メールマガジン「実践!作文研究」
第208号(2004.1.4)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第208号 2004年2月1日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、佐内信之さんの連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学
ぶ」最終回です。佐内さん、これまでお疲れ様でした。
 ご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之


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国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第12回

   詳しく書く─概念くだき─
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■連載について

 国分一太郎は「全国の綴方教育を実践する教師の先導的指導者」
として知られた人物である。代表作『新しい綴方教室』(日本評論
社 一九五一年二月)は「多くの教師に感動を与え、綴方教育に意
欲を持たせる」ものであった。

 戦後は理論家としての活動が多かった国分一太郎も、戦前は実践
家として全国的に活躍していた。山形の小学校教師時代に作成した
文集「もんぺ」「もんぺの弟」は「綴方教育を志す多くの教師たち
に、多大の影響を与える」ほど評価の高かったものである。

 このような「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」べきものは何
か? この連載を通して、綴り方教育の過去の遺産から、現在の作
文教育に生かせるものを探っていきたい。

(国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』明治図書 一九八八年
 三四四ページ)

■戦後における「概念くだき」の提案─『新しい綴方教室』より─

 国分は「あまりにまとまりすぎていて、子どもらしくない文章か
らの解放のしごと」を「概念くだき」と名付けた。(『新しい綴方
教室』三〇ページ)しかし、その仕事は決して簡単ではない。
┌────────────────────────────┐
│ それは、おとなのわたくしたち(いちおう、文章表現の技術│
│を身につけたはずの)さえかけないのだから、作家でも、文筆│
│家でも、なんでもない、五十人、六十人の千差万別な、おさな│
│い子どもたちが、表現技術もこれからならい、日に日に成長し│
│つつある子どもが、どれも、これも、「くわしくかけ」の号令│
│一本で、たちどころに、くわしくかくようになどはなりはしな│
│いということだ。(四五ページ)             │
└────────────────────────────┘
 だからこそ、「どこを、どうくわしくかくのか」という「ごく親
切な」「愛情をこめた」「あたたかい」指導が必要だと国分は主張
している。(四五ページ)

■戦前における国分の実践─「『綴方採掘期』報告」より─

 それでは、国分自身の指導はどのようなものだったのだろうか。
国分は新卒時代の実践を報告している。(「『綴方採掘期』報告」
『教育・国語教育』第四巻第五号 一九三四年五月 ※次の文献に
も所収『国分一太郎文集5 生活綴方とともにI』新評論 一九八
四年三月)

 教師になったばかりの国分は、綴り方の指導で「最初の澁滞」と
格闘する。子どもたちは「題なし」と訴えるか、「類型的な樣式化
した綴方」を書くか、どちらかであった。(六八〜六九ページ)

 そこで、「なるべく多くの參考文例も讀んでやつた」り、「心に
ハツと思つた事を」求めたり、「自分だけしかかけない事を見つけ
ろ」と言ったり、「心に面白いと思つた事がらはないか」とせがん
だりした。それでも、子どもたちは「電氣にも感じないやうに無表
情」であった。(七〇ページ)

 その結果、国分が行き着いたのは次の指導である。
┌────────────────────────────┐
│ かく時には、詳しく/\と口やかましく言つた。一枚位でね│
│うちのある事はかけないといつた。詳述する中には、生活の詳│
│しい繰抜き方もわかつてくると思つた。類型的な文を驅逐する│
│には、自分だけ見つけて來たものをかけといひつけた。ない人│
│はいいから、遊んだ事でも、てつだひの事でも詳しくかけとい│
│つて、叙事的な方へ進めた。餘に早く心持々々といふ事は、却│
│つて文を概念的にするし、形式化する事もわかつた。    │
│(七〇〜七一ページ)                  │
└────────────────────────────┘
 少しずつ手応えを感じた国分は、「彼らの綴方をよく讀む氣持」
になる。「夜中の一時がすぎても、不足だらけの綴方をよむ氣」に
なる。そして、「子供の提出した綴方をぐん/\讀み乍ら、赤いペ
ンをもつて、行間にどん/\と足りない所を書いてやる」、「足り
ない所は、足りないとその場所に質問してやる」のである。(七二
〜七三ページ)

