メールマガジン「実践!作文研究」
第219号(2004.4.18)


学力問題としての作文教育を考える
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 メールマガジン「実践!作文研究」
 第219号 2004年4月18日発行(毎週日曜日発行)
 登録・解除は http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、今宮信吾さんの連載「「児童詩の書かせ方」コツ・ネタ」
第2回をお送りします。
 ご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「「児童詩の書かせ方」コツ・ネタ」−−
                       兵庫県・小学校
                          今宮信吾

============================================================
         第2回「常識を問い直す」
============================================================

1.発見・驚きを大事にして

 詩の命である、「発見」を大事にしたい。「おや?」と思う疑問
の心や、「どうなっているんだろう?」という好奇心を常に持って、
自分の身のまわりの出来事を見つめてほしい。そのために、初めは
短い言葉を集めることから始めていく。「言葉ちょきんノート」に、
書いた発見を題名にすることから始めていく。短い言葉の中にこそ、
詩的なものがあることを伝え合っていきたい。
┌────────────────────────────┐
|   せ中                       |
|       2年男子                 |
| テレビのコマーシャルで                |
| 「こどもはおやのせ中を見てそだつ」          |
| といっていた                     |
| おふろで                       |
| お父さんのせ中を見たら                |
| けが はえていた                   |
└────────────────────────────┘ 
 きっとこの子は、一生懸命、親の背中を見ていたんだろう。親の
背中を見ながら「どんな育ちをしていけばいいのかと考えたのだろ
う。「それがどうしたの?」と言ってしまえばそこまでの話である。
これに対して、大げさなぐらいに驚いて、おもしろがる教師の姿こ
そ、具体で詩を伝えることになる。
┌────────────────────────────┐
|   あいさつ                     |
|       5年 男子                |
| 先生                         |
| 勉強のはじまりと                   |
| 終わりには                      |
| 日番があいさつするのに                |
| 休み時間の時には                   |
| 「今から休み時間をはじめます」            |
| とは言わないな                    |
└────────────────────────────┘ 
 くらしの中の小さな発見である。子どもたちにとっては、授業時
間より、休み時間が大事なのである。だから、本来のあいさつが必
要なのである。

2.「3つのまま」を問い続ける

 「書くことがない」という子どもたちに、「見たまま」「聞いた
まま」「感じたまま」に書きましょうと助言することはないだろう
か。子どもたちにとっては、実はこの「まま」がわからないから、
書けないのである。
 「見たまま」「聞いたまま」「感じたまま」とは、どういうこと
をいうのだろうか。「見たまま」「聞いたまま」「感じたまま」と
はどんな書き方なのだろうか。
 このことは、具体的な言葉で伝えていかなければ、伝わりにくい。
「見たまま」ということを自分の目の前で起こることを写真に撮る
ように、などと概念的に語っても子どもたちには、わからない。
┌────────────────────────────┐
|   武庫川                      |
|       6年 男子                |
| ゴミの中で                      |
| サギが羽根を広げて死んでいた             |
| 飛んでいる形のまま死んでいた             |
| 灰色になった目が                   |
| 遠くの空をにらんでいる                |
| 目だけが                       |
| よごれずに光っている                 |
└────────────────────────────┘
 この詩の中には、「見たまま」と「感じたたまま」が含まれてい
る。前の4行は、事実としてとらえたことを書いている。3行目の
「飛んでいる形のまま」というのは、見たことを比喩的に解釈して
書いている。後ろの3行は、自分の思いを事実から考えたことの方
を中心に表現している。これらの違いを考え合うことで、「まま」
について考えることができる。

3.見つめるまなざしを鋭く

 こうした「見る」「聞く」「感じる」ことを、詩を書くことを通
して具体的な言葉で伝えていくことにより、〈ひと・もの・こと〉
を見つめる目を養うことができる。
 子どもたちは成長するに従って、語彙を増やし、的確な言葉を用
いて表現できるようになる。しかし、言葉を覚えることで、抽象度
の高い、ありふれた表現になることもしばしばある。自分が、目と
耳と心でとらえた事柄を、人とは違う言葉で表現することを大事に
していきたい。
 言葉と事実が、子どもが認識していることと離れないとことが大
事なことである。子どもたちが書いた言葉を読んでそれを感じ取る
教師の目と心を鍛えることは必要であるが、簡単なチェックリスト
を作ってみると以下のようになる。

┌─┐
|1|色・形・大きさ・匂い・音など具象性を尋ねて確かめる。
└─┘
    子どもたちが「忘れた」という場合には、十分に見ていな
   かった証拠なので、「今度はそこをしっかりと見てきてね」
   と促す。
┌─┐
|2|比喩表現がありきたりのものになっていないか。
└─┘
    「お母さんが怒って、頭に角が生えました」などというよ
   うに、使い古された比喩表現を安直に使っていると判断した
   場合には、「本当に角が生えてきたの」と尋ね、もう一度よ
   く思い出させる。
┌─┐
|3|長い文章を書いてきた子には、行切りを促し、「詩の山場」
└─┘を考えさせる。
    書くことが得意な子は、散文のように長い文章を書いてく
   る。行の長さだけが問題ではないが、一番伝えたい「詩の山
   場」(詩の中心)がたくさん盛り込まれ過ぎて、伝えたいこ
   とがぼやけてしまうことがある。(行切りの方法については、
   次号以降で)

