メールマガジン「実践!作文研究」
第173号(2003.6.1)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第173号 2003年6月1日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は佐内信之さんの新連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学
ぶ」の第4回「目的・相手を意識して書く─調べる綴り方1─」を
お送りします。
 みなさんからのご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第4回

   目的・相手を意識して書く─調べる綴り方1─
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■連載について

 国分一太郎は「全国の綴方教育を実践する教師の先導的指導者」
として知られた人物である。代表作『新しい綴方教室』(日本評論
社 一九五一年二月)は「多くの教師に感動を与え、綴方教育に意
欲を持たせる」ものであった。

 戦後は理論家としての活動が多かった国分一太郎も、戦前は実践
家として全国的に活躍していた。山形の小学校教師時代に作成した
文集「もんぺ」「もんぺの弟」は「綴方教育を志す多くの教師たち
に、多大の影響を与える」ほど評価の高かったものである。

 このような「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」べきものは何
か? この連載を通して、綴り方教育の過去の遺産から、現在の作
文教育に生かせるものを探っていきたい。

(国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』明治図書 一九八八年
 三四四ページ)

■調べる綴り方─『生活綴方事典』より─

 調べる綴り方とは「広く郷土や社会のできごとを、科学的に調査
し、これを合理的・客観的な表現によってつづり、あるいは共同制
作のような組織的な方法によって目的意識をはっきりさせる」もの
である。戦前における「初期の生活綴方運動のあいだに、全国的に
もりあがってきた実践的な流行思潮」とされている。(日本作文の
会編『生活綴方事典』明治図書 一九五八年九月 五七五ページ)

■教える綴り方─目的・相手意識の発見─

 当時の文献の一つに『調べる綴り方の理論と指導実践工作』(千
葉春雄編『綴り方倶楽部』特別号 東宛書房 一九三四年三月)が
ある。国分も「調べる綴り方ヘの出発とその後」という実践報告を
行っている。その中で国分は次のように述べている。
┌────────────────────────────┐
│ 生活の必要を自覺させて行く途上、調べる綴り方は何のため│
│にかくかの目的性の吟味は結局子供達の集團の中に「教へる綴│
│り方」の考へ方を生み出させた。これは仕事のし方とか兎の育│
│て方等の生活方法を發見させて行かうとした指導意識が、「○│
│○のし方」「○○の作り方」を書いた多くの綴り方を生産させ│
│てゐた中に出た「ひびぐすりの作り方」といふ作品が契機とな│
│つたのであつた。こんな事を教へて貰ふと直ぐ役立つといふ歡│
│喜がこの綴り方に「教へてくれる綴り方」といふいみじき名を│
│奉つた。そして教へていたゞくだけではなく、自分も級の人達│
│に教へようとする協働意識が子供達をかつて、盛にこの種の綴│
│り方をかゝせた。                    │
│(前掲書 五四ページ ※次の文献にも所収『国分一太郎文集│
│ 5 生活綴方とともにI』新評論 一九八四年三月)   │
└────────────────────────────┘
 「何のためにかくかの目的性」「級の人達に教へようとする協働
意識」という言葉から、調べる綴り方に対する国分の考え方がうか
がえる。つまり、目的・相手意識を明確にした「教へる綴り方」を
子どもたちに書かせようとしたのである。

■実際の作品─「ひびぐすりの作り方」─

 では、実際の作品はどのようなものだったのだろうか? 教える
綴り方の「契機となつた」と国分が言う作品を示す。
┌────────────────────────────┐
│   ●ひびぐすりの作り方   尋三  横尾辰夫    │
│私はひびぐすりをどうして作るか、又どうしてつけるかを知ら│
│せるのです。この間、僕とお母さんはひびぐすりをこしらへ │
│た。                          │
│ 第一にからすぽんぐり(からすうり)をもいで來た。うらに│
│行つて見るとみかん色になつてゐたので、一つもぎ二つもぎ三│
│つもぎしてみなで十五もいだ。              │
│(中略)                        │
│ 大きなびんに酒を入れて、こんどはからすぽんぐりをわると│
│中からたねが出てくる。それをびんに入れるのである。そして│
│それをゆすります。それをすぐにつけるい(られる)のです。│
│ それからつける方法                  │
│ 晩になつて湯にはいつて、ゆから上つてすぐにそのびを出 │
│し、手にすこしついで兩手でなで、そのしびにつける。すると│
│しびにつけた所をにほひをかぐと、酒のにほひとからすぽんぐ│
│りのにほひがぷんとする。その外しびはぴりぴりする。そして│
│十日もつつけてつけるとなほるのである。         │
│(国分一太郎「三年生の『教へてくれる』綴方」『北方教育』│
│ 第一一号 一九三三年五月 一三〜一四ページ)     │
└────────────────────────────┘
 「からす瓜は役場の杉垣に一ぱいなつて」おり、「ひびきれてる
人」が「ほとんど」である農村の子どもたちに、この作品は「みん
なの爲になる綴方」として賞賛された。(同前誌 一四ページ)

 そして、この「ひびぐすりの作り方」に影響されて「鳥の料理の
仕方。ざく兎(雜種)とチンチラ兎のちがひ。うさぎの好きな草、
きらひな草。こんにやくの作り方。なつとうの作り方。かいもちつ
くり。工夫した丸木の兵隊さん。百日せきのなほし方。ごはんを早
くたく方法。ず虫のとり方。墨のけんやく」などの作品が生まれた
のである。(同前誌 一六ページ)

■記述前の指導の場合─『新作文指導事典』より─

 ところで、現在の作文は「記述前・中・後の指導」として行われ
る場合がある。その際、必要な指導の一つに「目的・相手意識の明
確化」がある。
┌────────────────────────────┐
│ 表現意欲をもやさせ、達意の文章を書かせるためには、目的│
│感(意識)、相手意識を明確にしておくことが記述前の指導と│
│して重要である。                    │
│(井上敏夫・倉沢栄吉・滑川道夫編『新作文指導事典』第一法│
│ 規 一九八二年一一月 一七三ページ)         │
└────────────────────────────┘
 「目的」「相手」意識の重視は『小学校学習指導要領』の文言に
も見られる通り、幅広く認められた考え方であろう。

 このような考え方が意識され始めたのは、いつごろなのか? 国
分をはじめ、綴り方・作文教育の実践家・理論家から丹念に学んで
いく必要があると思われる。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      全国教室ディベート連盟
      学習ゲーム研究会など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      以上学事出版
      『5分間でできる学習遊びベスト50』(共著)
      たんぽぽ出版

       ◆       ◆       ◆

−−3.編集後記−−

○本誌は「まぐまぐ」殿堂入りを目指しています。2年以上発行し
 ていて、まぐまぐで3000部を突破することが殿堂入りの条件です。
 本誌は2000年創刊なので、1つめの条件はクリアしています。
 ぜひお知り合いにおすすめください。
○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
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編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
HP: http://www.jugyo.jp/sakubun/
(C)実践!作文研究会 2000,2003
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