メールマガジン「実践!作文研究」
第20号(2000.6.11)


論理的思考を鍛える「さくぶん情報誌」
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第20号 2000年6月11日発行(毎週日曜日発行)

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 こんにちは。『実践!作文研究』第20号をお届けします。今週
は、佐内信之さんのリレー連載「名人の作文授業を追試する」をお
届けします。前回(No.7)は、芦田恵之介の実践についてでした。
 このマガジンのバックナンバーは、こちらで読むことができます。
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/
 今回は、生活綴方運動で活躍した国分一太郎の実践についての追
試報告です。導入に「いつ・どこで・だれが・何をしたゲーム」を
使った点が、なるほどと感じました。

         ◆     ◆     ◆

−−2.リレー連載「名人の作文授業を追試する」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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名人の作文授業を追試する(第二回)

   【国分一太郎】・・・概念くだき
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■原実践の紹介

 国分一太郎は戦前・戦後を通して、生活綴方運動で活躍した実践
家・理論家である。代表作『新しい綴方教室』(1951年 日本評論
社)では、戦前の綴方実践を理論的に整理しながら、戦後における
「綴方の復興」をめざしている。そこでの合言葉が「概念くだき」
であった。

   概念をうちくだく。子どもたちの生きた姿を、こまごまと知
  る。ものの見方や考え方のありのままを、つぶさにつかむ。そ
  れに、よむにもあきないような、おもしろい文がほしい。この
  ような教育者的欲望からいえば、子どもの綴方は、つねに、く
  わしいものであってもらいたい。(前掲書42ページ)

 このような「概念くだき」の主張を支える指導の一つとして、国
分は「報道の形式になれさせる」方法を紹介している。つまり、
「いつ、どこで、だれが(何が)、どうして、どうなった」の形式
をもとに「すっきりした、わかりよい文章」を書かせるのである。

  いつ     昨日の夕方、
  どこで    土橋のところで、
  だれが・何が 信さんの馬が、
  何を     うしろあしを、
  どうして   ふみはずして、
  どうなった  川についらくした。

 このような「ひとつづき」の文を「だんだん、三節、四節にきれ
た文章」にする。例えば、「昨日の夕方」→「昨日の夕方のことだ
った」→「三月二十二日の夕方、くらくなってからのことだった」
と、内容を具体的にさせるのである。(前掲書316〜318ページ)

 今回の追試は、この「いつ、どこで、……」の形式を利用した。
ただし、子どもたちに書く必要感を持たせるため「いつ、どこで、
だれが、何をしたゲーム」を授業の導入に行った。これは、バラバ
ラにした四つの言葉を組み合わせて文を作り、その予想外の結果を
楽しむという、非常にポピュラーなゲームである。

■授業のながれ

 教師は「いつ」「どこで」「だれが」「何をした」と板書する。
「わかった、アレだ」「やったことある!」
 5年生33人すべてが、このゲームの経験者であった。

『それでは、さっそくゲームを始めましょう。ただし、今日はテー
マがあります。言葉を書く前に知らせておきましょう』
┌────────────────────────────┐
│テーマ=めずらしい出来事                │
└────────────────────────────┘
「ウソでもいいんですか?」
『ダメです。次の二つの条件を守ることにします』
┌────────────────────────────┐
│(1)本当のこと                    │
│(2)自分のこと                    │
└────────────────────────────┘
 「死んだ」「殺した」など、友達が嫌がる言葉を作らないための
ルールであることを教師が説明すると、子どもたちも納得した。
『「本当」にあったことで「自分」にとって「めずらしい出来事」
を探しましょう』

 教師は名刺と同じ大きさのカードを一人4枚ずつ(赤・青・黄・
緑)、間をあけてゆっくりと配る。5分後に一人一人が書いたカー
ドを裏にして回収し、色別に混ぜる。そして、教師が1枚ずつカー
ドをめくって読み上げる。「私の飼っているハムスターがバレー
ボールをした」「マンションの1階でツバメの親子を見た」などの
組み合わせを、みんなで笑ったり感心したりして楽しんだ。

『なかなか楽しい文ができましたね。普通はここで終わりですが、
今日は続きがあります』
 教師は先ほどと同じ4色のカードを見せる。ただし、大きさは3
倍、葉書ぐらいである。
『みんなが最初に書いてくれた「めずらしい出来事」を、もう少し
詳しく教えてください。例えば、次のように書きます』
┌────────────────────────────┐
│いつ   事件が起きたのは、……です。         │
│どこで  現場は、……です。              │
│だれが  私が、……していました。           │
│何をした すると、……しました。            │
└────────────────────────────┘
「ニュースみたい」
『そうですね。ニュースのように、その出来事を知らない人でも分
かる文章にしましょう』

 最初と同じように、教師はカードをゆっくりと配っていく。1枚
配ったら机間巡視をし、教室を一回りしたら次のカードを配るとい
うペースである。10分間で4枚のカードを配り終えた。

 こうして出来上がった作品の中から、一つ紹介する。
┌────────────────────────────┐
│ 事件が起きたのは、私が幼稚園の年少のときだった。お母さ│
│んが「先に行ってて」と言ったので、私は先を歩いていた。 │
│ 現場は、しゅうちゃんが今住んでいる家じゃなくて、昔のし│
│しゅうちゃんの家の前だった。              │
│ 私は見た! それは選挙中のおばさんだった。「一票お願い│
│しま〜す」でも、私は気にせず歩いていた。        │
│ すると、「そこの『おぼっちゃん』危ないわよ〜」とマイク│
│のでっかい声で言われた。                │
└────────────────────────────┘
 これを書いた子は、最初のゲームで以下の文を書いていた。
┌────────────────────────────┐
│ 幼稚園の年少のとき、昔のしゅうちゃんの家の前で、私が、│
│男の子にまちがえられた。                │
└────────────────────────────┘
 書き替えられた作文は、ただ分量が増えているだけではない。会
話の「おぼっちゃん」を強調するなど、この「女の子」が自分の体
験をユーモラスに振り返っていることがうかがえる。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭
 所属団体:授業づくりネットワーク
      学習ゲーム研究会
      全国教室ディベート連盟など
 主な著書:『教室スピーチ実践事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      『小学校ディベート授業がてがるにできるモデル立論
       集』(共著)など
      以上学事出版刊

         ◆     ◆     ◆

−−3.ホームページ進化情報−−

○アクセス数が1万5千を突破しました。
○「運営者より」を更新しました。
○次のところにリンクを張りました。
 ・第2回小学生作文コンクール
  「ぼくたち、わたしたちが作るちゅら島おきなわ」
  (主催:沖縄県 他)
  http://www.ryukyu.ne.jp/~o-times/ad/sak/bosyu.html
 ・第11回子ども作文コンクール
  「もしも、魔法がつかえたら」
  (主催:くもん子ども研究所)
  http://www.kumon.co.jp/kw1200j.htm

         ◆     ◆     ◆

−−4.編集後記−−

 次号(No.21)は、奥泉 香さんの「大学生に作文を教える」第
2回をお届けします。お楽しみに!

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