メールマガジン「実践!作文研究」
第228号(2004.6.20)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第228号 2004年6月20日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、今宮信吾さんによる「「児童詩の書かせ方」コツ・ネタ」
第3回をお送りします。
 ご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「「児童詩の書かせ方」コツ・ネタ」−−
                       兵庫県・小学校
                          今宮信吾

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         第3回「書く事を整理する」
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一、詩の中心を考える

 抵抗なく書くことができるようになってくると、あれも、これも
と書きたくなってくる。その際に「省略する」ということを子ども
たちに伝えていく。
 「世界で一番短い詩って知ってる?」と投げかけ、草の心平の
「冬眠」を例示する。
┌────────────────────────────┐
|  冬眠                        |
|             草野心平           |
|                            |
|         ・                  |
└────────────────────────────┘
 題名と「・」のみの詩なので、題名を隠して、予想させる。高学
年の子どもたちだと、知っている場合もある。真っ白の紙の中の点
が、蛙の冬眠を示しているというただそれだけのものである。イメ
ージの共有であると言ってもいい。
 この詩のすばらしさは、「・」にあるのではなく。「冬眠」をで
きるだけ短いことばで表現しようとしたところにある。
 これをこのまま、「すばらしいね。」と褒め称えても、真似をす
るだけに終わってしまうので、具体的に長い文章を例示し、その中
心とは、何かを考えさせる。教師が自作したものを元に、中心以外
の事柄に気づかせ、省略させていく。

【詩の中心とは何か】

┌────────────────────────────┐
|  エレベーターの中で                 |
|            五年 女子           |
| 私がのっているエレベーターに             |
| お兄さんがのってきた                 |
| ドアがしまらないように待っていた           |
| 「すみません」                    |
| 「いえいえどうぞ」                  |
| 降りるときに                     |
| 「ありがとうございます おやすみなさい」       |
| エレベーターにのってきた お兄さん          |
| 私の目を じっと目を見て               |
| 頭を下げた                      |
| お兄さんが降りた後                  |
| 私は心の中で                     |
| お兄さんの目を思い出していた             |
| きれいな目やなあと思って 考えていた         |
| エレベーターを降りた後に 思った           |
|                            |
| ことばのおくりものを                 |
| もらったみたいだなあって               |
└────────────────────────────┘
これでも十分伝わるものである。しかし、あえてこれをダイエット
させる練習として取り上げた。
『作者が一番伝えたかったことって何かな?』
「お兄さんにお礼を言われたこと」
「そのことが十分伝わるかな」
「かぎかっこと私の目をじっと見ていたというので伝わる」
「ことばのおくりものということばがいいと思う」
『お兄さんにお礼を言われたこと以外には書いてないかな』
「お兄さんの目がきれいやったって書いてある」
『それも伝えたかったことかな
「目のことも伝えたかったんだろうと思うけど、それよりもありが
 とうと、おやすみなさいとちがうかな」
『じゃあかぎかっことそこだけで書いてみても通じないかな』
「題名もお兄さんにしたらどうかな」
┌────────────────────────────┐
|  お兄さん                      |
|            五年 女子           |
| 「すみません」                    |
| 「いえいえどうぞ」                  |
| 「ありがとうございます おやすみなさい」       |
| エレベーターにのってきた お兄さん          |
| じっと目を見て                    |
| 頭を下げた                      |
| ことばのおくりものを                 |
| もらったみたいだった                 |
└────────────────────────────┘
「きれいな目」やエレベーターに乗り込むまでの状況は書きたくな
るものである。しかし、一度思い切って削ってみて、もう一度読み
比べてみる。そうすること抜きにして、詩とは何かを考えるきっか
けはできない。初めに書いたものの方がいい場合も多々ある。大事
なのは、自分で読み直すことのできる力をつけていくことである。
そのために、みんなで一つの詩を読み合うということを重ねていき
たい。それは次に書くための練習でもある。大人になると、自分の
書いた文章を一番すばらしいと思いこむ癖がある。それほど、自分
の文章は見直せないものである。詩を書くことを通して省略するこ
とと、見直す癖はつけたい。

二、省略することと絵を描くこと

 先日、図工科の教師が同僚教師と興味のある話をしていた。詩と
絵に共通した部分があるということである。
「心に残った風景をスケッチさせようと思って、外に出て写生をさ
 せたんだけど、心に残ったことをそのまま描かせようとしてもな
 かなか描けないものですね。」
「絵描きの優れているところは、みたものをすべてそのまま描くの
 ではなくて、印象に残った部分以外は、省略して描くという技術
 です。すべてを性格に描くのなら、写真に負けてしまうし、おも
 しろみも何もない。結局は一番印象に残ったところを残して後は
 捨てるという作業をしなければ、心に残る絵なんて描けない。」
 この会話を傍らで聞いていて、詩と共通する部分だなあと感じて
いた。詩も省略せずに出来事を忠実に書くだけなら、綴り方の方が
書きやすい。あえて、詩という表現方法を取る以上、絞り込めるだ
け、省略しなければいけないという思いを強くしたエピソードであ
った。

三、四コママンガで「転」を知らせる

 子どもの詩の特徴は、最後の行でひっくり返すことが多いという
ことである。それは、まさしく「起承転結」の転の部分をおしまい
に持ってくるようなものである。また、落語や漫才の落ちを最後に
持ってくるという手法である。そこで、4コママンガを利用して子
どもたちに「起承転結」の転を知らせるのである。


(田中しょう「あんずちゃん」(『神戸新聞』他)より)

