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池田 修「作文と料理は似ている?!」

(東京都・八王子市立楢原中学校)

 以下の文章は、本会員の池田修氏が書いた国語科教科通信『志学』(1999年)からの転載です。これは、中学一年生を対象にして本格的に作文を指導した際に使ったものです。

 ご意見やご感想がありましたら、メーリングリストに投稿頂くか、池田氏のメールアドレスpxw05264@nifty.comにお願いいたします。


 中間テストのアンケートに、志学を復活して欲しいという話が結構あったので、嬉しくなって復活です。

 さて、しばらくは、作文の書き方について学んでいこうと思います。

 人間は文字を使うことで、動物と大きく違うわけですが、いざ文字を使って文章を書こうとすると、これが実になかなか書けない。いや、書けなくはないのだが、読みやすい文章を書こうと思うと、書けない。これは、君たちだけの問題ではなく、君たちの父さん、母さんたちも悩むところのものであろう。実は私も悩んでいる。

 しかし、悩んでいても仕方がないので、現在分かっている範囲で、できるだけわかりやすく説明してみたいと思う。

 今回想定してるのは、行事の後の感想文である。

作文と料理は似ている?!

 こんなことはどこの作文の参考書にも書いてないと思うが、私は実に似ていると思う。

 カレーを作ることで考えてみる。

 カレーを作ろうと思ったら、冷蔵庫の中にどんな材料があるか確認するだろう。そして、足りないものを買いに行く。材料が揃ったら、材料の吟味。使えるものと使えないものを確認する。そして、手順通りに作って、味見をして、完成。最後に食べる。食べて、美味しいとかそうでないとか感想を貰うことになる。

 遠足の作文ではどうだろうか? 

 とりあえず、「秋の遠足」とタイトルを決める。次に何を書こうか記憶の中に書く内容を求める。出てきた内容で不十分なことがあるときは、その内容について調べる。そしたら、必要な内容とそうではない内容について吟味する。つぎに、どの順番で書いたらいいかを考える。そして、書いてみる。書いてみて推敲する。正式にタイトルを付けて完成。いろいろな人に読んで貰って、感想を貰う。

 どうだ。

 どうだと言われても困るかもしれないが、私はそう考えている。ということで、この流れで作文を考えていくことにする。

書くために材料・アイディアを集める

 作文を書くためにその材料を集めることから始める。小説家などはこれを取材などと言う。君たちは、出かけていって調べることよりも、自分の頭の中に詰まってるものを、調べてみることが大事だ。

 君たちに教えたのは、「イメージの花火」である。テーマを中心に書いて、それからそれに関連することをどんどん広げていくのだ。

 人間の頭の中は、実に不思議なもので良く分からないことも多いのだが、分かってきたこともある。

 人間の頭は、どうやら順序立てて物事を考える部分と、突然閃く部分とからできているようなのだ。

 文章を書くというのは、順序立てて論理的に頭を働かす部分で書くのが主になる。しかし、アイディアを出すときは、突然閃く部分が大事になる。

 君たちも、授業中に先生の話を聞きながら、しかも真剣に聞いているにも関わらず、全く関係のないことを思い出すことがあるだろう。

 よく調べてみると、全く関係がないということもないのだが、先生の話をきっかけにして違うことを思いつくのだ。

 「イメージの花火」は、この思いつきを効率よく引っぱり出してくれるのではないだろうか。

 このアイディア出しの作業で大事なことは、

(こんなこと思いついちゃったけど、こんなの関係ないよな。書くのやめよ)

 としないことである。
 良いか悪いか、使えるか使えないかの判断は、アイディアを出し切ってから、その次に行うのである。出しながら行うのは、アイディアが出てくることに制限を設けることになりやすいので、やめるのだ。

つづく

分からないことが出てきた

 アイディアを出していったら、不十分なことがあることに気が付きました。分からないことが見つかったわけです。

 カレーライスを作るのであれば、その足りないものをスーパーにでも行って買ってくれば済むのですが、作文の場合はどうしたらいいのでしょうか? これには三つの方法しかないと、NHK教育テレビのプロデューサー箕輪さんという方に、今年の夏に聞きました。

 その方法とは、

  1. 本やインターネットで調べる。
  2. 人に聞く。(インタビュー)
  3. 現場に行って調べる。

 です。
 このときに、

「その人しか持っていない情報を持っている人は、話を聞きに行けば必ず話してくれる」
 という話も聞きました。なるほどです。

 私たちができるのは、本や人に聞くと言うことが主ですね。しかし、この数年のインターネットの普及は凄いものがあります。君たちももうすぐ触れることになるでしょう。

 インターネットでは、かなりのことが調べられます。最近中学生が出した本で、毒入りカレー事件を追った『四人はなぜ死んだのか』という本が出ました。

 これは、あの事件の直後に、(食中毒が原因で死んだのではないのではないか? )と疑問に思った著者がインターネットを中心にして調べていく姿を書いた本ですが、可能性が良く分かります。

