メールマガジン「実践!作文研究」
第46号(2000.12.10)


調べ学習に役立つ作文技術の情報誌
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第46号 2000年12月10日発行(毎週日曜日発行)

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。「実践!作文研究」第46号をお送りしま
す。今回は「名人の作文授業を追試する」の第4回で、大村はまさ
んの実践の追試です。なお「名人の作文授業を追試する」は今回で
最終回となります。佐内さん、お疲れさまでした。
 「名人の作文授業を追試する」のこれまでのリストは次のように
なります。バックナンバーが出ているURLと共に紹介します。

第1回 【芦田恵之助】…句点による切断法 No.7(2000.3.12)
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/7.html
第2回 【国分一太郎】…概念くだき No.21(2000.6.11)
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/21.html
第3回 【青木幹勇】…書替え No.33(2000.9.10)
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/33.html

 その他のバックナンバーは、こちらで読むことができます。最近
読み始めたという方も、ぜひお読みください。そして感想をいただ
けると幸いです。

 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/

         ◆     ◆     ◆

−−2.リレー連載「名人の作文授業を追試する」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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名人の作文授業を追試する(第四回)

   【大村はま】・・・書き出し
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■原実践の紹介

 大村はまは戦前から50年以上も現職教諭を続けた国語教育の実践
者である。その成果は『大村はま国語教室』全15巻別巻1(筑摩書
房 1983年)など、多くの著作にまとめられた。その他にも、大村
が実践した学習記録・指導資料が鳴門教育大学図書館に寄贈され、
「大村はま文庫」として整理されている。
<http://www.lib.naruto-u.ac.jp/kyouka/oomura.html>

 作文だけでも膨大な大村実践の中から、今回は「書き出し」の授
業を追試した。これは「修学旅行のあと、書くことがたくさんある
ようでいて、書きにくい感じ」の子どもたちに、「二十八の書き出
し文から、それに続けて書けそうなのを選んで写し、その文の誘う
ままに書き継ぐ」ように促す指導である。
 以下、書き出しの一部を引用する。

 (1) 雨に煙る比叡山、すっくと立つ杉の大木の濃淡。
 (2) 聞いていたほどでもなかった根本中堂での説教であった。
 (3) 今、ここに、このように堂々と静かにある堂。ある時代に
  は、ここに戦火が荒れ狂っていたのだ。

(『大村はま国語教室』第5巻「書くことの計画と指導の方法」
                      269〜271ページ)

 これら「修学旅行」の例を参考にしながら、小学5年生に「学芸
会」の書き出しを与える作文授業を追試した。

■授業のながれ

 学芸会が終わって最初の授業である。ただし、2日間の連休をは
さんでいるので子どもたちの間に本番直後のような緊張感はない。
『先週は学芸会、お疲れさま。さっそく作文を書きましょう』
「やっぱりなぁ」
 仕方なさそうに鉛筆を出す子どもたちに、教師は以下の「書き出
し」を示したプリントを配る。

 (1) 学芸会当日の朝がきた。教室で衣しょうに着がえながら考え
  た。
 (2) ダンボール箱の中には苦労して作った小道具が入っている。
  その中の一つを取り出した。
 (3) 手のひらに「人」という字を三回書いて飲みこむと、きん
  ちょうしないらしい。
 (4) チャチャチャ、チャチャチャ、ワーッ……。オープニングの
  音楽が流れてきた。
 (5) 五年生の劇の幕が開いた。まず最初に、かべいっぱいの大画
  面テレビが見えた。
 (6) マイクのスイッチを入れた。いよいよ出番がやってきた。
 (7) 「せーの!」かけ声の合図にあわせて、みんながいっせいに
  校歌を歌い始めた。
 (8) 「デイヤー!」おじいさんのかけ声とともに、小道具係の
  作ったタイムマシンが登場してきた。
 (9) 「ハハハ……」小さい子たちが大声で笑っている。
 (10)「クスクス……」お家の人たちの笑い声が聞こえた。
 (11)「今だ!」タイミングをはかって、カセットのボタンを押し
 た。
 (12)音楽が始まらない! いつまでたっても「ハッピーサマー
  ウェディング」が流れてこないのだ。
 (13)何とか第一場面は終わった。でも、まだ心配なことがある。
 (14)照明のスイッチを入れた。すると、暗転していた舞台がパッ
  と明るくなった。
 (15)もうすぐピンクレディーの「サウスポー」だ。私は頭の中で
  もう一度ふりつけを確認した。
 (16)とうとう次は一九七八年の場面、私の出番が近づいてくる。
 (17)エンディングの音楽が流れてきた。いよいよ、今まで練習し
  てきたダンスを見せるときだ。
 (18)最後のソロのセリフだ。うまく言えるかな?
 (19)幕が閉まった。でも、幕をへだてた会場からは大きな拍手が
  聞こえてきた。
 (20)学芸会が終わった。たくさんのメモでボロボロになった台本
  を見ていると、いろいろなことが思いうかんでくる。

