メールマガジン「実践!作文研究」
第160号(2003.3.2)


学力問題としての作文教育を考える
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 メールマガジン「実践!作文研究」
 第160号 2003年3月2日発行(毎週日曜日発行)
 登録・解除は http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。
 今回は、佐内信之さんの新連載「国分一太郎の綴り方教育実践に
学ぶ」をお送りします。ご意見・ご感想をお待ちしております。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

============================================================
国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ 第1回

   視点を転換させて書く1─経験を生かして─
============================================================

■連載について

 国分一太郎は「全国の綴方教育を実践する教師の先導的指導者」
として知られた人物である。代表作『新しい綴方教室』(日本評論
社 一九五一年二月)は「多くの教師に感動を与え、綴方教育に意
欲を持たせる」ものであった。

 戦後は理論家としての活動が多かった国分一太郎も、戦前は実践
家として全国的に活躍していた。山形の小学校教師時代に作成した
文集「もんぺ」「もんぺの弟」は「綴方教育を志す多くの教師たち
に、多大の影響を与える」ほど評価の高かったものである。

 このような「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」べきものは何
か? この連載を通して、綴り方教育の過去の遺産から、現在の作
文教育に生かせるものを探っていきたい。

(国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』明治図書 一九八八年
 三四四ページ)

■自然観察詩

 国分一太郎が指導した次の作品がある。
┌────────────────────────────┐
│ くも 松澤定郎                    │
│くもが小さい足で                    │
│ちよこちよこと歩いていく                │
│小さい穴に入つていくと                 │
│虫が、                         │
│ひよこつと出て来た。                  │
│くもがはづかしいやうに                 │
│べつな穴に                       │
│入つて行つた。                     │
│(文集「もんぺ」第三号 一九三三年一一月 一ページ)  │
└────────────────────────────┘
 四年生の「写生詩(観に行く詩)」である。この作品のように、
「自然の生活を観察し、自然への暖かな理解の結果から生れた微笑
ましい詩」を国分は「自然観察詩」と名づけた。

 一方、国分は「蜘蛛の巣に朝露が光つてゐる」のような作品を単
なる「自然感覚詩」として退けた。それより「くも」のように「自
分の穴を間違つた恥しさうな蜘蛛の姿についての細かな観察と、子
供らしい、童話的な生活共感」が読み取れる作品を評価したのであ
る。

 そして、自然観察詩の指導では「教師はやゝともすれば自然の中
に暴れまはるだけの子供達を、このよき方向へ観察の努力を向けて
やる計画と示唆とを持つべき」とする。たとえば「自然観察の仕事
への指導語」として、次の言葉を提示している。
  ・こまかくみる
  ・気をつけてみる──長くつづけて見る
  ・見るつもりでみる
  ・心の中から見る──考へながら見る
  ・かうだらうと考へて見る
  ・なぜだらうとふしぎしてみる
  ・かうかも知れないと考へながらみる
 子どもたちの「観察」「見る」「みる」を重視する国分の姿勢が
うかがえる。

(国分一太郎「『自然観察と子供の詩』報告」『国語教育研究』
 一九三四年七月号 二八ページ)

■自然観察から童話へ

 ところで、自然の「観察」とともに国分が着目したのは、自然へ
の「暖かな理解」「子供らしい、童話的な生活共感」であった。そ
んな子どもたちの態度を生かして、国分は詩「くも」の作者に「く
もになつた気持でかいて見ろ」と示唆する。このようにして出来上
がったのが次の作品である。
┌────────────────────────────┐
│ 私が遊んでゐたら、昼になつたから帰らうと思つて帰つて行│
│きました。そしてどこかのくもさんと行きあつたりして行きま│
│した穴の前まで来たので、私の家だと思つて入らうとすると、│
│せなかのまるい虫がひよこつと出て来て、「何だ僕の家に来 │
│て」といつてしかりました。私は小さい頭をなでながら、やう│
│やくうちの所まで来ると、時計がびんびんと十二回なりまし │
│た。うちではちやわんの音がかちやかちやしたので、私は走つ│
│て家に入りました。ごはんをたべる時お父さんに語つてわらは│
│れました。                       │
│(同前誌 二九ページ)                 │
└────────────────────────────┘
 つまり「松澤定郎」という子が「くも」になりきって童話を書い
ている。自分が観察した対象に視点を転換させて書いたのである。
自分の見たことを踏まえながらも、くもの家族を想像しているのが
面白い。おそらく、自分の経験している家族を思い出しながら書い
たのだろう。