 方法はさまざまに考えられる、「その子らしさ」を教師が感じ取
るために、常に「人とは違うこと見つけて書くこと」をキーワード
にしたい。

4.目を輝かせるための練習

【言葉でスケッチする】
 発見したと思うことを言葉で書かせる。その際に、その場の情景
を的確にとらえさせたい。子どもたちには、「写真を撮るときのよ
うに、決定的瞬間を逃さないで書くんだよ」と語りかける。
 例示作品としては、次のような詩を提示する。
┌────────────────────────────┐
|   たんぽぽのわたげ                 |
|       5年 男子                |
| 風にとばされた                    |
| 三本のわたげ                     |
| おいかけていった                   |
| 横にゆれている                    |
| 風にぶらさがっている                 |
└────────────────────────────┘
 「風にぶらさがっている」という表現を生み出したのは、たんぽ
ぽのわたげをしっかりと見つめていたこの子の瞳である。「三本」
「横に」というように、一瞬の出来事をとらえている。個性的な表
現を生み出すために、見ることが基礎になっていることを物語って
いる。

5.耳をそばだてさせるための練習

 メモと取る習慣を身につけさせたい。電車の中での若者の会話。
長電話をするお母さんの声を盗み聞くなど、「おもろい(関西弁で
おもしろい)」と思ったことをさっとメモに取るようにさせたい。
┌────────────────────────────┐
|   朝                        |
|       5年 男子                |
| 「おきなさい」                    |
| 「あと5分」                     |
| 「おきなさい」                    |
| 「おれ ねぶそく」                  |
| お母さんの声がうるさいので              |
| おきることにした                   |
| 「はよ ごはんたべ」                 |
| 「きがえなさい」                   |
| 「ほかのテレビにかえるで」              |
| おきても まだうるさい                |
└────────────────────────────┘
 子どもなりの無言の抵抗である。かぎかっこを並べて書いたこと
の支えには、日常的な「聞き上手」になるための練習がある。「今
日の宿題は、おもしろいかぎかっこの言葉を集めてくること」とい
うような宿題を出し、発表会をして、聞くことを楽しみたい。

6.感性を研ぎ澄まさせる

 感性については、年齢を重ねるほど衰えていくと捉えている。小
さい時には、「こんなおもしろい言葉をいうのか」と思っていても、
だんだんと「そんなことあるわけないやろ」というように、常識で
考えるようになってくる。高学年になったときには、あえて、幼児
の言葉を提示し、感性を取り戻させる。
┌────────────────────────────┐
|   おとうさん                    |
|       4歳 女子                |
| どうして おばあちゃんは               |
| おとうさんのことを                  |
| しんごってよぶの                   |
| おじいちゃんのことを                 |
| おとうさんって いってるで              |
| おとうさんは                     |
| ふたりいないで                    |
└────────────────────────────┘
 「おとうさん」という同じ言葉なのに、示している対象が違って
いる。そんな素朴な疑問を持つことこそ大事なことだと思う。「そ
んなの当たり前」と考えていたことを、「おもろい」と感じてほし
い。高学年の詩が概念的になることをふせぎたい。

【今回の執筆者のプロフィールです】

今宮信吾(いまみや しんご)

神戸大学発達科学部附属住吉小学校勤務
1964年 兵庫県神戸市生まれ
兵庫教育大学学校教育学部卒業
同上 学校教育研究科終了予定(2004年3月)
国語教育探求の会、全国大学国語教育学会、日本国語教育学会
日本作文の会、臨床国語教育研究会 など会員
著書 
子どもといっしょに読みたい子どもの詩
「こころの展覧会」 桐書房
共著
「子どもとひらく国語科学習材」作文編 明治図書
「教科と総合の調和 教師の支援のポイントはこれだ!」明治図書
「音読・朗読・群読の指導ハンドブック」 あゆみ出版
「音読・群読・ことばあそびハンドブック」 あゆみ出版
「日本の教師」15 教師として私を変えたもの ぎょうせい
「小学校1年生の大研究」 子どもの未来社
「小学校3年生の大研究」 子どもの未来社
「小学校5年生の大研究」 子どもの未来社
                           など

       ◆       ◆       ◆

−−3.メルマガ相互PR−−

---------------------------------------------------<<PR>>---
〓〓論説力磨いてますか?〓〓
メルマガ「10秒早読み、200字社説」
主要全国紙の社説を大胆に要約、200字にしてご紹介しています。
10秒で各社の基本的な考えが理解できます。
論説文の構成を学びたい方にもお奨めです。完全無料!
詳しくは http://www.mag2.com/m/0000120323.htm まで
------------------------------------------------------------

       ◆       ◆       ◆

−−4.編集後記−−

○次号は、堀 裕嗣さんの登場です。お楽しみに。
○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、3000部を突破することが殿堂入りの条件です。ぜひ本誌
 をお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○HPやMLなどへの無断転載は固くお断りします。
 転載希望の方は必ず松田までご相談ください。
○本誌の読者登録・解除・アドレス変更・バックナンバーは、
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/ まで。
○本誌はインターネットの本屋さん「まぐまぐ」を利用してします。
 http://www.mag2.com/

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
メールマガジン「実践!作文研究」No.219 2004/4/18 読者数2144
編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
HP: http://www.jugyo.jp/sakubun/
(C) 2000,2004 実践!作文研究会
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


「「児童詩の書かせ方」コツ・ネタ      
「第219号の感想」を書く 戻  る トップページへ

メールマガジンのご案内へ