メールマガジン「実践!作文研究」
第195号(2003.11.2)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第195号 2003年11月2日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、佐内信之さんの「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」
をお送りします。
 ご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第9回

   行動をスケッチして書く
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■連載について

 国分一太郎は「全国の綴方教育を実践する教師の先導的指導者」
として知られた人物である。代表作『新しい綴方教室』(日本評論
社 一九五一年二月)は「多くの教師に感動を与え、綴方教育に意
欲を持たせる」ものであった。

 戦後は理論家としての活動が多かった国分一太郎も、戦前は実践
家として全国的に活躍していた。山形の小学校教師時代に作成した
文集「もんぺ」「もんぺの弟」は「綴方教育を志す多くの教師たち
に、多大の影響を与える」ほど評価の高かったものである。

 このような「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」べきものは何
か? この連載を通して、綴り方教育の過去の遺産から、現在の作
文教育に生かせるものを探っていきたい。

(国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』明治図書 一九八八年
 三四四ページ)

■「くわしくかく」ためのスケッチ─『新しい綴方教室』より─

 『新しい綴方教室』第三話のテーマは「くわしくかく」である。
そのために述べられているさまざまな工夫の一つに「行動をスケッ
チさせる方法」がある。
┌────────────────────────────┐
│たとえば、みんなは紙と鉛筆をもつ。教師は、ろうかから室内│
│にはいってくる。そのとき、演劇風に、すこし身ぶりをした │
│り、表情をつくったりして、かんたんな動作をする。あいだ │
│に、何か、短いセリフをはさむ。これを文章でスケッチさせ │
│る。教壇に帰った教師が「さあ、今のをかいてごらん」といっ│
│て、短い時間でかかせるのだ。              │
│(同前書 五四〜五五ページ)              │
└────────────────────────────┘
 このような指導の結果として、二つの作品例が対比されている。
┌────────────────────────────┐
│ ○ 教室にはいってきた先生が、新しいチョークを手にとっ│
│て、「新しい本」とかいたら、ポキンとチョークがふたつにお│
│れました。おれたチョークは、コトコト音がして、こくばんの│
│こなうけの中にころがりおちました。「こんちきしょう」先生│
│はこういって、フッと、ゆび先をふいて、にが笑いをして、わ│
│たくしたちの方をむきました。              │
│ こんなぐあいである。これと              │
│ ○ 先生が教室にはいってきて、こくばんに「新しい本」と│
│かいて、それから、わたくしたちの方をむいてわらいました。│
│ こんなスケッチとのちがいを比較させれば、部分的な点のく│
│わしいかき方の指導が、ぐんと子どもたちのあいだにはいって│
│いくわけである。                    │
│(同前書 五五ページ)                 │
└────────────────────────────┘

■スケッチのアイデア─「小学作文教学法」より─

 ところで、このような指導のアイデアを国分はどこで手に入れた
のだろうか? 戦前の雑誌『綴方学校』一九三九年八月号に国分は
「小学作文教学法」という原稿を書いている。その中に次の記述が
ある。
┌────────────────────────────┐
│たとへば、教師がチヨークをとつて黒板に字をかく。その時児│
│童をして短い句をかゝせる。或児童は「先生が字をかきまし │
│た」(先生寫字)とかくだらう。或者は「先生在黒板上寫字」│
│(先生が黒板に字をかきました)とかくであらう。或は「先生│
│掌粉筆在黒板上寫字」(先生がチヨークをもつて黒板に字をか│
│きました)とかくだらう。                │
│(同前誌 一〇〜一一ページ)              │
└────────────────────────────┘
 これは中国の徐子長という小学教師の本を翻訳したものである。
病気で教職を離れた国分は、中国の広東で日本軍の報道部宣伝班の
一員として活動していた。そのときに中国の作文学習法を紹介した
のである。

 「チョークで黒板に字を書く」という共通点から考えても、おそ
らく国分は「小学作文教学法」に出ていたアイデアを『新しい綴方
教室』に取り入れたのだと思われる。

■向山洋一の場合─「文を長く書く」より─

 ところで、向山洋一に「文を長く書く」(『先生の通知表をつけ
たよ 4年の学級経営』明治図書 一九八四年四月 五〇〜五四ペ
ージ)という実践報告がある。向山は「先生がこれからする動作を
作文にしなさい。できるだけ長く書きなさい。」と指示する。そし
て、廊下から戸を開けて教室に入り、中央で子どもたちを見る。そ
れだけで作文を書かせるのである。

 すると、ある子は「先生がどわをあけて教室に入って来て、電気
をつけてあかるくしてから、みんなの前に立ってから今度は電気を
けした。」と書いた。この作文を向山はDと評価する。

 一方、向山がAAと評価した作文が一つだけあった。音や数字を
書き入れて長く書かれた作文を全体に紹介する。その結果、先ほど
Dの作文を書いた子は次のように書き改めた。

「先生がドアをガラガラとあけてから教室に入りました。電気を五
つぜんぶつけて、あかるくなりました。四ほぐらいあるいてみんな
の前(つくえの前)に立ちました。
 みんなシーンとしている。音がしているのはヒューヒューと風の
音。まどはがたがたとゆれている音が耳に入り、作文を書くのにじ
ゃまになる。先生はいつもとちがって、しゃべらないで教室に入っ
ていらっしゃるときの顔がどんなひょうじょうかと見ていました。
すると先生の顔はおこっているみたいで、ちょっとこわくなってき
て下をむき、作文を書きました。いつものじゅぎょうをしている先
生の方が私はすきです。」

 この向山実践とともに、さまざまな追試報告が『教え方のプロ・
向山洋一全集22 子どもの知性を引き出す作文の書かせ方』(明治
図書 二〇〇一年二月)に収録されている。国分による「行動をス
ケッチさせる方法」とともに検討してみたい実践である。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      全国教室ディベート連盟
      学習ゲーム研究会など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      以上学事出版
      『5分間でできる学習遊びベスト50』(共著)
      たんぽぽ出版

       ◆       ◆       ◆

−−3.編集後記−−

○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、3000部を突破することが殿堂入りの条件です。
 本誌は2000年創刊なので、1つめの条件はクリアしています。
 ぜひお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○HPやMLなどへの無断転載は固くお断りします。
 転載希望の方は必ず松田までご相談ください。
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メールマガジン「実践!作文研究」No.195 2003/11/2 読者数2188
編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
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(C) 2000,2003 実践!作文研究会
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