■想像と経験

 国分は戦後「童話」について次のように述べている。
┌────────────────────────────┐
│ 綴方教育運動の盛んだった昭和七、八年ごろにも、これをか│
│かせることが流行した。わたくしなどもやってみたが、ごく少│
│数の子どもからしか、いいものは生まれなかった。おとなのつ│
│くる童話や、外国童話のマネゴトではとてもだめである。自然│
│観察の結果などから出発させると、わりあいに、生活的な作品│
│がうまれる。                      │
│(国分一太郎『新しい綴方教室』日本評論社 一九五一年二月│
│ 三六五ページ)                    │
└────────────────────────────┘
 戦前の実践をもとに、国分は童話のような想像的文章を書かせる
ためには、自然観察などの経験が必要だと考えたのである。

 ところで、視点を転換させて書く「変身作文」を提唱したのは青
木幹勇である。(『第三の書く─読むために書く 書くために読む
─』国土社 一九八六年八月)その青木は「子どもの場合、虚構作
文といっても現実とまったく切り離した世界を書くことではない。
現実を見る、聞く、その記憶、などの経験が想像を支えている」と
言う。(『子どもが甦る詩と作文』国土社 一九九六年一〇月)

 国分一太郎と青木幹勇、時代は変わっても、同じような主張をし
ているのが興味深い。子どもたちの想像と経験との関係を、絶えず
考えておく必要がある。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      学習ゲーム研究会
      全国教室ディベート連盟など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      『小学校ディベート授業がてがるにできるモデル立論
       集』(共著)など
      以上学事出版刊

       ◆       ◆       ◆

−−3.研究会情報−−

 授業づくりネットワーク2003春
  〜新時代の学力をつけるワークショップ30〜
 主催:授業づくりネットワーク
 日時:3月27日(木) 午前10時〜午後5時
 会場:成蹊大学(東京都武蔵野市)
 詳細: http://www.jugyo.jp/yotei/20020328haru.html

       ◆       ◆       ◆

−−4.編集後記−−

○作文や作文的手法の実践・理論・追試報告などの情報や、作文に
 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
○HPやMLなどへの無断転載は固くお断りします。
 転載希望の方は必ず松田までご相談ください。
○本誌の読者登録・解除・アドレス変更・バックナンバーは、
 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/ まで。
○本誌は次の配信システムを利用して発行しています。
 まぐまぐ http://www.mag2.com/ 0000023841
 Pubzine http://www.pubzine.com/ 8460
 melma! http://www.melma.com/ m00014780
 macky! http://macky.nifty.com/ 23841
 メルマガ天国 http://melten.com/ 1930
 E-Magazine http://www.emaga.com/ sakubun
 カプライト http://kapu.biglobe.ne.jp/ 851
 めろんぱん http://www.melonpan.net/ 000879
 ティアラオンライン http://www.tiaraonline.com/ m102212
 Posbee http://www.posbee.com/ 0000000685
 MailuX http://www.mailux.com/ sakubun
 ポストマガジン http://pmag.spacetown.ne.jp/ 00000641
 ジョイフォ http://www.jfo.jp/ VID22902

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
メールマガジン「実践!作文研究」No.160 2003/3/2  読者数3090
編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
HP: http://www.jugyo.jp/sakubun/
(C)実践!作文研究会 2000,2003
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


「「国分一太郎の綴り方教育実践に学ぶ」          10 11 12

「第160号の感想」を書く 戻  る トップページへ

メールマガジンのご案内へ