メールマガジン「実践!作文研究」
第246号(2004.10.24)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第246号 2004年10月24日発行(毎週日曜日発行)
 登録・解除は http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、堀 裕嗣さんの連載「やる気をひきだす看図作文の授業」
第5回をお送りします。
 皆さんのご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.「やる気をひきだす看図作文の授業」−−
                       北海道・中学校
                          堀 裕嗣

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 第5回〈絵図分析の視点〉を与える
   堀 裕嗣(札幌市立向陵中学校)
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 今回も前回の続きです。同じ絵図を用いて述べていきます。

 
 (鹿内信善『やる気をひきだす看図作文の授業』春風社、p113
  より)

 この絵を使った「看図作文」の授業として,私は前々回,次のよ
うな授業プランを提示しました。

 1.絵図を配布し,物語をつくることを予告する
 2.生徒達を3人一組に分ける
3.3人でじゃんけんをさせ,Aさん・Bさん・Cさんを決めさ
  せる。
4.タイトルを強制的に与える
Aさん … たぬきの病気
Bさん … 「悪魔の花嫁」脱出計画
Cさん … 宇宙船地球号を救え!
5.絵をタイトルにしたがって分析させる
6.物語を書かせる

 そして,このように,教師によってタイトルを与えられる授業展
開の方が,実は生徒達にとっても楽しさを保障することができるの
だと述べました。その上で,前回はその理由の第一として,「適度
な〈抵抗感〉を与える」ことが,実は子ども達に「楽しさ」を保障
するのだということを説明しました。今回は,タイトルを与える第
二の理由「〈絵図分析の視点〉を与える」ということについて述べ
ていきます。

 みなさんは「上の絵図を見て物語を創作せよ」と言われて,即座
に物語を思いつくことができるでしょうか。ただこの絵を見せられ
て物語を創作しろと言われても,少々戸惑ってしまう……というの
が正直なところではないでしょうか。もちろん,すぐに物語が思い
つくという人もいるでしょう。しかしそれは,ある種の「特殊能力」
を持った人です。一般に絵図を見て物語を創作するには,絵図を綿
密に分析する必要があるからです。すぐに物語を創作できるという
人は,直感的に絵図の意味を分析できる人……ということになりま
す。その意味で,それは「特殊能力」なのです。
 絵図を見て物語を創作するには,その絵図を分析しなくてはなり
ません。この連載の第2回で「〈問い〉に答える」という方法を提
示しました。黒板の前で,机の上にサボテンを置きながら,ある人
が笑っている……そんな絵について,教師が立て続けに問いを発し,
子ども達がそれに答える中で,少しずつ物語を創作していく,とい
う授業です。この教師の問いに答えるという何気ない問答も,実は
子ども達に絵図を分析させることをねらっているのです。「看図作
文」は「絵を看て文を作る」という指導法ですから,絵図を分析さ
せないことには,何も始まりません。
 さて,私は先ほど,上の絵図を見てすぐに物語を思いつくという
人には,ある種の「特殊能力」があると言いました。しかし,それ
はどんな「特殊能力」なのでしょうか。
 まず次のサイトの二つ目の絵を見て下さい。

  http://www.fantasy.fromc.com/art/art4.shtml

 これはエッシャーのという有名な版画です。皆さんには「天使」
と「悪魔」の双方ともが見えますか。えっ?コウモリしか見えない?
それではもう少しじっくりとこの絵をよーく御覧下さい。
 …………?
 ほーら,見えたでしょう?翼を広げたたくさんの天使達が……。
 この版画は,白を「地」として黒を「図」として見れば「悪魔」
が見え,黒を「地」として白を「図」として見れば「天使」が見え
る,という仕掛けが施されているのです。
 この絵を最初に見たとき,「悪魔」が見えたという人は多いでし
ょう。逆に「天使」が最初に目に飛び込んできたと人は,かなり少
ないはずです。なぜなら,私達は何十年も生きてきた中で,無意識
のうちに白は「地」で黒が「図」であるという「ものの見方」に囚
われてしまっているからです。この絵を見て,天使の存在に気がつ
かずに一生を終える人さえいるかもしれません。この絵との出会い
が一瞬のものであったとすれば,充分に考えられることです。
 しかし,この絵に「天使」というタイトルがついていたとしたら,
どうでしょうか。たくさんのコウモリが描かれたこの版画を見て,
「なるほど,『天使』がふさわしいタイトルだ」と思う人は,なか
なかいません。きっと「どこが天使なんだ?」と,この絵をよく見,
よく分析してみようと思うはずです。それは,「天使」というタイ
トルとこのコウモリばかり絵図とが,見る人の中で不整合を来して
いるからなのです。不整合は人に不快感を与え,どこか落ち着かな
い感情を抱かせます。そして,黒を「地」として白を「図」として
見るという観点を得て,自分にも「天使」が見えたとき,そうした
不快感も落ち着かない感情も,ともに「スッキリ」とするのです。
 実は,「看図作文」でタイトルを与えるのも,同じ理由です。今
回の題材となっている絵をもう一度,見てみてください。