 たとえば「その前は、その時は、その後で、それで、それから、
そこへ、そして、そこで、そのわけ、そのようす」と行間に書いて
やる。「目を働かせよ、耳を、口を、舌を、體を、色は、光は、味
は、匂は、感じは」と要求する。「なぜ誰が、どこで、いつだ」と
問いかける。「その時どう思つたか。何か思ひ出さなかつたか。考
に間違はないか。これでいいか。かう言はれたらどうなる。今では
どう思ふ」と横線を引いてやる。「顔つき、目つき、言葉の言い振
は、どんなみなり、したくは、やうすは」と質問するのであった。
(七二〜七三ページ)

 このような指導を重ねた国分は、次の境地に達する。
┌────────────────────────────┐
│ かうしてかいてやると、おざなりの評の必要はなかつた。又│
│最後にまとめた批評も、觀念的に感じられて來て、つけてやる│
│氣は起らなかつた何處が足りないかを具體的に教へてやらない│
│で、たらない/\とだけ叱つてはやりたくないものだと、つく│
│/\思ふやうになつた。かうして足りない事を足りないとかい│
│てやつた時、僕は子供の綴方を一番よく見てやつた愉快を感じ│
│た。(七三ページ)                   │
└────────────────────────────┘
 その後、子どもたちに「眞赤になつた用箋を返してやつて、是非
讀ませてやる」、「自分の綴方の不足を認識させてやる」、「改作
して、再提出させる時間も多過ぎる位にとつ」てやるのである。
(七三ページ)

 とにかく、子どもが書いた文章をよく読んでやる。そして、細か
く添削する。さらに、書き直させる。その繰り返しが国分における
「概念くだき」の指導であった。

■宇佐美寛の場合─比喩くだき─

 宇佐美寛は藤岡信勝との「論争」を題材に「論理構成法研究」を
行っている。その中で「概念くだき」に関わって次のように言う。
┌────────────────────────────┐
│ わが教育界では、「概念づくり」や「概念くだき」は、意識│
│されてきた。しかし、「比喩づくり」・「比喩くだき」を主張│
│するのは、おそらく私だけだろう。これは、「概念づくり」・│
│「概念くだき」が口先では唱えられても、まじめに考えられて│
│はいなかったという事態のあらわれである。なぜなら、概念が│
│作られ、機能するのは、比喩を通じてであり、比喩に助けられ│
│てであるからである。比喩の働きを研究しなければ、〈概念〉│
│をどう作らせるべきかは、よくわからないはずなのである。 │
│(『宇佐美寛・問題意識集6 論理的思考をどう育てるか』明│
│治図書 二〇〇三年三月 一八九ページ)         │
└────────────────────────────┘
 宇佐美は「比喩くだき」の例として、かつて自らが行った斎藤喜
博の「出口」実践・理論批判も挙げている。(同前書 一九四〜一
九七ページ)
 国分の「概念くだき」を「まじめに」考えるためには、宇佐美の
「比喩くだき」も視野に入れる必要があるだろう。

■連載を終えるにあたって

 一年間、毎月の原稿を書き続けるのは苦労しました。けれども、
連載のおかげで修士論文の作業が進み、今では感謝しています。連
載内容は私の論文「国分一太郎の昭和戦前期における綴り方実践の
研究」に生かされています。機会を与えてくださった松田編集長と
お付き合いいただいた読者の方々に感謝します。ありがとうござい
ました。(二〇〇四年二月一日 修士論文提出締切の前日に)

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      全国教室ディベート連盟
      学習ゲーム研究会など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      以上学事出版
      『5分間でできる学習遊びベスト50』(共著)
      たんぽぽ出版

       ◆       ◆       ◆

−−3.研究会CM−−

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−−4.編集後記−−

○終わる連載あれば始まる連載ありです。次号は、伊達木新子氏の
 「日本の西端で作文をさけぶ〜作文子育て奮闘記〜」第1回をお
 送りします。お楽しみに。
○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、3000部を突破することが殿堂入りの条件です。ぜひ本誌
 をお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○HPやMLなどへの無断転載は固くお断りします。
 転載希望の方は必ず松田までご相談ください。
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編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
HP: http://www.jugyo.jp/sakubun/
(C) 2000,2004 実践!作文研究会
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