メールマガジン「実践!作文研究」
第28号(2000.8.6)


論理的思考を鍛える「さくぶん情報誌」
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第28号 2000年8月6日発行(毎週日曜日発行)

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 暑中お見舞い申し上げます。
 突然ですが、ここで問題です。
 あなたは、小学生です。
 理科(または生活科)の授業中で、昆虫の観察をしています。
 観察をしていると、先生が言いました。
「観察してわかったことを、ノートに書きなさい」
 次の2つの指示のうち、観察した内容を詳しく書きやすいのは、
どちらの方でしょう?
┌────────────────────────────┐
│指示1「細かいところまでよく見て書きなさい」      │
│指示2「『よく見ると』という言葉を使って書きなさい」  |
└────────────────────────────┘
 今回の「作文キーワード事典」は【きっかけ言葉】です。
 上の場合、指示2の「よく見ると」が【きっかけ言葉】です。
 【きっかけ言葉】を用いた指導は、国語科の作文指導だけでなく、
上の理科(生活科)をはじめ「文章を書く」あらゆる活動で適用が
可能です。
 では、池内さんのリレー連載をお読みください。

         ◆     ◆     ◆

−−2.リレー連載・「作文キーワード事典」−−
                        東京・小学校
                          池内 清

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作文キーワード事典 第六回

   【きっかけ言葉】・・・思考を導く表現を教える
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■思考を導くきっかけ言葉

 「きっかけ言葉」とは、「なぜかというと」のように、ある特定
の言葉を使うことにより、その言葉に促された思考を、その後に続
く文で効果的に表現することができる言葉である。つまり、続く文
に対して、書く「きっかけ」を与える言葉である。人によって「表
現をひきだすことば」、「キーワード」などとして使われている。
 例をあげると、次のような言葉が「きっかけ言葉」である。

 ○「しかし」…逆接を述べるきっかけとなる言葉
 ○「なぜかというと」…根拠を表すきっかけとなる言葉
 ○「ということは」…文章を一般化するきっかけとなる言葉

 小学生に指導する場面の一つを具体的に説明する。
 主張に対して、根拠を書かせる場合に、次のように指導する。
 子どもたちに、「主張の後にその根拠を書きなさい」と言って
も、書ける子は少ない。抽象度の高い指示だからである。
 そこで、きっかけ言葉を使って、指示をする。
┌────────────────────────────┐
│ ○○は〜である。   (主張)            │
│ なぜかというと、〜。 (根拠)            │
└────────────────────────────┘
「なぜかというと」がきっかけ言葉となる。 
 小学生の子どもたちは、この「なぜかというと」という言葉を使
うことによって、根拠の書き方を学ぶのである。
 
■きっかけ言葉の作文指導

 作文指導が上手な教師は、このようなきっかけ言葉を意識的に
使って指導を行っている。
 亀村五郎著「子どもをはげます 赤ぺん《評語》の書き方」(百
合出版、1979年)には「『表現をひきだすことば』をほめてやる
と」として、次の三つの言葉を指摘している。
┌────────────────────────────┐
│1.『ながら』をほめる                 │
│   (物の動きをしっかり見つめる姿勢がつく。)    │
│                            │
│2.『よく見ると』をほめる               │
│   (「よく見ると」ということから、子どもが新しい認識│
│   を得る行動をおこし、また認識を得たということにな │
│   る。)                      │
│                            │
│3.『・・・というと』をほめる             │
│   (「なぜかというと」「どうしてかというと」という言│
│   葉が説明を引き出してくる。)           │
└────────────────────────────┘
 これらの「きっかけ言葉」は、亀村の場合、子どもの日記から、
この表現を取り出し、その表現を取り立てて指導する方法をとって
いる。
 
 また、上條晴夫著「書けない子をなくす 作文指導10のコツ」
(学事出版、1992年)では、この「きっかけ言葉」を積極的に使
うように指導をしている。
 「よく見て書きなさい」という指示の効果はあまり期待できない
と前置きをして、次の指示をする。
┌────────────────────────────┐
│「よく見ると(よく見たら)」を使って書きなさい。    │
└────────────────────────────┘
 この指示をすることによって上條は『キーワード「よく見ると」
が子どもの「よく見る」ための行動を促す』ことを指摘している。
 また、この指導を続けていくと、この「よく見ると」が発展し
て、「絞ってみる、比べてみる、集めてみる、数えてみる、触れて
みる、食べてみる、切ってみる、叩いてみる、聞いてみる、遊んで
みる」などの表現が引き出されたという。
 このような、キーワードを上條は他に三点指摘している。
┌────────────────────────────┐
│1.でも(だけど)                   │
│   (順接型の作文に対して、対比型の思考を促す。)  │
│                            │
│2.なぜか                       │
│   (物事の原因・理由を考える作文を書くようになる。)│
│                            |
│3.ということは(つまり)               │
│   (それ以前の文章内容を一般化・抽象化する時に使  │
│    う。)                     │
└────────────────────────────┘
 上條と亀村の二つの実践例をみると、「きっかけ言葉」には文と
文との接続を表現する言葉が多いことに気が付く。はじめの文に対
して、きっかけ言葉を使い、次の文を導かせるのである。
 接続表現は、次の文を呼ぶ、呼び水的な作用があると言える。
 