  http://www.jugyo.jp/sakubun/gif/hige3.jpg

 みなさんは,この絵を一度見ただけで,女の子の背負っているリ
ュックサックの目的を考えることができますか?女の子の上に飛ん
でいる二羽の鳥達の意味を考えられますか?女の子の左側にある植
物,右側にある植物の役割を考えることができますか?そして,絵
の右下にある白いモコモコしたものの存在に気がつくことができま
すか?いかがでしょうか。実はこの絵には,様々な「謎」が隠され
ているのです。
 私はこの絵に三つのタイトルをつけました。即ち,
    Aさん … たぬきの病気
Bさん … 「悪魔の花嫁」脱出計画
Cさん … 宇宙船地球号を救え!
という三つです。もしも「たふきの病気」というタイトルを与えら
れたら,右下の白いモコモコは白いたぬきの後ろ姿に見えてくるは
ずです。「『悪魔の花嫁』脱出計画」であれば,この女の子は悪魔
の花嫁にさせられそうなところを,二羽の鳥達が救出しようとして
いるところなのかもしれません。「宇宙船地球号を救え!」であれ
ば,女の子が二羽の鳥達を従えながら,ニョロニョロした植物たち
に占領された地球を救うために立ち上がり,植物を絶滅させるため
の「魔法の竹」を見つけたところなのかもしれません。
 いえいえ,子供達はもっともっと豊かに創造力を発揮します。そ
れはやってみればわかります。子ども達もまた,タイトルと絵とが
あまりにも不整合なものですから,ある種の不快感を感じ,落ち着
かなくなって,なんとか整合性をもたせようと絵図を細かく分析し
出すからです。そして,自分なりになんとか話のつじつまを合わせ
る原理を発見し,整合性をつけられたとき,スッキリした気分を得
るとともに,執筆の意欲が喚起されるのです。
 では,また次回……。

【お知らせ】
 私達は二ヶ月に一度,鹿内信善先生とともに札幌市内で「看図作
文」の学習会を開いています。その名も「看図作文研究プロジェク
ト」。会の名称は硬いのですが,15人程度で少人数で楽しく勉強に
いそしんでいます。また,年に3回ほど,「累積科学国語教育研究
会」という50人規模の学習会を開催して,「看図作文」を中心に作
文指導法の交流の機会ももっています。ちなみに,次回は10月30日
(土)の予定です。北海道にお住まいの方は,興味があればご参加
ください。案内はこちらに掲載しています。
    http://homepage2.nifty.com/higemaru/ruiseki7.htm

【今回の執筆者のプロフィールです】

堀 裕嗣(ほり・ひろつぐ)
札幌市立向陵中学校・教諭(国語・現在3年担任)
「研究集団ことのは」代表/「実践研究水輪」研究担当
「日本言語技術教育学会」北海道支部・事務局
著書
『全員参加を保障する授業技術』
『〈教室プレゼンテーション〉20の技術』
『発信型授業で「伝え合う力」を育てる』
『絶対評価の国語科テスト改革・20の提案』
『生徒・保護者にわかりやすい絶対評価の通知表』中1〜3
                以上すべて明治図書・他多数
 現在,「学級経営を高める」シリーズ全5巻を編集中
 また,このたび,『中学教育』7月増刊号『通知表所見文例集』
(小学館)を編集しました。お手元にとって御覧いただければ幸い
です。
 HP http://homepage2.nifty.com/higemaru/

       ◆       ◆       ◆

−−3.編集後記−−

○次号は、上條晴夫さんの登場です。お楽しみに。
○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、3000部を突破することが殿堂入りの条件です。ぜひ本誌
 をお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○HPやMLなどへの無断転載は固くお断りします。
 転載希望の方は必ず松田までご相談ください。
○本誌の読者登録・解除・アドレス変更・バックナンバーは、
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/ まで。
○本誌はインターネットの本屋さん「まぐまぐ」を利用してします。
 http://www.mag2.com/

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編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
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(C) 2000,2004 実践!作文研究会
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