 子どもたちはプリントに目を通しながら、学芸会の出来事につい
ておしゃべりしている。その間に、教師は(1)〜(20)の番号を板書
しておく。
┌────────────────────────────┐
│この中から一つ、自分が書きたい話題を選びましょう。   │
└────────────────────────────┘
 子どもたちが考えている間に、教師は原稿用紙を配る。ただし、
400字のものを半分に切った200字の原稿用紙である。
┌────────────────────────────┐
│自分が選んだ番号の書き出しを写して、続きを書きましょう。│
└────────────────────────────┘
「書き出しの言葉を少し変えてもいいですか?」
『はい、構いません』
「私が書きたいことがプリントにないんですけど……」
『そのときは自分の好きなように書いていいです。何を書こうか
迷っている人は、このプリントをヒントにしましょう』
「1枚で書ききれないときはどうするんですか?」
『200字以内で書くようにします。そのためには、一番印象に残っ
たことを一つだけ書きます』
「書き終わったらどうするんですか?」
『原稿用紙を提出します。次に、黒板の自分が選んだ番号の下に名
前を書きます。そして、新しい原稿用紙を取って次の話題を書きま
す。クラス全員で学芸会のいろいろなエピソードを集めましょう』

 30分間、子どもたちは書き続けた。完成した原稿用紙は2〜3枚
の子が多い。ただし、作文の苦手な子は1枚仕上げるのがやっとで
ある。そんな子どもの作品を一つ紹介する。
┌────────────────────────────┐
│ 「デイヤァー!」おじいさんのかけ声とともに、手作りのタ│
│イムマシンで登場! ♪ロボ、ロボ、ロボ、ローボ♪ ぼくは│
│スペックス2のオリジナルテーマを歌いながら、だれよりも面│
│白く、だれよりも楽しく、みんなの笑いをとりながら出ていっ│
│た。                          │
│ タイムスリップの場面。                │
│ 「それでは、一九七八年のせかいへ、出発じゃー!」   │
│ 「ゴン」                       │
│ おじいさんのつえが、ぼくの頭に当たった。       │
└────────────────────────────┘
 さっそうとした登場場面を書きながら、最後はオチのエピソード
でまとめているのがうまい。
              *
 小さなエピソードをいくつも書く方法については、「パーツ作
文」(上條晴夫『「勉強嫌い」をなくす学習ゲーム入門』学事出版
 38〜44ページ)を参考にした。パーツ作文の「プロット」の代わ
りに「書き出し」を示したのが、今回の実践の工夫点である。

■連載を終えるにあたって

 私の連載「名人の作文授業を追試する」も最終回である。芦田恵
之助・国分一太郎・青木幹勇・大村はま、「名人」と言われた実践
家に少しでも近づきたいと思って始めた企画であるが、自分の力量
不足を改めて感じさせられた。しかし、作文教育史に残る成果の一
端に触れられたのは大きな収穫である。過去に先輩が積み上げてき
た業績を未来に伝えていきたいものである。

 最後に、毎回私の拙い原稿にお付き合いしてくださった読者の
方々に感謝しつつ筆を置く。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭
 所属団体:授業づくりネットワーク
      学習ゲーム研究会
      全国教室ディベート連盟など
 主な著書:『教室スピーチ実践事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      『小学校ディベート授業がてがるにできるモデル立論
       集』(共著)など
      以上学事出版刊

         ◆     ◆     ◆

−−3.ホームページ進化情報−−
 http://www.jugyo.jp/sakubun/

○メールでの問い合わせに端を発し、中国の作文「看図作文」につ
 いて、情報提供の呼びかけをしています。皆さんも何か情報をお
 持ちでしたら、よろしくお願いします。
 情報交流の場は、掲示板形式の「どくしゃの声」です。
 http://www.jugyo.jp/sakubun/mail/reader.html

         ◆     ◆     ◆

−−4.編集後記−−

 石井淳さん、佐内信之さんと、連載が次々に最終回を迎えていま
す。しかし、メールマガジン自体はまだまだ続きます。来春から、
新たな連載も始まる予定です。今後ともよろしくお願いします。

○このメールマガジンを知人に送って、購読をお薦めください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、本誌へ
 の感想をお待ちしています。
 本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
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発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
編集主幹  上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.com
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