 これを読んだ後、どこがおもしろかったかを尋ねる。
「せっかく買ってきたまくらをしないで寝てしまっているところ」
「けっきょく寝相が悪かっただけというところ」
『こういうように、思っていたことや予想していたこととは違った
 ということも書けるね。こんなふうに、予想をひっくり返すこと
 を文章では起承転結の転っていいます。』
 この後、少し起承転結の意味を語った後、
『これ詩にしたらどうなるかな。ちょっと先生やってみてんけど読
 んでくれる。』
と言って、私の駄作を紹介する。子どもたちはやさしいもので、
「けっこういいやん」「おもしろい」「これに似たことやったら前
にもあったわ」と詩を書き始めようとする。

┌────────────────────────────┐
|  安眠まくら                     |
|            四年 男子           |
| 「最近肩こりがひどくてね」              |
| お父さんが言う                    |
| 「まくらのせいじゃないかな」             |
| と肩をさわりながら言う                |
|                            |
| 次の日                        |
| 「安眠まくら買ってきたわよ」             |
| ってお母さん                     |
| 夜 お父さんが寝ている姿をみると           |
| 安眠まくらはしていなかった              |
| 寝ぞうが悪いだけだった                |
└────────────────────────────┘

四、短歌・俳句・川柳で詩の中心を押さえる

 五・七・五のリズムに乗せて書く定型詩も、短く書くための練習
になる。しかし、「季語」などの約束事があるために、実際には川
柳を書かせる。「サラリーマン川柳」などちょっと風刺の入ったも
のを使って書くようにさせる。五・七・五・という制約の中で、
「このことばにしようかな」といろいろと考えてみることや、こと
ばのリズムや響きを体感することは、詩を書くときのベースになる
だろう。実際には、「川柳」という風刺を題材に書くという方向に
広がることも多いが、どのことばを使って書こうかなというように、
ことばに慎重になるということはある。
┌────────────────────────────┐
|  阪急三番街で                    |
|            五年 女子           |
| 親子づれが 歩いていた                |
| お母さんは左手に                   |
| シャネルのかばんをもって               |
| 右手に                        |
| 火のついたたばこ                   |
| シャネルのかばんが                  |
| 安物に見えた                     |
└────────────────────────────┘

五、声に出して確かめる

 文字で書くことにこだわっていると、声に出して読むということ
で確かめることが少なくなる。
 書いたものを挟んで子どもたちと会話をすることで、子どもたち
がより、ことばに敏感になってくれればと思っている。実際に、書
いただけでは、あんまりいいとは思わなかったものが声に出してみ
ると、その子にぴったりの詩であったという場合もある。
 特にかぎかっこの多い詩などは、声に出してみると、また知違っ
た響きで伝わってくる。次の詩もそのようなものである。
 特に、初めのかぎかっこと終わりのかぎかっこのギャップは、声
に出して読まないと伝わってこないものである。

┌────────────────────────────┐
| こんだん会で                     |
|             六年 女子          |
| 「お母さん きいてなかったよ」            |
| 「なにが」                      |
| 「今度 シンデレラのげきがあるんだって        |
|          なんで言わなかったの」       |
| 「それはえんげきクラブのこと」            |
| 「きのう水道から水があふれて大へんだったんでしょ   |
|  先生が山崎さんも手伝ってくれたって 言ってたよ」  |
| 「それは 用務員の山崎さん」             |
└────────────────────────────┘
 自分に何も伝えなかった子をとがめようと勢い勇んで帰った来た
母親。しかし、すべてが的を外していたために、最後は娘にあきら
めるようになだめられてしまう。
 そのおかしみは、音と共にでないと伝わってこない。かぎかっこ
ばかりで書くこともテンポ良く短く書くコツかもしれない。

【今回の執筆者のプロフィールです】

今宮信吾(いまみや しんご)

神戸大学発達科学部附属住吉小学校勤務
1964年 兵庫県神戸市生まれ
兵庫教育大学学校教育学部卒業
同上 学校教育研究科終了予定(2004年3月)
国語教育探求の会、全国大学国語教育学会、日本国語教育学会
日本作文の会、臨床国語教育研究会 など会員
著書 
子どもといっしょに読みたい子どもの詩
「こころの展覧会」 桐書房
共著
「子どもとひらく国語科学習材」作文編 明治図書
「教科と総合の調和 教師の支援のポイントはこれだ!」明治図書
「音読・朗読・群読の指導ハンドブック」 あゆみ出版
「音読・群読・ことばあそびハンドブック」 あゆみ出版
「日本の教師」15 教師として私を変えたもの ぎょうせい
「小学校1年生の大研究」 子どもの未来社
「小学校3年生の大研究」 子どもの未来社
「小学校5年生の大研究」 子どもの未来社
                           など

       ◆       ◆       ◆

−−3.研究会情報−−

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【教室ディベート研究会】
           ディベートを小論文学習にどう活かすか
■日時:2004年7月19日(月・祝)午後1時〜5時
■場所:全郵政会館 中会議室
■詳細:http://nade.jp/
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【教室ディベート講座inディベート甲子園】
 主催:NPO法人 全国教室ディベート連盟
【期日】2004年8月1日(日)
【会場】神田外語大学(千葉・幕張)
【詳細】http://nade.jp/
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−−4.編集後記−−

○次号は、堀 裕嗣さんの登場です。お楽しみに。
○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、3000部を突破することが殿堂入りの条件です。ぜひ本誌
 をお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○HPやMLなどへの無断転載は固くお断りします。
 転載希望の方は必ず松田までご相談ください。
○本誌の読者登録・解除・アドレス変更・バックナンバーは、
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/ まで。
○本誌はインターネットの本屋さん「まぐまぐ」を利用してします。
 http://www.mag2.com/

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編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
HP: http://www.jugyo.jp/sakubun/
(C) 2000,2004 実践!作文研究会
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