メールマガジン「実践!作文研究」
第200号(2003.12.7)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第200号 2003年12月7日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 おかげさまをもちまして、本誌は創刊200号を迎えました。特
別なイベントはありませんが、これからも作文教育の活性化のため
に頑張っていく所存ですので、どうぞよろしくお願いします。
 さて今回は、佐内信之さんによる「国分一太郎の綴り方教育実践
に学ぶ」をお送りします。
 ご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第10回

   相手の気持ちを考えて手紙を書く
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■連載について

 国分一太郎は「全国の綴方教育を実践する教師の先導的指導者」
として知られた人物である。代表作『新しい綴方教室』(日本評論
社 一九五一年二月)は「多くの教師に感動を与え、綴方教育に意
欲を持たせる」ものであった。

 戦後は理論家としての活動が多かった国分一太郎も、戦前は実践
家として全国的に活躍していた。山形の小学校教師時代に作成した
文集「もんぺ」「もんぺの弟」は「綴方教育を志す多くの教師たち
に、多大の影響を与える」ほど評価の高かったものである。

 このような「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」べきものは何
か? この連載を通して、綴り方教育の過去の遺産から、現在の作
文教育に生かせるものを探っていきたい。

(国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』明治図書 一九八八年
 三四四ページ)

■型通りの「慰問文」─文集「がつご」より─

 国分が教師になって二年目の一九三一(昭和六)年九月、満州事
変が起きた。学校でも戦地の兵隊に向けた「慰問文」が書かれるよ
うになった。国分が五年生の学級で作った文集にも、やはり慰問文
が掲載されている。
┌────────────────────────────┐
│   梅津孝次さんへ   小川太            │
│ 梅津孝次さんがんばつてくれ。私はこの戦のことをきくたび│
│に心をおちつけて、よつくと聞いてゐます。元気でやつて名を│
│あげて下さい。日本が支那に負けたら恥になる。支那の野郎だ│
│をゐなくなるくらゐ殺して日本を大勝利させて下さい。鉄砲の│
│たまがないなら、ここからでもおくつてやるから心配しないで│
│ドン/\うつて下さい。心の中では私たちも行きたくてゐるん│
│だけれども、しかし兵隊でないから行かれない。あなた達も戰│
│爭に行くのは、天皇陛下のためだ。しかしみんなが戰爭に行つ│
│たら国はどうなるかしれない。それで国を守り、ぜいたくをし│
│ないで、むだな金なんか、一銭もつかひません。(後略)  │
│(文集「がつご」第三号 一九三二年二月八日 四五〜四六ペ│
│ ージ)                        │
└────────────────────────────┘
 「天皇陛下のため」など、お決まりの文句が入っており、当時と
しては一般的な慰問文であろう。

■風変わりな「慰問文」─「『むかし』と『いま』と」より─

 ところで、国分は戦後「『むかし』と『いま』と」(『季刊教育
運動』第四号 一九七七年一二月)という原稿で「風変わりな『慰
問文』の思い出」を語っている。その文章は『国分一太郎文集1 
新しくすること 豊かにすること』(新評論 一九八四年六月)に
も掲載されている。

 教師三年目に国分は三年生を担任した。村出身の兵士二人への慰
問文を割り当てられた国分は、何とか工夫できないかと考える。
┌────────────────────────────┐
│ 考えあぐんだ末に、私は、梅津与右エ門、浅野目惣三郎氏の│
│生家があるところを、組を二手に分けて観察しにだした。その│
│案内には、その生家の近所の子をたたせた。近所の家やあたり│
│の景色や、生えている草木や、畑の作物やそこらへんの家の人│
│びとのようすなど、こまごましらべてこいといいつけた。  │
│ それから教室に、くるくる巻いてある障子紙をもちこんだ。│
│ 学校の窓は、まだ障子ばりで、そのため学校には、障子紙の│
│巻物がたくさんあった。それを長くひろげたのを二れんつく │
│り、一れんを梅津あて、他の一れんを浅野目あてとした。そし│
│て障子紙のまんなかに、梅津、浅野目両氏の家の前の道路を、│
│まず書かせたのである。つまりこれから、その道路を中心とし│
│て、絵地図を描かせるのである。             │
│(『国分一太郎文集1』二〇一〜二〇二ページ)      │
└────────────────────────────┘
 このような準備をした上で、国分は子どもたちに近所の絵を描か
せる。さらに、必要なところには次のような説明を書かせた。
  ことしもイッパツが咲いた
  六月におじいさんが死んだ
  男の子がうまれた
  馬を売った
  牛をとり換えた
  お墓を新しく建てた
  ××ちゃんが山口へムカサツテ(嫁に)行った
  こちらへ建てました
  こないだの風で屋根がふっとばされた
  東京へ奉公にいった
  大阪の紡せきにいった
 国分は「文章は大事なことを、みじかく、こまかい字で入れろ」
と絶えず子どもたちに指示しながら書かせる。こうして、たくさん
の絵と文で障子紙は埋められたのである。
┌────────────────────────────┐
│巻紙のはじめに、「梅津与右エ門さまへ」「浅野目惣三郎さま│
│へ」と書き、左はしには「三年男組一同」と署名されて、二巻│
│の巻物はできあがった。私は、そのできあがったのを教室のう│
│しろの壁にはり、みんなにじっくり眺めさせてから、「これな│
│ら、よくわかって、おふたりは喜ぶだろう」といってやった。│
│(同前書 二〇二ページ)                │
└────────────────────────────┘
 残念ながら「風変わりな『慰問文』」の原物は残ってない。しか
し、たとえ強制された慰問文でも型通りの内容に満足せず、少しで
も相手に喜んでもらおうとする国分の姿勢がうかがえる。

■石田佐久馬の場合─手紙作文─

 『どの子も書きたくなる作文指導のアイディア58』(小学館 一
九九五年九月)など、多数の著書がある石田佐久馬に「手紙作文」
という提案がある。(『国語授業の探究 第五巻 新しい作文指導
のアイディア─「手紙作文」を中心として─』東洋館出版社 一九
七五年六月)「手紙作文」とは「第一に『だれに』伝えたいかを明
らかにし、第二に『なんのために』書くかを決めて手紙ふうに書か
せる」作文である。(同前書 六八ページ)

 この「手紙作文」について「書くときに留意すること」が五点、
示されている。
  (1) いちばん言いたいことを書く
  (2) 相手の気持ちを考える
  (3) 自分のことばを使う
  (4) わかりやすく書く
  (5) 話すつもりで書く
 (2)については、次のように述べられている。
┌────────────────────────────┐
│ たとえば、母親を対象にして書く場合、知りたがっている母│
│親の気持ちを考え、その欲求にそった内容を選ぶこともある。│
│(1)とは逆のいき方であるが、ときにはそういう配慮をさせる │
│ことも必要であろう。                  │
│(同前書 八二ページ)                 │
└────────────────────────────┘
 国分の場合も、慰問文を書く相手の気持ちを考えて、彼らが最も
知りたがっていると思われる故郷の様子を書かせたのだろう。

 『総合的な学習のための教育技術─調べ学習のコツと作文的方法
─』(上條晴夫 健学社 二〇〇〇年七月)でも触れられている通
り、「手紙作文」の可能性が検討できると面白い。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      全国教室ディベート連盟
      学習ゲーム研究会など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      以上学事出版
      『5分間でできる学習遊びベスト50』(共著)
      たんぽぽ出版

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