メールマガジン「実践!作文研究」
第165号(2003.4.6)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第165号 2003年4月6日発行(毎週日曜日発行)
 登録・解除は http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、佐内信之さんの連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学
ぶ」の第2回をお送りします。
 ご意見・ご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第2回

   視点を転換させて書く2─対立・交互関係を生かして─
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■連載について

 国分一太郎は「全国の綴方教育を実践する教師の先導的指導者」
として知られた人物である。代表作『新しい綴方教室』(日本評論
社 一九五一年二月)は「多くの教師に感動を与え、綴方教育に意
欲を持たせる」ものであった。

 戦後は理論家としての活動が多かった国分一太郎も、戦前は実践
家として全国的に活躍していた。山形の小学校教師時代に作成した
文集「もんぺ」「もんぺの弟」は「綴方教育を志す多くの教師たち
に、多大の影響を与える」ほど評価の高かったものである。

 このような「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」べきものは何
か? この連載を通して、綴り方教育の過去の遺産から、現在の作
文教育に生かせるものを探っていきたい。

(国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』明治図書 一九八八年
 三四四ページ)

■前回の要旨─経験─

 国分は童話のような想像的文章を書かせるには「視点を転換させ
て書く」指導が有効であると指摘した。ただし、むやみに想像や視
点の転換を促すのではない。その前提として、子どもたちに身近な
自然の観察などを重視した。つまり「経験を生かして」書かせる指
導が大切だと考えたのである。

 「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第1回
   視点を転換させて書く1─経験を生かして─」
  http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/160.html

■戦前の実践─AとB─

 今回も「視点を転換させて書く」指導の続きである。まず、国分
の指導した作品例を紹介する。
┌────────────────────────────┐
│   かぼちやと虫 渡辺武雄              │
│ ある時、かぼちやがたなの上に上つて、美しい花をさかせて│
│ゐました。その時そこにゐたのは一匹のあまこばちでした。 │
│ かぼちやがいひました。「はちさん、お前がおれのみつをす│
│つてくれゝばいいがなあ」。はちが「そんなら、のんでやら │
│う」といつて、花の中に入つていきました。そうしてうまいみ│
│つを一生けんめいにのんでゐました。するとそこに一匹のてふ│
│てふがとんで来て、かぼちやの花にとまつたら、中ではちがぶ│
│んぶんといつたので、てふてふはおどろいてにげていきまし │
│た。                          │
│ はちも「ごちそうさまでした」といつてとんでいきました。│
│かぼちやも「ごくらうさま」といつて、ゆらゆらうごいてゐま│
│した。そして「こんど実なるなあ」とひとりごとをいひまし │
│た。                          │
│(文集「もんぺ」第五号 一九三四年四月二五日 一三三ペー│
│ ジ)                         │
└────────────────────────────┘
 四年生の子が「かぼちや」になりきって書いた作品である。もっ
とも、そこには「あまこばち」「てふてふ」などの「虫」も重要人
物として登場する。題名にも示されているように「かぼちやと虫」
との交流を描いた作品になっているのである。

 文集には同じような作品が並んでいる。たとえば「たんぽゝとて
ふ」「つるしがきと子ども」「ダイコントマメ」などである。「A
とB」という形式を意識して書かせた国分の指導がうかがえる。

■戦後の考察─対立・交互関係─

 これらの作品について戦後、国分は「童話」の指導として次のよ
うに考察している。
┌────────────────────────────┐
│ 綴方教育運動の盛んだった昭和七、八年ごろにも、これをか│
│かせることが流行した。わたくしなどもやってみたが、ごく少│
│数の子どもからしか、いいものは生まれなかった。おとなのつ│
│くる童話や、外国童話のマネゴトではとてもだめである。自然│
│観察の結果などから出発させると、わりあいに、生活的な作品│
│がうまれる。たとえば「種の散布」の研究をしたあとで、「か│
│らすと柿の種子」「たんぽぽと風」「犬といのこずち」「ある│
│子どもとやぶじらみ」といった題の作品である。対立した関係│
│や交互関係があるから、筋のある物語的表現になりやすかった│
│のだろう。                       │
│(国分一太郎『新しい綴方教室』日本評論社 一九五一年二月│
│ 三六五ページ)                    │
└────────────────────────────┘
 「種の散布」つまり「自分では動けない植物が動物や風などの助
けを借りて種子を遠方へ散布する」という学習を踏まえて、童話を
書かせる。すると、「AとB」のような対立・交互関係が子どもた
ちの物語展開を促すというのである。

■青木幹勇の場合─変身作文─

 ところで、時代を下って、視点を転換させて書く「変身作文」を
提唱した青木幹勇が同じような指摘をしている。
┌────────────────────────────┐
│ 「書替え」は、読み手、学習者が登場人物中の一人になるの│
│です。たとえば、「ごんぎつね」の場合ですと、「ごん」また│
│は、「兵十」になります、仮りにごんになったとすると、ごん│
│は「ぼく」「おれ」などという呼称に変わってストーリーが展│
│開するのです。                     │
│ 「かさこじぞう」ですと、おじいさんになるのがおもしろい│
│でしょう。もしこのように書替えられると「おじいさん」と書│
│かれているところが、「わし」「おれ」「わたし」などとな │
│り、おばあさんに呼びかける場合は、「ばあさんや」「おまえ│
│さんは」というように変わります。            │
│(青木幹勇『第三の書く─読むために書く 書くために読む │
│ ─』国土社 一九八六年八月 一二七〜一二八ページ)  │
└────────────────────────────┘
 「ごんと兵十」「おじいさんとおばあさん」という対立・交互関
係を生かして「ストーリーが展開する」というのである。子どもた
ちが「視点を転換させて書く」手がかりの一つとして、ぜひ「対立
・交互関係」を意識して指導したいものである。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      全国教室ディベート連盟
      学習ゲーム研究会など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      以上学事出版
      『5分間でできる学習遊びベスト50』(共著)
      たんぽぽ出版

       ◆       ◆       ◆

−−3.勉強会情報−−

○「実践!作文研究会 第4回オフ会」
 作文評価の研究・交流
 2003年5月4日(日) 新宿
 詳細→ http://www.jugyo.jp/sakubun/jsk/off4.html

−−4.編集後記−−

○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
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発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
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(C)実践!作文研究会 2000,2003
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