メールマガジン「実践!作文研究」
第237号(2004.8.22)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第237号 2004年8月22日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、堀 裕嗣さんの連載「やる気をひきだす看図作文の授業」
第4回をお送りします。
 皆さんのご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.「やる気をひきだす看図作文の授業」−−
                       北海道・中学校
                          堀 裕嗣

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 第4回「適度な〈抵抗感〉を与える」
                          堀 裕嗣(札幌市立向陵中学校)
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 今回は前回の続きです。同じ絵図を用いて述べていきます。
 
 (鹿内信善『やる気をひきだす看図作文の授業』春風社、p113
  より)

 この絵を使った「看図作文」の授業として,私は前回,次のよう
な授業プランを提示しました。

 1.絵図を配布し,物語をつくることを予告する
 2.生徒達を3人一組に分ける
  3.3人でじゃんけんをさせ,Aさん・Bさん・Cさんを決めさ
  せる。
  4.タイトルを強制的に与える
        Aさん … たぬきの病気
        Bさん … 「悪魔の花嫁」脱出計画
        Cさん … 宇宙船地球号を救え!
  5.絵をタイトルにしたがって分析させる
  6.物語を書かせる

 そして,このように,教師によってタイトルを与えられる授業展
開の方が,実は生徒達にとっても楽しさを保障することができるの
だと述べました。今回と次回の2回で,その所以を明らかにしてい
きます。

 さて,理由の第一は,少しだけ窮屈にしてあげることで,生徒達
の中に適度な「抵抗感」が生まれ,その「抵抗感」が実は生徒達の
意欲を喚起するのだということです。みなさんは,「抵抗感」を与
えることによって意欲を喚起するなんて,変な言い分だと思うかも
知れません。しかし,適度な「抵抗感」は確かに意欲を喚起するも
のなのです。幾つか例を挙げてながら説明していきましょう。
  世の中の教育理論には,子どもを自由な学習活動に取り組ませる
ことによって,子ども達の意欲を喚起し,主体的に学習させること
ができる,という主張が多く見られます。しかし,世の中の人々に
人気のあるものの多くは,必ず「ルール」として,絶対に破っては
いけない「抵抗」を持っています。しかもその抵抗こそが楽しさを
保障している場合が多いのです。
 例えば,サッカーです。言うまでもなく,サッカーは手を使うこ
とができません。手以外の部分でボールを運び,やりとりし,相手
のゴールを攻めていきます。人間にとって最も自由の利く,機能的
な動きのできる手という器官を,敢えて封じることによってサッカ
ーという競技の魅力が成立しているのです。もしもサッカーが体の
どこを使ってもいいから,とにかく相手のゴールネットを揺らせば
いい,そういうスポーツだったとしたらどうでしょうか。おそらく
サッカーほどの魅力を,人々に感じさせることはないのではないで
しょうか。実は,サッカーは最も機能的な器官「手」を封じ,適度
な「抵抗」を与えることによって,人々の「意欲」を喚起している
のではないでしょうか。
  サッカーで手を使えるという例は極端だ,と思われる読者の方が
いらっしゃるかもしれません。では,「オフサイド」はどうでしょ
うか。「オフサイド」は最も得点を入れやすい攻撃スタイルを,敢
えて封じるというルールです。誰か一人がいつも敵のゴール前にい
て,そこにロングパスを出せば,必ず相手キーパーと1対1になれ
る。或いは,二人がゴール前にいて,パスが通れば必ず2対1にな
って,十中八九ゴールが奪える。そんなサッカーの試合を見たり,
プレイしたりしたいと思うでしょうか。「オフサイド」というルー
ルがあるからこそ,ぎりぎり「オフサイド」にならないタイミング
でゴールをねらうために,連携プレイを一生懸命に練習するのでは
ないでしょうか。つまり,これも適度な「抵抗」を与えることによ
って,人々の「意欲」を喚起している,よい例なのです。
 しかし,こうした「抵抗」は,あくまでも「適度な抵抗」である
必要があります。もしもサッカーにおいて,シュートを打つときは
ハーフラインの手前で蹴らなければならない,などというルールが
あったとしたら,サッカーは途端に楽しくないスポーツになってし
まいます。滅多に得点の入らない,修業のようなスポーツになって
しまうからです。サッカー人口は一気に減ってしまい,選手はみな,
不可能への挑戦を志す,修行僧のような集団になってしまうでしょ
う。あくまでも,意欲を喚起する「抵抗」とは,「適度な抵抗」で
なくてはならないのです。
 「適度な抵抗」が意欲を喚起するという事例は,多くのスポーツ
にあります。ラケットスポーツのダブルスにおいて,サーブは必ず
対角に入れなければならなかったり,バレーボールの後衛がバック
アタックしか撃てなかったり,といった事例です。野球には,ボー
クやインターフェアがあります。これは実は,スポーツに限らず,
「ゲーム」というものの普遍的な構造です。「ゲーム」というもの
は,「適度な抵抗」の中で自分の力を試す,相手とのやりとりを楽
しむというところに本質があるのです。キーワードは「適度な抵抗」
です。そういえば,恋愛も成就しないうちが一番燃えると言われま
すね。遠距離恋愛が燃え上がるのも同じ構図かもしれません。
  さて,例示が長くなりました。私の示した「看図作文」授業プラ
ンは,タイトルを教師が与えるというシステムでした。教師から与
えられたタイトルで作文を書くということは,一見難しく感じられ
ますが,実は「看図作文」ではそれほど難しいことではありません。
それは絵図があるからです。「看図作文」では,教師からタイトル
を与えられるということが,実は「この絵図の中からこのタイトル
と結びつくものを発見せよ」というメッセージなのです。それが
「適度な抵抗」とともに,「看図作文」を楽しむことのできる第一
の理由なのです。
 蛇足になりますが,もちろん「看図作文」以外の作文学習で,教
師がタイトルを与えるという活動はナンセンスです。もしそういう
ことがあるとすれば,教師がよほど高度な学習をさせようとしてい
るか,他の仕掛けによってそれが「適度な抵抗」となるように工夫
しているかのどちらかでしょう。
 では,また次回……。

