メールマガジン「実践!作文研究」
第123号(2002.6.16)


学力問題としての作文教育を考える
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第123号 2002年6月16日発行(毎週日曜日発行)
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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさん、こんにちは。
 「実践!作文研究」123号をお届けします。
 今回は、佐内信之さんの連載「高校生のための楽しい作文教室」
です。第2回「漢字一文字作文」をお送りします。
 皆さんのご意見やご感想をお待ちしています。

       ◆       ◆       ◆

−−2.連載「高校生のための楽しい作文教室」−−
                        東京・小学校
                          佐内信之

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高校生のための楽しい作文教室 第2回

   漢字一文字作文
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■連載について
 今年度から小学校を休職し、大学院で研究できることになった。
また、その間、定時制高校で非常勤講師をする機会にも恵まれた。

 担当する科目は、2・3年生対象の国語II(受講者17名)と古典
(受講者21名)である。生徒の年齢は18才前後、さまざまなクラス
の生徒が集まる授業である。教科書を中心にした学習内容は定めら
れているものの、できる限り自己表現の場を設けたいと考えた。

 この連載を通して、小学校での経験を生かしながら、高校生でも
楽しく書ける作文指導法を探っていきたい。

■授業のながれ
 国語IIの授業、第1回目である。第1校時の古典に続き、第2校
時の授業である。古典では折り句作文(本連載第1回)で自己紹介
を行ったが、同時履修の生徒が7人いるので、違う方法の作文を書
かせたいと考えた。

 そこで目に留まったのが、教科書(明治書院)に出てくる「風」
(増田れい子)という随筆である。以下、書き出しである。
┌────────────────────────────┐
│ 風、という漢字が好きだし、KAZEという音も、好きであ│
│る。漢字は、一、といったごくごくシンプルな形のものから、│
│鬱、といった複雑なもの、鳧、などと変わったものもあれば、│
│書く度にこれでよかったかと思案する、例えば黎明の黎の字が│
│あったりする。                     │
└────────────────────────────┘
 この作品を読み聞かせた後、生徒たちに投げかける。
┌────────────────────────────┐
│このような漢字一文字を題名にする作文を書いてみましょう。│
└────────────────────────────┘
 それぞれがどんな漢字を選ぶか、それによって人柄が表れるので
自己紹介代わりになることを説明した。その上で、次の三つの選択
方法を提示した。

(1) 好きな漢字
┌────────────────────────────┐
│十代の人の好きな漢字ベスト10              │
│ (10)光 (9)心 (8)海 (7)美 (6)旅 (5)星 (4)義   │
│  (3)誠 (2)愛 (1)夢                 │
└────────────────────────────┘
 生徒と同年代の人たちが選んだベスト10の漢字を参考のために示
した。これらも手がかりにしながら、教科書の作品と同じように、
自分の好きな漢字を選ぶパターンである。

(2) 今年の漢字
┌────────────────────────────┐
│ 私が考えた五年一組の「今年の漢字」は「花」です。クラス│
│で問題があったことは枯れた花、良かったことはキレイに咲く│
│花とたとえました。花は何か「いい〜」って感じがします。 │
│ 21世紀も、みんなが花のようなキレイな心でかがやいてほし│
│いと思います。                     │
└────────────────────────────┘
 これは一年を振り返りながら漢字一文字を選んで表現した小学生
の作文である。このような例をヒントに、自分の新年度の目標につ
いて書くパターンを提示した。

(3) 氏名の漢字
┌────────────────────────────┐
│ 悠一さんの「悠」という字を使った熟語には「悠々」があり│
│ます。これは「宇宙のように広くゆったりとしている」という│
│意味です。この言葉どおり、私は悠一さんを、いつもゆったり│
│していてちこくばかりしている人だなと思います。     │
└────────────────────────────┘
 これも小学生の作文で、友達のファーストネームを使って紹介し
たものである。ここでは、友達の代わりに自分の氏名を使うパター
ンとした。

 こうして出来上がった作品のうち、まず5分ほどで生徒が抵抗な
く取り組んだものを示す。
┌────────────────────────────┐
│ 私の名前の「飛」は自由に飛びまわりたいって事。私はだれ│
│にもしばられず自分がやりたい様に生きていきたい。    │
└────────────────────────────┘
 やはり、自分の氏名に用いられている漢字からは文章をイメージ
しやすかったようであり。「氏名の漢字」パターンを最終的に選ん
だ生徒は半分以上であった。

 それに対して「好きな漢字」を選んだ生徒は、こだわりがあるせ
いか、書く分量が多かったようである。次に示すのは、授業終了後
も書き続けて仕上げたものである。
┌────────────────────────────┐
│ 「時」別に漢字が好きなわけじゃない。ただ「時」というも│
│のについて考えることが好きなんだと思う。もし時間が止まっ│
│たら?と考えることがある。               │
│ まず未来がなくなる。希望が無くなってしまう。希望は生き│
│る原動力であると思う。ちょくちょく人間は「絶望」という言│
│葉を使うのだが、本当の「絶望」なんていうのは誰も知らない│
│と思う。生きることに絶望して死を選ぶなどということは、語│
│りにくい希望への理由でしかない。「死」というものを選んで│
│いる時にはすでに「死」というものに望みを抱いているのだか│
│ら。                          │
│ そして過去がなくなる。忘れることがなくなるのだ。忘れる│
│ことがない。ということはいい思い出も忘れない。しかし、悪│
│い思い出も忘れないのだ。                │
│ これだけ書いてもまだまだ「時」というものについて語り終│
│わらない。それは「時」というものが全ての根元であるからだ│
│ろう。だから「時」に興味を持つのかもしれない。     │
└────────────────────────────┘
 「時」を起点にして「未来」と「過去」に思いを巡らせる。さら
に、そんな思いを抱く自己に対して分析を加えている。精神的に成
長した高校生ならではの内容をもった作品と言えるだろう。

■伝言板
 授業で紹介した作品例などは以下を参考にした。
(1) 好きな漢字
 →上條晴夫「『好きな漢字』を考えてみよう」
  (上條晴夫『漢字あそびベスト50』民衆社)
(2) 今年の漢字
 →拙稿「決定!『今年の漢字』大賞」
  (http://homepage.mac.com/nsanai/025.html
(3) 氏名の漢字
 →拙稿「ファーストネームで呼ぼう─友達の名前紹介スピーチ」
  (上條晴夫編著『教室スピーチ実践事例集』学事出版)

【今回の執筆者のプロフィールです】

 佐内信之(さない のぶゆき)
 東京・新宿区立鶴巻小学校教諭(茨城大学大学院に在学中)
 所属団体:授業づくりネットワーク
      学習ゲーム研究会
      全国教室ディベート連盟など
 主な著書:『ワークショップ型総合学習の授業事例集』(共著)
      『論理的な表現力を育てる学習ゲーム』(共著)
      『小学校ディベート授業がてがるにできるモデル立論
       集』(共著)など
      以上学事出版刊

       ◆       ◆       ◆

−−3.「実践!作文研究」進化情報−−
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発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
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