メールマガジン「実践!作文研究」
第69号(2001.5.27)


調べ学習に役立つ作文技術の情報誌
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第69号 2001年5月27日発行(毎週日曜日発行)

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。「実践!作文研究」第69号をお届けします。
 みなさんは、「メディア・リテラシー」という言葉をご存じでし
ょうか。今回は茨城大学の大内先生の第2回で、内容はそのメディ
ア・リテラシーに関することです。
 この「メディア・リテラシー」という言葉がどういう意味なのか。
そして、作文の授業とどのように結びついていくのか。
 ぜひみなさん、一度考えてみてから、以下の論考をお読みくださ
い。そうすれば、きっと勉強になることと思います。 

         ◆     ◆     ◆

−−2.メディア・リテラシーを育てる作文授業づくり−−
   茨城大学教育学部
  大内 善一

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メディア・リテラシーを育てる作文授業づくり
   《第2回》
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 前回は、「双方向型作文学習」についてご紹介しました。今回と
次回の2回で「メディア・リテラシーを育てる作文授業づくり」に
ついて述べてみます。
 
 近年、やたらとカタカナ文字が多く、一体どこの国の出版物かと
疑いたくなるような雑誌が多いです。カタカナ文字を一方的に悪い
とは思いません。私も「コピー作文」なる用語を創り出しました。
問題なのは、その意味するところ、概念が曖昧なカタカナ文字が多
いということです。
 「メディア・リテラシー」という言葉もその代表格です。そして、
「メディア・リテラシー」関係の文献には、この用語も含めて文不
明の曖昧な用語が氾濫しています。私は、第1回で紹介しました拙
著『「伝え合う力」を育てる双方向型作文学習の創造』(明治図書
刊)の中で、「コミュニケーション」という用語の曖昧さをこき下
ろしました。教育、なかんづく国語教育を専門としている人々(勿
論、研究者と呼ばれている人も含まれます。)があまりにも教育用
語に無頓着な現状があるからです。そんな人々が一体どのような国
語の指導をしているのかと心配になるからです。
 ですから、本当は「メディア・リテラシー」という用語を手放し
では使いたくないのです。でも、これからはこの言葉が教育界を席
巻していきます。いや、その兆候はすでに現れてきています。しか
も、極めて曖昧な意味不明の使われ方として氾濫しつつあるという
のが実情です。
 そこで、私は敢えて「メディア・リテラシー」という用語を用い
て、その曖昧性の実体に正面から向かい合ってみようと思います。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」です。この用語の内側に入り込ん
で、その意味するところを少しでも明らかにしていこうと思います。

 まず、「メディア」とは何でしょうか。「メディア」とは、新聞
・雑誌・広告・ラジオ・テレビ・映画・ビデオ・コンピューター・
電話・携帯電話・パソコン通信・カラオケ・などの表現媒体のこと
です。
 ただ、教育の中で「メディア」を問題にする時に、絶対忘れてな
らないのは、《教師》という「メディア」のことです。教師自身が
最も重要なメディアであるということを忘れていては、「メディア
・リテラシー」教育は成立しません。私たちが使用している言葉自
体が様々なメディアから送り出されてきているものであり、これら
の言葉を批判的に摂取して平易な言葉にかみ砕いていくことです。
教師というメディアが発する言葉が意味不明の用語を氾濫させてい
ては教育自体が成り立たないからです。それこそ「メディア・リテ
ラシー」教育を唱える私たちがメディアに飲み込まれ、メディアの
餌食になってしまうからです。
 これらの媒体の中の基本的な要素は、〈文字〉〈音声〉〈映像〉
です。そして、「メディア・リテラシー」教育で特に問題となるの
は、これらの要素の《複合》であるということを最初に確認してお
こうと思います。
 
 次に問題とすべきは、「リテラシー」という言葉です。「リテラ
シー」は、従来、「読み書き能力」とか「識別能力」とかと直訳さ
れています。そして、この場合の「読み」も〈映像を読む〉〈音声
を読む〉というように広義に考えられてきました。
 しかし、いずれにしましても、「リテラシー」の実体は、文字で
あれ音声であれ、映像であれ、それを「読む(解釈)」、読み手つ
まり〈受け手〉主体の問題と限定されてきたきらいは否めません。
身近にある文献をご覧下さい。ほとんどがそのようなものばかりな
はずです。
 「リテラシー」のもう一方の大切な要素、「書き能力」の問題は
ほとんで取り上げられてこなかったのです。「話す能力」の問題に
至っては全くと言っていいほど欠落してしまっています。これは大
変問題なことです。
 「メディア・リテラシー」を問題にする時、これらの「書き能力」
と「oracy話す・聞く能力」も一緒に取り上げていかなければなりま
せん。