■ワークシートのきっかけ言葉

 ワークシートにこの「きっかけ言葉」を取り入れ、積極的に子ど
もたちに使わせている場合もある。
 上條晴夫・池内清著「小学校ディベートワークシート」(学事出
版、1997年)では、「6年1組は自由席にすべし」という論題に対
して、そのプランを行うと起きるメリットの因果関係を次のように
考えさせている。
 「6年1組は自由席にする→(  )→(  )→メリットが起
きる」
 この矢印を文章にするとき、ワークシートでは、
┌────────────────────────────┐
│ そうすると                      │
└────────────────────────────┘
を使って、表現する。
 つまり、以下のようになる。
┌────────────────────────────┐
│6年1組は自由席にする。                │
│そうすると、みんなが好きな席に座れます。        │
│そうすると、いろいろな人と座れます。          │
│そうすると、友だちが増えます。             │
│そうすると、・・・・(以下省略)            │
└────────────────────────────┘
 ワークシートにきっかけ言葉として「そうすると」を書いておく
ことによって、子どもたちが因果関係を思考するように促すことに
なる。
 ただ、書き上がった日本語は「そうすると」が重なり、稚拙な感
じがする。しかし、このような「きっかけ言葉」を意識的に使うこ
とによって、さまざまな思考を子どもたちがすることになる。そし
て、書き慣れてくると、子どもたちは、意識的にこのきっかけ言葉
をはずして書くようにもなる。

■ワンポイントレッスン

 次の文章を、小学生に具体例をあげて書かせたいとき、どのよう
な「きっかけ言葉」を使えばいいかを考えてください。
 
┌────────────────────────────┐
│ 私はテレビが好きです。                │
│ どうしてかというと、テレビはいろいろなことを教えてくれ│
│るからです。                      │
│(     )、                    │
└────────────────────────────┘

■解答例

 「たとえば」を使って書かせてみる。
 
■解説

 子どもたちに、「具体例を書いて説明してください」と指示をし
ても書ける子は少ない。
 きっかけ言葉として「たとえば」を与えることによって、続く文
に制約をつける。そうすると、この場合、「たとえばどんなことか
な」と前文の「いろいろなこと」の一つひとつを考えて、書くよう
になる。
 
 参考文献
 ・亀村五郎著「子どもをはげます 赤ぺん《評語》の書き方」
  (百合出版)1979年
 ・上條晴夫著「書けない子をなくす 作文指導10のコツ」
  (学事出版)1992年
 ・上條晴夫・池内清著「小学校ディベートワークシート」
  (学事出版)1997年
  
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 下記アドレスにご意見、ご感想をいただけると幸いです。   
 池内 清 ikeuchi@air.linkclub.or.jp           
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【今回の執筆者のプロフィールです】

 池内 清(いけうち きよし)
 東京・私立聖学院小学校教諭 
 所属団体:授業づくりネットワーク(事務局員)
      全国教室ディベート連盟(理事)
      学習ゲーム研究会

 主な著書:『小学校はじめてのディベート授業入門』
      『論理的な表現力を育て学習ゲーム』(共著)
       以上学事出版刊 など多数

         ◆     ◆     ◆

−−3.ホームページ進化情報−−

○「コミュニティセンター」を設置しました。ホームページに来て
 いただいた方に、「書く」ことを通して遊んでもらおうという趣
 旨です。現在、次のようなコーナーがあります。

・「前句付け」
 誰かが書いた五七五句に七七句をつけよう
・「連句遊び」
 Aさんが五七五を書いて、Bさんが七七を書いて、Cさんが五七
 五を書いて… 

 ぜひ、遊んでいってください。

 http://www.jugyo.jp/sakubun/community/

         ◆     ◆     ◆

−−4.編集後記−−

 次回は、石井淳さんの連載「家庭向け“ほめ上手”のすすめ」を
お送りします。お楽しみに!

○作文に関する情報・感想等をお待ちしています。感想等は本紙や
 WEBサイトで紹介させていただきくことがあります。
○無断転載をお断りします。転載希望の方はメールでご相談を。
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