170ページ)

 この提案はまさに、池内清氏の解説による「一文一義」の内容と
ピッタリ重なる。(第2号「作文キーワード事典」参照)大正2年
発行の『綴り方教授』において、すでに芦田が「句点の利用」を意
識した推敲指導を行っていることは驚きである。

 そこで、池内氏が提示した例文を教材として、以下の流れで芦田
の推敲指導を追試した。(前掲書161ページより項目のみ引用)

  (一)総評
  (二)朗読
  (三)教材聴写
  (四)批正
  (五)各自訂正

 なお、指導のポイントは(三)(四)の段階で「批正の材料を聴
写させる時に、最初はたゞ文章だけをうつさせ、通読にうつる前に
必ず句読点をうたせる」(前掲書179ページ)ことである。

■授業のながれ

『今から先生がある文を読みます。一回聞いて、よく意味が分かれ
ば○、分からなければ×を出しましょう』

┌────────────────────────────┐
│私がコンピュータのマニュアル本を読んで感じたことはこの本│
│がいかにわかりにくく初心者の人にとっての配慮がまったくな│
│されておらず専門用語が説明もなしに出てくることに閉口した│
└────────────────────────────┘

 5年生の〈総評〉は全員が×であった。「配慮」「閉口」などの
言葉が分からないと言う。そこで、教師が簡単に意味を説明した。

 次は〈朗読〉である。教師の範読にあわせて、クラス全員で少し
ずつ音読する。それでも、まだ意味が分かりにくいと言う子が半分
ぐらいいる。そこで、今度は〈教材聴写〉を行う。

『私が……コンピュータの……マニュアル本を……』

 教師が一文節ずつ読み上げ、子どもたちは原稿用紙に書き取る。

『……出てくることに……閉口した……終わり!』
「ふう〜長かった」『文はいくつありましたか?』「……一つ!」

 教材文の長さは句読点なしで84文字、400字づめ原稿用紙で5行
にもなる。「一文が長すぎる」ために意味が分かりにくくなってい
ると子どもたちに気づかせた。

『この長い一文を分かりやすく書き替えます。そのためにまず、で
きるだけ多くの文に分けます。どこに「。」を入れられますか?』

 子どもたちは文を区切れそうな箇所に「。」を書き込んでいく。
句点を利用した〈批正〉指導である。

 子どもたちの発表をもとに、教師は六つの文に書き替えた。

┌────────────────────────────┐
│(1) 私がコンピュータのマニュアル本を読んだ。      |
│(2) 感じた。                      │
│(3) この本がいかにわかりにくい。            │
│(4) 初心者の人にとっての配慮がまったくなされていない。 │
│(5) 専門用語が説明もなしに出てくる。          │
│(6) 閉口した。                     │
└────────────────────────────┘

『「(2) 感じた」のはダレですか?』
「私」
『「(6) 閉口した」のはナゼですか?』
「本がわかりにくいから」「初心者の人にとっての配慮がまったく
なされていないから」「専門用語が説明もなしに出てくるから」
『(1)〜(6)のような箇条書きだと、「ダレ」「ナゼ」の分からない
部分があります。そこで、「私は」「なぜならば」など、自分で言
葉を補いながら書き替えてみましょう』

 最後は子どもたちの〈各自訂正〉である。一つだけ紹介する。

┌────────────────────────────┐
│ 私はコンピュータのマニュアル本を読んだ。私が感じたこと│
│は三つある。一つ目は、この本がいかにわかりにくいかという│
│ことである。二つ目は、初心者の人にとっての配慮がまったく│
│なされていないことである。三つ目は、専門用語が説明もなし│
│に出てくることである。私はこういうことに閉口した。   │
└────────────────────────────┘

 「私が感じたことは三つ」とナンバリングの技術を取り入れたと
ころに、この子なりの工夫が感じられる。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭
 所属団体:授業づくりネットワーク
      学習ゲーム研究会
      全国教室ディベート連盟など
 主な著書:『教室スピーチ実践事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      『小学校ディベート授業が手軽にできるモデル立論
       集』(共著)など
      以上学事出版刊−−

−−3.ホームページ進化情報−−

○アクセス数が11000を突破しました。
○「作文修行のための本」に、本多勝一著『日本語の作文技術』
 (朝日文庫)を追加しました。
○作文ゲームとして楽しめるサイトにリンクを張りました。
 ・snoopy_'s Homepage
  http://www3.freeweb.ne.jp/diary/snoopy_/
 ・東京ももぴーランド
  http://www.speed.co.jp/koyokanata/
 これからもリンクを増やしていきたいと思いますので、みなさん
からの情報をお待ちしています。

         ◆     ◆     ◆

−−4.編集後記−−

○作文に関する情報・感想等をお待ちしています。感想等は本誌や
 WEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○無断転載をお断りします。転載希望の方はメールでご相談を。
○本誌への読者登録・解除・アドレス変更はこちら。
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/
○本誌は『まぐまぐ』を利用して発行しています。
 『ウィークリーまぐまぐ』の登録・解除等はこちら。
 http://www.mag2.com/misc/wmag2reg.htm

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
メールマガジン「実践!作文研究」No.7 2000/3/12 読者数852
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
編集主幹  上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.com
まぐまぐID:0000023841
HP: http://www.jugyo.jp/sakubun/
(C)実践!作文研究 2000
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


「名人の作文授業を追試する         」

「第7号の感想」を書く 戻  る トップページへ