メールマガジン「実践!作文研究」
第220号(2004.4.25)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第220号 2004年4月25日発行(毎週日曜日発行)
 登録・解除は http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、堀 裕嗣さんの連載「やる気をひきだす看図作文の授業」
第2回をお送りします。
 なお、堀さんの連載では、毎回絵が登場します。このマガジンの
システム上、絵を載せることができないので、絵へのリンクを張っ
ています。HPに載せる際には絵を同時に見ることができますので、
よろしくお願いします。
 ご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.「やる気をひきだす看図作文の授業」−−
                       北海道・中学校
                          堀 裕嗣

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 第2回「〈問い〉に答える」
               堀 裕嗣(札幌市立向陵中学校)
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 まずは,次の絵図をご覧ください。


 (鹿内信善『やる気をひきだす看図作文の授業』春風社、p125
  より)

 ただ眺めれば,なんということもない絵です。しかし,この絵を
モチーフに「物語」をつくる,ということを考えて,よくこの絵を
分析してみて欲しいのです。
  よくよく見ると,この絵にはいくつかの疑問点があることに気が
つきます。例えば,次のようなものです。
  ・この人は男の人でしょうか,女の人でしょうか。
  ・この人の着ているものは何でしょうか。
  ・机の上のサボテンは何に使うのでしょうか。
  ・机の上に重ねてある紙の束は何なのでしょうか。
  ・この人が手に持っている紙は何なのでしょうか。
 「看図作文」ではまず,このような〈問い〉を投げかけます。も
ちろん答えなどありません。それぞれの子どもたちが思いつきで答
えれば良いのです。
 ためしに,みなさんも授業を受ける子どもになったつもりで,こ
の5つの〈問い〉に答えてみてください。難しいことを考える必要
はありません。パッと頭に浮かんだとおりに答えればよいのです。
それではいきますよ。

 (1)この人は男ですか?女ですか?

 (2)この人の着ているものは何ですか?

 (3)なぜ机の上にサボテンがあるのですか?

 (4)机の上に重ねてある紙の束は何ですか?

 (5)この人が手に持っている紙は何ですか?