【お知らせ】
 私達は二ヶ月に一度,鹿内信善先生とともに札幌市内で「看図作
文」の学習会を開いています。その名も「看図作文研究プロジェク
ト」。会の名称は硬いのですが,15人程度で少人数で楽しく勉強に
いそしんでいます。また,年に3回ほど,「累積科学国語教育研究
会」という50人規模の学習会を開催して,「看図作文」を中心に作
文指導法の交流の機会ももっています。ちなみに,次回は10月30日
(土)の予定です。北海道にお住まいの方は,興味があればご参加
ください。案内はこちらに掲載しています。
    http://homepage2.nifty.com/higemaru/ruiseki7.htm

【今回の執筆者のプロフィールです】

堀 裕嗣(ほり・ひろつぐ)
札幌市立向陵中学校・教諭(国語・現在3年担任)
「研究集団ことのは」代表/「実践研究水輪」研究担当
「日本言語技術教育学会」北海道支部・事務局
著書
『全員参加を保障する授業技術』
『〈教室プレゼンテーション〉20の技術』
『発信型授業で「伝え合う力」を育てる』
『絶対評価の国語科テスト改革・20の提案』
『生徒・保護者にわかりやすい絶対評価の通知表』中1〜3
                以上すべて明治図書・他多数
 現在,「学級経営を高める」シリーズ全5巻を編集中
 また,このたび,『中学教育』7月増刊号『通知表所見文例集』
(小学館)を編集しました。お手元にとって御覧いただければ幸い
です。
 HP http://homepage2.nifty.com/higemaru/

       ◆       ◆       ◆

−−3.研究会情報−−

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|     野口塾(野口芳宏先生と学ぶ会)in帯広     |
|日時:平成16年8月29日(日)            |
|場所:帯広市:啓北コミュニティセンター         |
|主催:鍛える国語教室・十勝支部             |
|詳細:                         |
http://blog.livedoor.jp/yo_mazda/archives/4537591.html
└────────────────────────────┘

−−4.編集後記−−

○次号は、上條晴夫さんの登場です。お楽しみに。
○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、3000部を突破することが殿堂入りの条件です。ぜひ本誌
 をお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○HPやMLなどへの無断転載は固くお断りします。
 転載希望の方は必ず松田までご相談ください。
○本誌の読者登録・解除・アドレス変更・バックナンバーは、
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/ まで。
○本誌はインターネットの本屋さん「まぐまぐ」を利用してします。
 http://www.mag2.com/

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メールマガジン「実践!作文研究」No.237 2004/8/22 読者数2144
編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
HP: http://www.jugyo.jp/sakubun/
(C) 2000,2004 実践!作文研究会
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