メールマガジン「実践!作文研究」
第204号(2004.1.4)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第204号 2004年1月4日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさん、あけましておめでとうございます。
 今回は、佐内信之さんの連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学
ぶ」第11回(全12回)をお送りします。ご意見・ご感想をお待
ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第11回

   数字を入れて書く
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■連載について

 国分一太郎は「全国の綴方教育を実践する教師の先導的指導者」
として知られた人物である。代表作『新しい綴方教室』(日本評論
社 一九五一年二月)は「多くの教師に感動を与え、綴方教育に意
欲を持たせる」ものであった。

 戦後は理論家としての活動が多かった国分一太郎も、戦前は実践
家として全国的に活躍していた。山形の小学校教師時代に作成した
文集「もんぺ」「もんぺの弟」は「綴方教育を志す多くの教師たち
に、多大の影響を与える」ほど評価の高かったものである。

 このような「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」べきものは何
か? この連載を通して、綴り方教育の過去の遺産から、現在の作
文教育に生かせるものを探っていきたい。

(国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』明治図書 一九八八年
 三四四ページ)

■作品「もうけたぜにの日記」─「色々の日記」より─

 一九三四(昭和九)年四月二五日、文集「もんぺ」第五号が発行
された。しかし、すでに「もんぺ」の子たちは国分の手を離れてい
た。国分が三・四年生と受け持った子たちは五年生となり、国分は
再び三年生の担任となっている。この第五号は、二年間の指導を締
めくくる最後の文集「もんぺ」であった。

 文集には「日記の色々」というコーナーがある。三年生のときか
ら継続指導していたため「日記をかいた人がたくさん」いた。そこ
で、「みなのせられませんから、色々な日記を一日か二日分づゝ」
紹介している。(一三六ページ)

 たとえば、「雪日記」「空日記」「たべもの日記」「にはとりの
なき方日記」など、それぞれの子どもによるユニークなテーマが並
んでいる。その一つに「もうけたぜにの日記」がある。
┌────────────────────────────┐
│  ◎もうけたぜにの日記 石垣一雄           │
│ ぞうりを六ぱうつた。一ぱは古いふしでつくつたから二十 │
│銭、あとは二十五銭。おぢいさんが馬車をひいて、一円二十九│
│銭、米つくりにいつてお父さんは七十五銭、みなで     │
│   円 銭                      │
│   145                      │
│   129                      │
│  + 75                      │
│  ────                      │
│   349 になります。               │
│                   (十二月二十九日)│
│(文集「もんぺ」第五号 一四三ページ)         │
└────────────────────────────┘

■国分による指導の言葉─「色々の日記をつけても」より─

 さて、この日記に対して、国分は「その日のほんとうのもうけは
いくらになりますか」とコメントしている。つまり、「ぞうり」売
り・「馬車」引き・「米つくり」の収入は分かるが、それぞれの支
出が計算に入っていない。そこで、国分は「馬にくはせるものの代
などもかんじよう」するように促している。(一四四ページ)

 このような「色々の日記」の最後に、国分は指導の言葉を寄せて
いる。
┌────────────────────────────┐
│  色々の日記をつけても                │
│一、毎日々々、いろ/\なことを、反省し觀察しても、何か │
│ 「一つの新しいこと」をみつけ出さなくては、いくらかいて│
│ も、生活のための日記にはならない。          │
│二、日記をつけていくうちに、自分がぐん/\のびていく日記│
│ こそ、ほんとによい日記だ。              │
│三、大きくなつてからの日記には、働いた人の數や、出來た仕│
│ 事や、産物の數やとれたお金や、はらつたお金の事までもか│
│ ゝなくてはいけなくなる。               │
│(文集「もんぺ」第五号 一五〇ページ)         │
└────────────────────────────┘
 日記を通じて、新しい発見や自分の成長を促すとともに、「數」
を取り立てているのが注目される。

 「もうけたぜにの日記」以外にも「八センチばかりふつてゐた」
(雪日記)、「ストーブによつてたかつて、たびをぬいであたつて
居つた人は30/50人位あつた」(空日記)などの記述が見られる。
おそらく、国分は日常的に「數」を意識させる指導を行っていたと
思われる。

■東井義雄の場合─算数日記─

 一九五七年五月、東井義雄の『村を育てる学力』(明治図書)が
出版された。まえがきは国分が書いている。戦争責任を感じ続けた
「十二年間のくるしみと反省」を乗り越えて「いま目の前にいる子
どもに正しく新しく奉仕する」仕事の成果が、この実践記録であっ
た。(同前書 三ページ ※次の文献より引用『ほるぷ現代教育選
集15 村を育てる学力』ほるぷ出版 一九七九年一二月)

 この本の中に、東井が担任した澄ちゃんという六年生の女の子が
登場する。彼女は「ふろたきの算数」「ごはんたきの算数」「畑し
ごとの算数」など、毎日「算数で身の回りを考え」、それを「算数
日記」にまとめている。(一七六ページ)

 東井は「生活によらなかったら、どんなりっぱな算数の体系も、
子どものものにはならない」と訴える。「時たまランドセルの重さ
を実測させても、一九八〇キログラムあったなどといって、平然と
している」のではなく、もっと子どもたちが「必要感」のある学習
をすべきである。そのための「算数日記は、私たちの経験からいう
と、一年生から可能」と提案している。(二五三〜二五六ページ)

 『村を育てる学力』には戦前生活綴り方運動の成果を取り入れた
実践も多い。「算数日記」も検討してみたい課題の一つである。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      全国教室ディベート連盟
      学習ゲーム研究会など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      以上学事出版
      『5分間でできる学習遊びベスト50』(共著)
      たんぽぽ出版

       ◆       ◆       ◆

−−3.編集後記−−

○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、3000部を突破することが殿堂入りの条件です。あと801
 人です。ぜひ本誌をお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
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編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
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(C) 2000,2004 実践!作文研究会
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