メールマガジン「実践!作文研究」
第254号(2004.12.19)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第254号 2004年12月19日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、今宮信吾さんによる「「児童詩の書かせ方」コツ・ネタ」
をお送りします。
 なお、「「児童詩の書かせ方」コツ・ネタ」も今回で最終回です。
 今宮さん、1年間ありがとうございました。
 みなさんぜひ、ご意見ご感想をお寄せください。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「「児童詩の書かせ方」コツ・ネタ」−−
                       兵庫県・小学校
                          今宮信吾

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     第6回「余韻を残すために」
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┌────────────────────────────┐
| 詩は、省略と比喩が命である。詩人の竹中郁は、子どもたち|
|に詩の指導をするときに、「短く」「飾らず」「正直に」とい|
|うことを常に語られていた。比喩については、具象性を持たせ|
|ることと、書き手のオリジナリティーを発揮させることの2つ|
|が大事であるととらえている。ここでは、省略の必要性と比喩|
|表現の具体的な指導について述べることとする。      |
|(当初の予定と違っていることについては、ご了解いただきた|
| い。)                        |
└────────────────────────────┘

1 詩は、起承転結の「結」を省略する。

 散文と詩との大きな違いは、詩が結論を省略することが多いとい
うことであるととらえている。つまり、読み手にストレートな表現
をするのではなく、読み手の想像力に任せるということである。具
体例を挙げてみると、次のようになる。

┌────────────────────────────┐
|  しゃしん                      |
|              四年 女子         |
|わたしのひいじいちゃんの子ども             |
|戦争行ってしんでん                   |
|おばあちゃんちの                    |
|ぶつだんの上                      |
|しゃしんがのこってるねん                |
|まっすぐむいて                     |
|しんけんなかおしてるねん                |
|へいたいのぼうしかぶってる               |
|いつも前ばかり見て                   |
|横はむけないねん                    |
|24才からずっと                    |
|前向いたままやねん                   |
└────────────────────────────┘

 この子は、「戦争反対」とも「戦争は悲しい」とも書いていない。
しかし、読み手には、「24才からずっと前向いたままやねん。」
という言葉が心に残る。それは、この子が結論を省略しているから
である。読み手にぐっとこさせるところで文を締めくくっているの
である。
 もし、結論として「だから戦争はやめた方がいい。」などという
表現があれば興ざめである。そこを省略していることで、この詩は
成功していると判断した。

2 形容詞の使い方には十分配慮する。

 うれしい、悲しいなど気持ちをそのまま伝える表現については、
不親切な表現として気をつけるように話している。たとえ話で、
「クイズで最初から答えがわかっていても、誰も答えないでしょう。」
と語る。つまり「うれしかったです。」ということを書いてしまう
と、読み手の幅を狭め、詩に奥行きがなくなるととらえるからであ
る。具体例を示してみる。

┌────────────────────────────┐
|  おひさま                      |
|              一年 女子         |
|おばあちゃんのいえの                  |
|おひさまは                       |
|山のうえと                       |
|木のあいだにある                    |
|わたしのいえの                     |
|おひさまは                       |
|2ごうとうのうえにしずんで               |
|まどガラスにうつる                   |
|おひさまっていくつあるの                |
└────────────────────────────┘

 この子はきっと「不思議だな」という気持ちで書いたのだと思う。
しかし、それを文字として表現していない。それはこの子がおひさ
まを比較しているところからわかる。もし最後の行に「おひさまっ
て不思議だな」という言葉が入っている。
 作品によっては、「うれしい。」としか言いようがないという場
合もあるだろうが、うれしいような悲しいようなという複雑な気持
ちで実際には過ごしているはずである。形容詞を使うことより、
「うれしい。」という言葉を用いないでその気持ちを伝えるような
情景描写をさせたい。描かれている表現の向側に見える気持ちを読
み手に伝えてほしいと願う。

3 詩語を生み出す。

 詩語という聞き慣れない言葉であるが、比喩表現を中心とした個
性的な表現であるととらえてもらえればいい。「おかあさんが起こ
って鬼のように頭に角が生えました。」というのは、聞き古された
比喩表現であるととらえている。こういう表現をしたときには、
「本当に角が生えていたの?」と問い返し、「そんな気がしたから
書いた。」という返答がくれば、「お母さんの様子をよく思い出し
てごらん。」と言って、お母さんの怒っている時の様子を思い出さ
せる。即答出来ない子には、「目はどんな風になっていた。」「い
つもと違う動きはしていなかった。」などと思い出させる視点を与
えていく。低学年の子どもであれば、知っている語彙が少ないので、
自分の知っていることばを駆使して比喩表現するであろう。「目の
白いところがいつもより小さかった。」と表現した場合には、「よ
く見てたね。そのくらいお母さんが怒っていたのがよくわかるよ。」
と言って、最初の比喩表現の代わりにそれをもちいるよう助言する。
子どもが「うん、わかった。」と納得すれば、書き直せばいいだろ
うし、分かっていない様子であれば、「今度はこんなふうに見てき
てね。」と言って次に書くときのための布石として置く。
 比喩表現が成功した例として次のようなものがある。

┌────────────────────────────┐
|  雨あがりのにじ                   |
|               五年 女子        |
|「雨かな 雪かな」                   |
|山崎さんと歩いていて                  |
|ふりむくと                       |
|にじがかかっていた                   |
|「あっ にじだ」                    |
|そう言っているうちに                  |
|本をとじるように                    |
|きえていった                      |
└────────────────────────────┘

 最後の行の「本をとじるように消えていった。」というのは、こ
の子のオリジナルな表現である。本をとじるという行為を虹が消え
ていくこととイメージで例えて、比喩表現している。

4 まとめにかえて

 子どもたちに詩を書かせることの必要性についてこれまで述べて
きた。よく話題になることに、「どれがよい詩なのかわからないの
で、詩の見方を教えてほしい。」ということを聞く。つまり教師が
詩をどう読み取るのかという詩の解釈についてである。
 このことについては、結論として、個々の作品に依るところが大
きいし、子どもたちや指導者の感性にかかわる部分であると思う。
結論的には、読み手がよいと感じること、心を動かされることが詩
としての確かさを決めることであるととらえる。今風に評価規準を
設定しろと言われれば「読み手の心を動かすような表現が見られる
か。」ということになるだろうが、正直なところ、言語化できない、
潜在的な評価規準である。
 まずは、できるだけ多くの詩(できれば子どもの詩)を読み、教
師としての詩の読み方を各人が身につけたい。

       ◆       ◆       ◆

−−3.編集後記−−

○次号は堀 裕嗣さんの登場です。お楽しみに。
○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、3000部を突破することが殿堂入りの条件です。ぜひ本誌
 をお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○HPやMLなどへの無断転載は固くお断りします。
 転載希望の方は必ず松田までご相談ください。
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