 ここで、水越伸氏による「メディア・リテラシー」の実体に関す
る整理を見ておこう。水越氏は以下の三層から「階層化された能力」
として捉えていて大変参考になります。
┌────────────────────────────┐
|第1 メディア使用能力                 |
| たとえばビデオの録画や再生ができる、パーソナルコンピュ|
| ータを起動させたり、ネットワーク接続の設定ができるなど|
| といった、メディア機器やソフトを使いこなす能力のこと。|
|                            |
|第2 メディア受容能力                 |
| 新聞記事やテレビ番組などを、特定の社会の中で特定のメデ|
| ィア事業体が生み出した情報の構成体としてとらえ、その特|
| 性や文脈に基づき、批判的に受容し、解釈することができる|
| 能力のこと。                     |
|                            |
|第3 メディア表現能力                 |
| 様々なメディアを用いて、個人やグループの思想、意見、感|
| 情などを表現する能力のこと。             |
|(水越「メディア・リテラシーと教育のゆくえ」谷川彰英他編|
| 『21世紀の教育と子どもたち 3 学びの地平を求めて』平|
| 成12年3月、東京書籍、277〜279頁)          |
└────────────────────────────┘
 水越氏の捉え方で注意しておくべきは、「メディア・リテラシー」
を「階層化された能力」として〈複合〉的に捉えている点です。
 水越氏の上の捉え方を教育の中に取り入れる時、取り入れ方とし
ては、それぞれいずれかの階層に力点をおいた方法が考えられると
思います。
 従来の「メディア・リテラシー」教育なるものの多くは第2の
「メディア受容能力」に力点を置いたものであったと思います。
 
 私は、これからの「メディア・リテラシー」教育は、先に述べま
したように「書き能力」や「話す・聞く能力」に力点をおいたもの
を全面に打ち出していくべきであると考えています。
 これまでのように「読み能力」中心の〈受容〉的な性格の強い
「メディア・リテラシー」教育にとどまっていてはいけないのです。
 はじめから、第3の「メディア表現能力」育成のための「メディ
ア・リテラシー」教育を創り出していくこと、これが私の提案です。
「メディア表現能力」の育成を目指していけば、必然的に第2の
「メディア受容能力」も発動せざるを得ません。勿論、第1の使用
能力の必要性にも迫られていくはずです。
 水越氏の第1から第3までの数字は、決して学習指導の順番を意
味していると捉えてはいけないと思います。

 ここで、大内による「メディア・リテラシー」の定義付けを行っ
ておく必要があるでしょう。私は以下のように定義付けたいと思い
ます。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ メディアが生み出している様々な情報を鵜呑みにするのでな┃
┃く、これに積極的に立ち向かい批判的に摂取しつつ、逆にメデ┃
┃ィアを活用して新たな価値ある情報を創り出していく能力のこ┃
┃と。                          ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 「メディア表現能力」に力点を置いた「メディア・リテラシー」
の定義です。この定義をご覧になって、なぜ私が「作文の授業づく
り」と限定して「メディア・リテラシー」を取り上げようとしたか
がご理解いただけたかと思います。
 このような考え方に基づいた「メディア・リテラシーを育てる作
文の授業づくり」を次回に具体的に提案したいと思います。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 大内善一(おおうちぜんいち)
 秋田大学教育文化学部教授を経て、現在、茨城大学教育学部教授。
 全国大学国語教育学会(全国理事)、
 日本教育技術教育学会(理事)、
 日本言語技術教育学会(理事)、
 日本読書学会、表現学会等に所属。
 著書に、『戦後作文教育史研究』(教育出版センター)、
 『国語科教材分析の観点と方法』(明治図書)、
 『思考を鍛える作文授業づくり』(明治図書)、
 『戦後作文・生活綴り方教育論争』(明治図書)、
 『作文授業づくりの到達点と課題』(東京書籍)、
 『コピー作文がおもしろい』(学事出版)その他がある。
 茨城大学教育学部国語教育講座ホームページ
 http://evfs.edu.ibaraki.ac.jp/kokugo.htm

         ◆     ◆     ◆

−−3.ホームページ進化情報−−
 http://www.jugyo.jp/sakubun/

○あなたの「おびひろがる」募集(日専連おびひろ主催)にリンク
 しました。
○「投稿!おもしろ作文道場」は第17回「あいうえお作文」が登
 場です。締切は今度の6月1日(金)です。あなたの挑戦を待っ
 てます。

         ◆     ◆     ◆

−−4.編集後記−−

★次号予告
 06/03 No.70 池内 清「作文授業事典 第3回」

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