メールマガジン「実践!作文研究」
第12号(2000.4.16)


論理的思考を鍛える「さくぶん情報誌」
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 メールマガジン「実践!作文研究」
 第12号 2000年4月16日発行(毎週日曜日発行)

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−−1.はじめに−−
                  「実践!作文研究」編集長
                          松田善啓

 みなさんこんにちは。桜前線が順調に北上を続けているようで、
何よりです。今週のリレー連載は、奥泉さんの「大学生に作文を教
える」が初登場です。どうぞよろしくお願いします。

         ◆     ◆     ◆

−−2.リレー連載・「大学生に作文を教える」−−
                   波多野ファミリスクール
                          奥泉 香

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          大学生に作文を教える
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┌────────────────────────────┐
│ 考えるための文体を指導する  −その1−       │
└────────────────────────────┘

 大学1,2年生に論証文の指導を行なっている。新聞の投書など
を使って、それについての意見を論じる文章を書いてもらう形で、
作文指導をしているのである。
 すると多くの学生が、当初は次のような文体で書く。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃(私は)少しおかしいのではないかという感じがします。  ┃
┃(私は)ちょっとそんな気がしないでもありません。    ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 今回は、学生のこのような書き方について、私の実践の一部を報
告する。

 例えば、次のような学生の文章をコピーして、全員に検討させ書
き直させる。(紙幅の都合上、一部を紹介する。)

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ この母親は借りた物は返せばいいと思っているのだろうが、┃
┃買い物はお金の貸し借りではないし、子どもは暑い中買えなく┃
┃てかわいそうだったかもしれないけど、お金が足りないと物は┃
┃買えないということは教えるべきではないかと私はちょっと思┃
┃った。                         ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 4円足りないために、買い物ができずに帰ってきた小4の男の子
の話だ。その子の母親が書いた苦情を読んで、学生が書いた文であ
る。 
 一読して気づくように、一文が長い。そしてそのために、色々な
問題がこの文には生じてしまっている。この点に関しては、池内氏
担当の回でも述べられていたので、今回は冒頭に揚げた点に絞って
述べる。一文一義の短い文に書き直させる際に、一文の作り方も指
導してしまうのである。

 私は学生に、次のように言う。

┌────────────────────────────┐
│「教えるべきではないか」と初回から「べき」などという語を│
│使って、はっきりと意見を述べようとしている。なかなか見込│
│みがある。しかし残念ながら、「私はちょっと思った」がそれ│
│をだいなしにしてしまっている。             │
└────────────────────────────┘

┌────────────────────────────┐  
│ なぜなら、これがあると(他の人は知らないが、)「私は思│
│った」と、報告しているにすぎない文になってしまう。しかも│
│「ちょっと」だ。論証文とは、他の人にもこの判断の方が正し│
│いのだと説得する勢いで書かなくてはならない。この点が感想│
│文とは違うのだ。                    │
└────────────────────────────┘

┌────────────────────────────┐
│ また、このような文は、二重構造の文で書いていることにな│
│る。                          │
│┌──────────────────────────┐│
││私は{このようなことは親が教えるべきだ}とちょっと思││
││った。                       ││
│└──────────────────────────┘│
│このように、判断の文が「私は思った」という箱の中に入って│
│いるのだ。このような形の文が必要な文脈もあるが、常に無自│
│覚にこの二重構造の文で考えるのは、やめよう。君たちは、外│
│箱に思考力を奪われ、凝る傾向がある。思考力を集中すべきは│
│箱の中の判断の文である。                │
└────────────────────────────┘

 このように言って、なるべく判断を示す文だけで、作文をさせる。
つまり命題に近い文体だ。すると、先の学生の例文で、次のような
点が改善されてくる。

1 「教えるべきである。」という文末になるので、そこまで言い
 きるからには、もっと理由をしっかり書く必要がある、という意
 見が出てくる(これで論証の指導につなげていける)。「私はち
 ょっと思った」くらいでは、理由をきちんと述べる責任は、感じ
 にくいのだ。    
  実際には、「買い物はお金の貸し借りではないし」だけでは弱
 いので、次の二点を加えて書き直すことになった。 
 ・貸してもらう場合もあるが、それはあくまでも店側の好意であっ
  て、客側から非難される筋合いのものではない。
 ・貸し借りには、お得意様といった信頼関係が前提となる。

2 「教えるべきである。」と言いきってみることによって、だれ
 にこそその責任があると主張したいのかを、もっと明確に書く必
 要があるという意見が出てくる。つまり、次のような文に書き直
 す。
 「親こそが、このようなことは教えるべきなのである。」

 このように、文体を指導することによって、学生の思考も深まっ
ていく。15回の講義だが、毎回このような「考えるための文体」
を指導している。

【今回の執筆者のプロフィールです】

 奥泉 香(おくいずみ かおり)
 一週間の半分を、財団法人波多野ファミリスクールで小学生に作
文指導を、残りの半分を、大学や専門学校で論理学や国語を担当し
ている。大学院では、教育哲学を専攻。ことばと思考の関係が研究
テーマ。

         ◆     ◆     ◆

−−3.ホームページ進化情報−−

○「作文修行のための本」に、君島 浩さん著『日本語作文作法』
 (日科技連出版社)を追加しました。

○次のところにリンクを張りました。
 ・第4回古関裕而音楽賞「手紙募集」(福島県福島市HP)
  http://www.city.fukushima.fukushima.jp/bunka_ka/letter.html
 ・「忘れられないお弁当の思い出」募集(家の光協会HP)
  http://www.ienohikari.or.jp/10/
 ・日本テレビ新番組「伝説の教師」サイト(日本テレビHP)
  http://www.ntv.co.jp/2d/

         ◆     ◆     ◆

−−4.編集後記−−

 来週号(No.13)では、ゲスト論考として、倉島保美さん(ライ
ティング・インストラクター)の「自著を語る」が登場します!
 どうぞご期待ください。

○作文に関する情報・感想等をお待ちしています。感想等は本誌や
 WEBサイトで紹介させていただくことがあります。
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発行責任者 松田善啓 yo_mazda@nifty.com
編集主幹  上條晴夫 haruo.kamijo@nifty.com
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