メールマガジン「実践!作文研究」
第21号(2000.6.18)


論理的思考を鍛える「さくぶん情報誌」
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第21号 2000年6月18日発行(毎週日曜日発行)

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。「実践!作文研究」第21号をお送りしま
す。今回は、波田野ファミリスクールの奥泉 香さんによる「大学
生に作文を教える」の第2回です。第1回は第12号(4月16日
発行)でした。第1回を読みたい方は、ぜひバックナンバーをホー
ムページでご覧下さい。
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/

         ◆     ◆     ◆

−−2.リレー連載・「大学生に作文を教える」−−
                   波多野ファミリスクール
                          奥泉 香

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          大学生に作文を教える
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┌────────────────────────────┐
│   考えるための文体を指導する    −その2−   │
└────────────────────────────┘

 前回に引き続き、今回も大学での私の実践を報告する。私は週一
回、1、2年生に論証文の指導を行なっている。新聞の投書などを
使って、それについての意見を論じる文章を書いてもらう形で、作
文指導を行なっているのである。
 今回はその中から、書き出しの部分の次のような指導を報告する。

┌────────────────────────────┐
│ それは、文章の書き出しの部分で、           │
│    <問の形で論点をしぼり込んで提示させる>    │
│                   という指導である。│
└────────────────────────────┘

 授業では、原則的に「頭括型」で文章を書かせている。つまり、
最初に結論(この場合は自分の立場)を述べてから、その理由をそ
の後に述べていくという順序で書かせているのである。この方が、
後続の論証の指導がし易いからである。
 つまり、学生の書く文章は、概ね次のような構造になっている。

┌────────────────────────────┐
│ その問題についての                  │
│    自分の立場あるいは判断  +  その理由    │
└────────────────────────────┘

 この前半で立場や判断を述べる際に、<問>の文を一文書き入れ
させるのである。
 実際には、次のような型の文を書くことになる。

┌────────────────────────────┐
│ ○○は、○○だろうか。                │
│ ○○は、○○か。                   │
└────────────────────────────┘

 書き出しの部分に、この<問>とその<答え>を書く形で、これ
から論じる問題についての自分の立場や判断を述べるのである。 

 それでは、具体的に学生が書いた<問>をみてみよう。
 資料に使った記事には、小学校低学年の子が学校の物を壊した場
合、弁償させるのは問題ではないか、という内容が書かれていた。
 私は学生に、
「似たような<問>を最低でも五つは書いてみるように」
 と指示する。ここがミソである。
 学生は許してもらえないので、無理やりにでも、最初に書いた
<問>の各部の語を他の語に換えながら、なんとか五つの<問>を
書く。
 例えばこうだ。

┌────────────────────────────┐
│・低学年の子どもが反省するのに、弁償は必要なのだろうか。│
│・低学年の子どもに責任を感じさせるためには、弁償は不可欠│
│ なのだろうか。                    │
│・親は、低学年の子どもが壊した物を弁償する必要があるのだ│
│ ろうか。                       │
│・親は、子どもが壊した物を弁償する義務があるのだろうか。│
│・子どもが学校の物を故意に壊したか否かで、親の弁償義務は|
│ 変わるのではないだろうか。              │
└────────────────────────────┘

 第3文めと第4文めを比較してみよう。「弁償する必要がある」
が「弁償する義務がある」に変わっていることがわかる。また、
「低学年の子ども」と限定して論じた方がよいかどうかも、考え始
めている様子がうかがえる。年齢に関係なく「子ども」が壊した物
の弁償は親がすべき、とくくった方がよいのかどうかを考えている
のである。

 このように、書き出しの部分に<問>を書き入れさせることによ
って、その問題について、どのような論点あるいは切り口で述べよ
うとしているのかが、はっきりとしてくる。読み手に対してはもち
ろん、書き手本人に、論点がくっきりと自覚できてくるのである。
 このような状態で、後続の理由、つまり論証を書くと、的のしぼ
れた論証がしっかりと書けるようになる。

 以上述べてきたように、<問>を書き入れる形で書き出しの部分
を書こうとすると、その形に思考が促されて論点がしぼれてくる。
このような練習を意識的に行なうと、次のような、学生の文章によ
く見かける書き出しは防ぐことができるようになる。

┌────────────────────────────┐
| 学校側の言い分もわかるような気がします。親側の言い分も|
|納得できます。どちらともいえない難しい問題ですが、どちら|
|かというと、親側に賛成です。              |
└────────────────────────────┘

 「どちらかというと、親側に賛成」だという、まだ粗い判断の示
し方である。この問題に対して、どのような切り口で、親側のどの
ような考え方について賛成意見を述べていこうとしているのか。そ
のことがしぼり込めていないので、これに続く理由の部分も、漠然
とした書き方になり易い。何を書くべきか、自覚できていない状態
で書くことになってしまうからだ。
 ある種の型や文体で書いてみると、このように思考が刺激されて
考えが整理しやすくなる。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 奥泉 香(おくいずみ かおり)
 一週間の半分を、財団法人波多野ファミリスクールで小学生に作
文指導を、残りの半分を、大学や専門学校で論理学や国語を担当し
ている。大学院では、教育哲学を専攻。ことばと思考の関係が研究
テーマ。

         ◆     ◆     ◆

−−3.ホームページ進化情報−−

○「コンクール・リンク集」では、次のコンクールにリンクを張り
 ました。

・第1回サイエンスビジョンコンテスト
・第33回音楽鑑賞教育振興・作文募集
・平成12年度交通安全ファミリー作文コンクール
・しぐれ忌献詠俳句募集
・第4回サトー八チロー記念「おかあさんの詩」全国コンクール
・北海道旅行プレゼント!作文募集
・公共交通機関利用促進作文・エッセイ募集
・第39回かんぽ作文コンクール
・第3回「私の介護体験記」募集にリンク。
・第5回Fete de TANABATA 七夕祭愛のメッセージ
・「おじいちゃん、おばあちゃん、長生きしてネ」原稿募集
・第8回一筆啓上賞日本一短い手紙「私へ」募集

 こちらのページから行くことができます。
 http://www.jugyo.jp/sakubun/link/contest.html

○(財)音楽鑑賞教育振興会と相互リンクをしました。
 http://www.pioneer.co.jp/onkan/

         ◆     ◆     ◆

−−4.編集後記−−

 来週号(No.22)は、ゲストとして、メールマガジン『読むだけ
の作文講座−−技術する思考−−』の脇坂幸雄氏が登場する予定で
す。お楽しみに!

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