メールマガジン「実践!作文研究」
第169号(2003.5.4)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第169号 2003年5月4日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は佐内信之さんの新連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学
ぶ」の第3回「テーマを意識して日記を書く」をお送りします。
 みなさんからのご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第3回

   テーマを意識して日記を書く
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■連載について

 国分一太郎は「全国の綴方教育を実践する教師の先導的指導者」
として知られた人物である。代表作『新しい綴方教室』(日本評論
社 一九五一年二月)は「多くの教師に感動を与え、綴方教育に意
欲を持たせる」ものであった。

 戦後は理論家としての活動が多かった国分一太郎も、戦前は実践
家として全国的に活躍していた。山形の小学校教師時代に作成した
文集「もんぺ」「もんぺの弟」は「綴方教育を志す多くの教師たち
に、多大の影響を与える」ほど評価の高かったものである。

 このような「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」べきものは何
か? この連載を通して、綴り方教育の過去の遺産から、現在の作
文教育に生かせるものを探っていきたい。

(国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』明治図書 一九八八年
 三四四ページ)

■尋三時代の失敗─観察日記─

 国分の初期論文に「中学年と自然観察の綴方」(『実験観察主の
調べる綴方』東苑書房 一九三四年一〇月)がある。ここでの「中
学年」とは一九三二〜一九三三年度に国分が文集「もんぺ」を作っ
たときの子どもたちである。国分が教師になって三〜四年目の実践
であった。

 この論文の中に、生き物や農作物などの自然観察日記について触
れている箇所がある。
┌────────────────────────────┐
│尋三時代は観察綴方のある事を知らせ、観察態度を培ふ事が主│
│なる目的であつた。蛙の卵日記は教室に帳面をぶらさげて「よ│
│い事の見つかつた人はかけ」と希望者にかゝせた。初は珍しが│
│つてかいたが後ではもう根気が続かなくなつた。その中におた│
│まじやくしはやせて、縮つて、田植休が来ると、それは中止に│
│なつた。(中略)「みんな蛙の卵はみてゐるか」先生は叱つて│
│も、真実彼等は見る時がないのである。(放課後、彼らは、終│
│の挨拶さへそこそこに母のふところに帰つていきたいのであ │
│る)                          │
│(国分一太郎「中学年と自然観察の綴方」 ※以下の所収文献│
│ より引用 梅根悟・海老原治善・中野光編『資料日本教育実│
│ 践史』2 三省堂 一九七九年一二月 四四八ページ)  │
└────────────────────────────┘
 最初は興味をもって観察を始めた子どもたちも、だんだんと飽き
て書かなくなる……。現代でも、このような状況に心当たりのある
人は多いだろう。それに、山形の農村で暮らす「もんぺ」の子たち
にとって、蛙の卵はそれほど珍しくはなかったのかもしれない。

■尋四時代の試み─生活日記─

 それから一年後、四年生になった子どもたちに「夏休の綴方」と
して日記指導を行った様子が文集からうかがえる。目次には「たべ
もの日記」「とふからの帳面」「休中のしらべ」「てつだひ日記」
「天気日記」「生活日記」「けんくわ日記」「しかられ日記」「蜂
にさゝれた日記」「馬のしごと日記」「きりぎりす日記」とある。
それぞれの子どもの興味にしたがって日記の題材を選ばせたようで
ある。これらの中から「天気日記」の一部を紹介する。
┌────────────────────────────┐
│   八月一日                     │
│ 昨日まで雨がふりつづいたので、今日も少しくもつて心もち│
│がわるかつた。晝からは日がてつてあたゝかくなつて来まし │
│た。おぢいさんとお母さんが畠に行きました。       │
│   八月六日                     │
│ 今日は雨ふりで、外のうちでも畠に桑こきに行つたがみなも│
│どつて來た。けれども私の家ではもどつて來ない。私は「雨が│
│ふつてももどつて來ないから、うんとたんとこいてくるべな │
│あ」と思ひながらまつてゐた。              │
│ ばん方になるころ雨がはれて私たちも桑こきに行つた。  │
│   八月十三日                    │
│ 晝からは少し西の方がくもつて來ましたから、あすはきつと│
│雨だらうと考へました。今日はことにうむれたいのです(ふか│
│されるやうです)。うちの人はみんなはだかでまゆをもいでお│
│ります。私はまゆたがきやこもりをしてゐます。一生けんめい│
│でみんなはたらいてゐます。               │
│ 三時二十五分の時には風がふいて、ごろごろ様がなりました│
│から、あすはきつと雨だと考へました。東、西、南、三つみな│
│くもつて來たのは四時ころでした。            │
│ 四時十五分に雨がぽろぽろふつて來ました。そしてちよつと│
│はれて四十分ごろ又雨がぽろぽろふつて來ました。     │
│ 夜は大雨になりました。                │
│(文集「もんぺ」第三号 一九三三年一一月 六四〜六八ペー│
│ ジ)                         │
└────────────────────────────┘
 この作品は単に天気を記録した日記ではない。「天気としごと」
という副題も付けられているように、家族が畠で働く様子も書き続
けている。その過程において、この子は仕事との関連で天気の心配
や予想もするようになっているのである。

 夏休み以後も生活日記の指導を続けた国分は、「もんぺ」の子た
ちに作った最後の文集で次のように呼びかけている。「毎日々々、
いろいろなことを反省し、観察しても、何か『一つの新しいこと』
をみつけ出さなくては、いくらかいても、生活のための日記にはな
らない。」(文集「もんぺ」第五号 一九三四年四月二五日 一五
〇ページ)
 国分が日記指導に求めていたものが推察される言葉である。

■奄美文芸研の場合─テーマ日記─

 ところで、文芸教育研究会の提唱した「テーマ日記」という方法
がある。従来の「生活日記」「観察日記」との違いが次のように述
べられている。
┌────────────────────────────┐
│いわゆる一日の生活の反省や、ある対象(人間と人間をとりま│
│くものごと)についての観察、実験などの記録としての日記と│
│いったものではありません。一つのテーマ(主題)のもとに毎│
│日書きつづけることで対象についての認識をひろげ、ふかめる│
│ことをめざす日記です。                 │
│(西郷竹彦監修・奄美文芸教育研究会著『テーマ日記の指導』│
│ 明治図書 一九八一年八月 九ページ)         │
└────────────────────────────┘
 従来の「生活日記」のように毎日の題材を変えず、一つのテーマ
で書き続けるのが特徴である。また、題材を変えない「観察日記」
とも異なり、主題の統一も求められる。たとえば「猫」という題材
だけでなく、「猫のかわいさ」という主題で書き続けるのである。

 国分が実践したのは「観察日記」「生活日記」である。しかし、
子どもの作品や教師の言葉を見ていくと「テーマ」の存在がうかが
える。「テーマ」は日記指導の重要な手がかりになると思われる。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      全国教室ディベート連盟
      学習ゲーム研究会など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      以上学事出版
      『5分間でできる学習遊びベスト50』(共著)
      たんぽぽ出版

       ◆       ◆       ◆

−−3.編集後記−−

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