メールマガジン「実践!作文研究」
第182号(2003.8.3)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第182号 2003年8月3日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、佐内信之さんの連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学
ぶ」の第6回をお送りします。
 ご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第6回

   構成を立てて書く─調べる綴り方3─
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■連載について

 国分一太郎は「全国の綴方教育を実践する教師の先導的指導者」
として知られた人物である。代表作『新しい綴方教室』(日本評論
社 一九五一年二月)は「多くの教師に感動を与え、綴方教育に意
欲を持たせる」ものであった。

 戦後は理論家としての活動が多かった国分一太郎も、戦前は実践
家として全国的に活躍していた。山形の小学校教師時代に作成した
文集「もんぺ」「もんぺの弟」は「綴方教育を志す多くの教師たち
に、多大の影響を与える」ほど評価の高かったものである。

 このような「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」べきものは何
か? この連載を通して、綴り方教育の過去の遺産から、現在の作
文教育に生かせるものを探っていきたい。

(国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』明治図書 一九八八年
 三四四ページ)

■前回の要旨─番号をつけて─

 昭和戦前期に流行した「調べる綴り方」実践に取り組む過程で、
国分は「番号をつけて」書く方法を編み出した。この方法で子ども
たちの競争を促しながら、国分は題材の探り方を指導していたと言
える。

 「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第5回
   番号をつけて書く─調べる綴り方2─」
  http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/178.html

■調べる綴り方の反省─無味乾燥・羅列的─

 国分は「調べる綴り方ヘの出発とその後」(『調べる綴り方の理
論と指導実践工作』千葉春雄編『綴り方倶楽部』特別号 東宛書房
 一九三四年三月)で三・四年を担任したときの実践を報告してい
る。その中で「小さい反省」として、次のように述べている。
┌────────────────────────────┐
│子供の調べた文は何かしら、今までの綴り方とは自然と形態を│
│異にしてゐる事も見逃せない所だつた。子供の文には文以前の│
│表解、箇條書的なもの、日記風のものもあり、普通の綴り方的│
│なものもあつたし、繪を入れたもの、表を入れたものもあつ │
│た。然し子供の調べた文をよむ時、一つの明瞭さを感ずると一│
│緒に、どことなく無味乾燥であり、羅列的である感じもした。│
│(同前誌 五七ページ ※次の文献にも所収『国分一太郎文集│
│ 5 生活綴方とともにI』新評論 一九八四年三月)   │
└────────────────────────────┘
 そこで、国分は「調べる綴り方にも調べる事がらの姿を、様子を
うつせ、そしてそこから見つけ出した自分の考と心もちを書け」と
いう指導語を生み出す。そして、「或時こんな事もあつたと、詳し
く入れたら、きつとうまく行くに違ひない」と考えて「無味乾燥」
の問題に取り組んだ。さらに、「調べる事がらとその順序を文の始
にかいて置いてもらはう」と考えて「羅列的」の問題も解決しよう
としたのである。(同前誌 五八〜五九ページ)