 いかがでしょうか。これらの質問に答えると,この絵がある特定
の一つの場面として位置づけられるのではないでしょうか。
 例えば,読者のみなさんの中に次のように答えた方がいらっしゃ
るはずです。
 (1)この人は男ですか?女ですか? → 女
 (2)この人の着ているものは何ですか?  → 白衣
 (3)なぜ机の上にサボテンがあるのですか?
            → スケッチをするための題材
 (4)机の上に重ねてある紙の束は何ですか?
          → スケッチをするための用紙で,これから配布される。
 (5)この人が手に持っている紙は何ですか?
          → スケッチの仕方の手順を書いたメモ
 とすると,この絵は何をしている場面になるかというと,「美術
の時間に,先生がサボテンをスケッチする手順を説明している場面」
ということになるわけです。
  でも,ここで考えて欲しいのです。みなさんが5つの質問に答え
る際,(1)(2)は確かに思いつきを答えていたかもしれません。
しかし,(3)以降は思いつきではないはずなのです。
 つまりこういうことです。
  (1)は「男」と答えようが「女」と答えようが,ほとんどその
後の質問に影響は及ぼしません。
 しかし,(2)の質問は違います。(2)で「白衣」と答えてし
まうと,もうこの人は「白衣」を着得る職業の人とイメージが限定
されてしまうのです。そうすると,この人はお医者さんとか美術や
理科の先生とか,そういった人であると頭の中で規定されます。
 そこに,「サボテンはなぜあるのか」という(3)の〈問い〉で
す。お医者さんの机にサボテンはそぐわないなあ……。あっ,そう
だ!これからこのサボテンをスケッチするんだ!だから,この人は
美術の先生なんだ!という発見が生まれるわけです。
 次は「紙の束は何?」という〈問い〉です。もう簡単になります。
そりゃあ,スケッチする紙だよ。「手に持っている紙は?」スケッ
チの手順を書いたメモさ……と全体に統一されたイメージとして形
づけられるわけです。
  つまり,(3)以降は,ある統一された「整合性」のもとに質問
に答えているわけですね。この5つの質問に答えるためのキーポイ
ントは,実は「白衣」と「サボテンの使いみち」の整合性を発見で
きるかどうかなのです。
 ところが,同じ絵を見て,同じ質問に答えても,ある読者は次の
ように答えたかもしれません。
 (1)この人は男ですか?女ですか? → 女
 (2)この人の着ているものは何ですか?  → スーツ
 (3)なぜ机の上にサボテンがあるのですか?
            → 転校した生徒から送られてきた
 (4)机の上に重ねてある紙の束は何ですか?
            → これからみんなで御礼の手紙をかくため。
 (5)この人が手に持っている紙は何ですか?
                     → 転校した生徒の手紙
 すると,全体の「整合性」は,転校した生徒から手紙が来た。し
かも,みんなで育てて欲しいとサボテンも送られてきた。先生は学
級のみんなに手紙を読んで聞かせ,そのあとで,みんなで転校生に
手紙を書こうと投げかける……そんな場面になるのです。
 「看図作文」は,このようにいくつかの質問を子どもたちに投げ
かけることによって,子どもたちの頭の中に「整合性をもったある
一つの場面」をつくらることから始めます。そして,ある場面が全
員の頭の中に形づくられたら,その場面にタイトルをつけさせます。
最初の例であれば「サボテンのスケッチ」,次の例であれば「転校
生からプレゼント」いったようにです。
 こうして,400字原稿用紙を配布し,「この場面の物語を書こ
う」と言って作文させるのです。子どもたち全員が「書く内容」を
すでに持っています。「書くことがないよ〜」なんていう子どもは
一人もいません。
  もしも「言語技術」的な要素を入れたいならば,「会話文を必ず
二つ以上入れようね」なんていう指導も可能です。
 以上が私の行っている「看図作文」第一時の授業です。

【お知らせ】
 私達は二ヶ月に一度,鹿内信善先生とともに札幌市内で「看図作
文」の学習会を開いています。その名も「看図作文研究プロジェク
ト」。会の名称は硬いのですが,15人程度で少人数で楽しく勉強に
いそしんでいます。また,年に3回ほど,「累積科学国語教育研究
会」という50人規模の学習会を開催して,「看図作文」を中心に作
文指導法の交流の機会ももっています。ちなみに,次回は10月30日
(土)の予定です。北海道にお住まいの方は,興味があればご参加
ください。案内はこちらに掲載しています。
    http://homepage2.nifty.com/higemaru/ruiseki7.htm

【今回の執筆者のプロフィールです】

堀 裕嗣(ほり・ひろつぐ)
札幌市立向陵中学校・教諭(国語・現在3年担任)
「研究集団ことのは」代表/「実践研究水輪」研究担当
「日本言語技術教育学会」北海道支部・事務局
著書
『全員参加を保障する授業技術』
『〈教室プレゼンテーション〉20の技術』
『発信型授業で「伝え合う力」を育てる』
『絶対評価の国語科テスト改革・20の提案』
『生徒・保護者にわかりやすい絶対評価の通知表』中1〜3
                以上すべて明治図書・他多数
 現在,「学級経営を高める」シリーズ全6巻を編集中
 HP http://homepage2.nifty.com/higemaru/

       ◆       ◆       ◆

−−3.編集後記−−

○次号は、堀 裕嗣さんの登場です。お楽しみに。
○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、3000部を突破することが殿堂入りの条件です。ぜひ本誌
 をお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○HPやMLなどへの無断転載は固くお断りします。
 転載希望の方は必ず松田までご相談ください。
○本誌の読者登録・解除・アドレス変更・バックナンバーは、
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/ まで。
○本誌はインターネットの本屋さん「まぐまぐ」を利用してします。
 http://www.mag2.com/

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編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
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(C) 2000,2004 実践!作文研究会
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