メールマガジン「実践!作文研究」
第151号(2002.12.29)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第151号 2002年12月29日発行(毎週日曜日発行)
 登録・解除は http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさん、こんにちは。
 メールマガジン「実践!作文研究」151号をお届けします。
 今回は、当ML編集主幹の上條晴夫による、「書くことの神秘性
を取り除く」をお送りします。
 今年1年のご愛読、ありがとうございました。 来年も、よろし
くお願いします。

       ◆       ◆       ◆

−−2.書くことの神秘性を取り除く−−
               MM「実践!作文研究」編集主幹
                         上條 晴夫

 中学生が使う受験用の作文教材づくりに協力をした。教材を商品
化する前にアンケートをする。「考える力がつきそうだ」「受験に
も役に立ちそうだ」とそれなりに好評なのだが、「面白かったか」
という項目に対しては全員が「NO!」と口をそろえる。その理由
はたいてい「わたしは作文が得意でないから」というものだ。

  書くことの指導で一番むずかしいのは「書くことには特別な才能
がいる」という思い込みを払拭することである。この点から言うと、
よい作文指導をするためには書くことに対する神秘性をまだ持って
いない小さな子どものうちに指導を始めることだ。現場教師時代に
一度、小学2年生を担任したが、この子どもたちは小学校高学年に
なっても、わたしと一緒の作文活動を楽しそうに語っていた。

 書くことの神秘性はとくに日本で強い。欧米ではライティングと
呼ばれる書くことの技術をごく普通に教えていると聞く。最近では
そうしたライティングに関する知識や技術が本の形で日本にも少し
ずつ入ってきている。大学でもライティングの講座が増えている。
日本も早く「書くことの神秘性」の呪縛から逃れて、技術としての
書くことの指導が普通になればよいなと前から考えていた。

 ところが、最近、面白い資料を発見した。モーゲン・ウィッツェ
ル著『MBA式勉強法−ビジネススクールの授業の徹底解剖』(東
洋経済)である。この本の中に「ライティング」の章がある。

 本書によるとEメールなどの出現で、1990年代にライティン
グ(書くこと)が再び脚光を浴びるようになった。「同僚や上司に、
あるいは顧客に自分のアイデアを『売り込む』ことはキャリアを成
功させる決め手となるもので、書くことによってそれをしなければ
ならない」。ライティングは、コミュニケーションの最も重要な
ツールの1つであるという。いかにもMBAっぽい言い方である。

 しかし、わたしが面白いなと思ったのは、枠囲みをして書かれた
「ライティングの神秘性を取り除く」という次の一節である。

 「多くの人が書くことは難しいと考え、普段は自分に自身のある
人たちまでが、文章の下手さを露呈するのではないかと心配する。
1つには、彼らは書くことにまつわる神秘性におびやかされている
と言えるだろう。ライティングは『芸術』とされている。我々が文
章について考える時、思い浮かべるのはシェークスピア、モリエー
ル、トルストイ、芭蕉、曹雪芹など歴史的に権威を認められた作家
たちである」

 もちろん後段では、しかしほとんどの文章は「芸術」ではなく、
ごく普通のコミュニケーションの1つなので、スキルとしての修得
が可能である。ライティングの神秘性に負けるなと書く。確かに、
そうした文章の前段でではあるが、MBA取得を考えるような優秀
な人たちの間でも書くことの神秘性を問題になる点が面白い。

 ものの本によると、書くことが「天才」や「霊感」によるもので
あるという幻想を作ったのは19世紀のパリだったという。作家で
いうと、バルザックやデュマなどのロマン派の作家だ。その幻想の
引き金を引いたのは、この時代に登場した新聞という新しいメディ
アである。いまで言えばテレビ・メディアがスポーツのジャンルで
「怪物」や「番長」などを創り出す仕掛けとよく似ている。

 しかし書くことはスキルである。若干の知識とトレーニングさえ
あれば、誰でも上達をする。確かにクリエイティブな側面もあるが、
とらわれ過ぎは禁物だ。創るのは、頭の中でアイデアを整理する段
階での話である。書くことは、そのアイデアを整理して散りばめる
機械的なプロセスである。日本でも、書くことの神秘性がもう少し
自覚されるようになると、子どもたちも自分の書くことのスキルの
上達をもっと面白がってくれるようになるはずだと考える。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 上條晴夫(かみじょう はるお)

 教育ライター・埼玉大学非常勤講師。
 現在、授業づくりネットワーク代表、全国教室ディベート連盟常
任理事、メディアリテラシー教育研究会代表、実践!作文研究会代
表、日本テレビニュースアドバイザリー委員をつとめる。
 著書・編著書
 『見たこと作文でふしぎ発見』
 『書けない子をなくす作文指導10のコツ』
 『子どもが熱中する作文指導20のネタ』
 『見たこと作文でクラスが動く』
 『見たこと作文実践ネタ集』
 『だれでも書ける作文ワークシート』
        (以上、学事出版 http://www.gakuji.co.jp/ )、
 『総合的な学習のための教育技術−調べ学習のコツと作文的方法−』
        (健学社 http://www.kengaku.com/
 ほか多数。

       ◆       ◆       ◆

−−3.研究会情報−−

○「第2回北の教育文化フェスティバル in 深川」
 −新教育課程元年 新しい教育文化を創る− 北海道深川市
 2003年1月7日(金)〜9日(日)
 講師(敬称略)→
  有田和正・酒井臣吾・野口芳宏・仲田利津子
 詳細→ http://www1.ocn.ne.jp/~naonami/2kitanofes.htm

○授業づくりネットワーク北海道2003 &
  第12回授業改革セミナー in 旭川
 2003年2月22日(土)〜23日(日) 北海道旭川市
 講師(敬称略)→
  上條晴夫・佐藤幸司・土作 彰
 詳細→ http://homepage1.nifty.com/maru-shin/NW2003.html

       ◆       ◆       ◆

−−4.編集後記−−

※149号で紹介した「宇宙エッセイスト協会会長さん」の「爆笑
 美女エッセイ」。このマガジンでご紹介後、多くの方から申し込
 みがありました。売り切れていた「パート1」も、第2刷ができ
 あがりました。支払方法も、主に代金引換だったものが「郵便振
 替」に変更になったようです。
 この機会にみなさん、いかがでしょうか。

 http://www.jugyo.jp/sakubun/magazine/149.html

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 関するHP、MM、MLなどの情報、本誌への感想をお待ちして
 います。本誌やWEBサイトで紹介させていただくことがあります。
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編集主幹者 上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.ne.jp
発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
HP: http://www.jugyo.jp/sakubun/
(C)実践!作文研究会 2002
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