■実際の作品─「僕のからだ」─

 このような考えで実践されたのが「自分の體」を題材にした調べ
る綴り方である。「四年生の五月。身體檢査が終つた後」に取り組
んだ次の作品が示されている。
┌────────────────────────────┐
│     ◆僕のからだ          斎藤宗平   │
│ │書│1、弱い      5、僕の齒──口      │
│ │く│2、たべもの    6、體格          │
│ │こ│3、ぼくの鼻    7、顔の色         │
│ │と│4、小さい時の病氣 8、考           │
│            (中略)            │
│ 僕は小さい時ひどい病氣になつた事がある。僕は少しそれを│
│おぼえてゐる。ある時の事、僕の家ではさゝぎ御飯であつた。│
│これは僕の好きなものの一つだからたくさん食べた。そして眠│
│つた。その夜中腹がいたくて/\たまらなかつた。それでもこ│
│らえてゐたが、いたくて/\お母さんを起した。お母さんは僕│
│を見て「ゆふべ、あたえ(アンナニ)御飯くつたはげ(カラ)│
│だ。なほるかすんない」といつてセメンを飲ましてくれた。そ│
│してお母さんはね床に歸つて僕はねた。その次の朝、又急に腹│
│がいたくなつた。お母さんはセメンを飲ましてくれたり、頭を│
│ひやしてくれたりしたが、あまりよくならない。お母さんは又│
│「昨夜あたいお飯くて、便所さ行かねはげだ」といつて、あと│
│はいはなかつた。間もなく晝が來た。晝頃は腹に誰かが上つて│
│ゐるやうにいたかつたかと思ふと、お母さんや妹がそばにゐた│
│のだが、ぼやつとなつて見えなくなつたりした。そして僕位の│
│男の子の顔が、こい黄色にそまつて僕の目の前にゐるのが見え│
│た。この子は笑つたり、おこつたり、二人になつたりした。そ│
│れで僕は「アリヤ/\」と聲を高くいつたさうだが、僕はこん│
│な事を言つた事は少しも知らない。この男が見える中は少しも│
│腹はいたくならなかつた。この男が見えなくなつたら、大そう│
│いたかつた。お母さんが見えないから、便所に行つたと思つて│
│「お母ちやん」とよばつたら、まくらもとで「はい」としづか│
│に言つた。それはお母さんだつた。かういふ一日が一週間もつ│
│づいてやうやくなほつた。病氣になつてゐた時はお母さんやお│
│父さんは大へん心配してゐたそうだ。今でも妹とけんくわする│
│と「アリヤ/\」とまねされます。            │
│            (中略)            │
│僕は時々考へるのだが、病氣をすると父母に心配をかけて、親│
│孝行でないから、氣をつけなければいけないと思ふ。    │
│(同前誌 五九〜六一ページ)              │
└────────────────────────────┘
 作品全体から「4、小さい時の病氣」「8、考」のみ引用した。

 「無味乾燥」の問題については、かなり克服していると言える。
「4、小さい時の病氣」では、病気を巡る母と妹とのエピソードが
会話表現を中心に生き生きと描かれている。

 ただし、「羅列的」については大きな進歩は見られない。特に、
「8、考」の部分を「見つけ出した自分の考と心もち」と言うには
弱すぎる。国分自身も「この作品の失敗は最後の考の月並である事
だ。考を入れよと言ふと三四年の子供はすぐこれだ」と反省してい
る。(同前誌 六一ページ)

■上條晴夫の場合─列挙作文─

 ところで、「羅列的」に悩んだ国分と同じような問題意識で実践
に取り組んだのが上條晴夫である。

 番号作文の作品に対して「ただの箇条書きでしょう」と言われた
上條は、次のような「列挙作文」の書式を考案した。
┌────────────────────────────┐
│ ○○を見て、気づいたことが○コあります。       │
│ 1                          │
│ 2                          │
│ ・                          │
│ ・                          │
│ ・                          │
│ (感想・考察をつけ加える)              │
│(上條晴夫『子どもが熱中する作文指導20のネタ』学事出版 │
│ 一九九二年一二月 一九ページ)            │
└────────────────────────────┘
 「番号作文の前後に、予告と考察の文を置く」書式である。「考
察」で「番号作文の文に重みづけする」のは国分の意図と変わらな
い。ただし、「予告」で「材の発見と同時に、選択を促」すところ
が国分との違いである。(同前書 二四ページ)

 国分は「羅列的」という番号作文の問題に対して、「考察」に導
く構成で解決しようとした。上條は、さらに「予告」という工夫を
加えて乗り越えようとしたと思われる。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      全国教室ディベート連盟
      学習ゲーム研究会など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      以上学事出版
      『5分間でできる学習遊びベスト50』(共著)
      たんぽぽ出版

       ◆       ◆       ◆

−−3.編集後記−−

○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、まぐまぐで3000部を突破することが殿堂入りの条件です。
 本誌は2000年創刊なので、1つめの条件はクリアしています。
 ぜひお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
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編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
HP: http://www.jugyo.jp/sakubun/
(C) 2000,2003 実践!作文研究会
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