---------- 余談開始 ----------

 インターネットに関しては、とにかく凄い時代がやってきたなあというのが実感です。

 かつて、頭がいいというのは、「多くの知識を持っている」ということでしたが、コンピュータの普及により、膨大な知識を覚えていても、それはコンピュータには勝てないということが分かりました。しかもその知識は簡単に正確に取り出せます。

 すると、頭がいいと言うことは、さっと取り出せる知識をどのように使えるかということがポイントになります。

 さっと取り出せるというのは、簡単なコンピュータの操作でできるということなのですが、実は、ここにもう一つ鍵が隠れています。

 それは、どういう観点で捜すかと言うことです。膨大な知識の海のインターネットですが、その海を目の前にして何を手がかりに捜していけばいいのかが分からないと、コンピュータの操作は簡単ですが探し出すことはできません。

 つまり、不思議に思うこと、なぜなんだろうと思える力がこれからの頭のいい人の条件になるのではないかと思っているわけです。

---------- 余談終了 ----------

 調べ始めると面白くなってしまって、ついついそれに没入してしまう場合もありますが、間違えてはいけません。

 調べるために調べているのではありません。書くために必要だから調べているのです。先を急ぎましょう。

柱を立てる

 苦労して調べたものは、これから書く作文にすべて使って書きたいと思うのは、気持ちの上では良く分かります。

 ですが、すべてを盛り込んだ作文は、ピントがぼやけてしまって読んでいる人に訴える力がありません。ちょうど編集のされていないままのビデオをだらだらと見せられているようなものです。

 ですから、中心に書きたいことを絞りましょう。これを柱を立てると言います。今回は、原稿用紙3枚書きます。柱を三つ立てましょう。

つづく

書く順番を決める

 柱が立ちました。その次は、その内容をどの順番で書くかということです。

 幾つかのパターンがありますが、私は大きく分けて3つあると思います。(授業では2つしか教えていませんが)

  1. 出来事の起きた時間順に書く。
  2. 一番インパクトのある出来事から書く。
  3. 関係のなさそうなものを書いていきながら、最後に共通項でつなげて書く。

 君たちが書いた感想文の中で一番多かったのは、「1」です。ところが、この「1」で書かれている作文は、君たちの評価によると、読みたくない作文の形式になっています。

 つまり、「1」は書きやすいかもしれませんが、読む方からすると読みたくはない形式のようです。

 君たちには「2」の形式を勧めました。三つの柱をどの順番で書いたら、読む方が読みやすいかを考えて順番を考えるように説明しました。

 この場合の読みやすいとは、「続きが読みたくなる」ということです。

 そのために、各柱に「小見出しをつける」ことを指示しました。ディベートでは、ラベリングといいましたね。自分の言いたいことを一言で簡潔にまとめることでした。

 柱の内容をかんたんにまとめたものをはじめに書いておくと、読む側が作文の先を予測したり、期待したりして読むことができます。すると、「続きが読みたくなる」わけです。

 「3」は、君たちにはまだ勧めませんでした。この方法は、うまく決まると実に素晴らしい文章になります。

 中には、この方式で書いて素晴らしい作品を仕上げる人もいるでしょう。んが、この方法で書く場合、「2」の方法のやり方を身につけておくか、少なくとも知っていないと、何が言いたいのか訳が分からない文章になってしまいます。そこで今回は、「2」の方法を先ず、体験して貰ったわけです。

 ちなみに、「3」の方法で書かれた名文で、君たちにお勧めの本と言えば、向田邦子さんの『父の詫び状』でしょう。

 全く関係のないようなビーズを針で拾っていき、最後に糸をピント伸ばすと綺麗な作品に仕上がっているような作品が、たくさん載っています。

 順番が決まったら書き始めます。
 書き始めの三行が勝負です。

 学校と言うところは、教育の場ですのでクラスに40人がいれば、40人の文章は全部先生は読みます。しかし、世の中に出るとそう言うことはありません。

  1. 読みやすい文章。
  2. 読みたくなる文章。
  3. 読まなければならない文章。

だけが読まれます。3は、仕事に関係する文章です。ただし、3であっても1と2は必要になります。

 ま、40の作品があれば、タイトルで2〜3割に絞られて、最初の数行を読んで1割に絞られ、全部読んで貰えるのは、1,2編ぐらいではないでしょうか。

 まとめましょう。
 その1,2編に入るには

  1. 印象的なタイトル
  2. 何だろうと思わせる書き出し
  3. 読みやすい文字、レイアウト
  4. しっかりとした内容

が大事だということです。

 つづく。

書き出す

 小説家は、

 「タイトルと書き出しで勝負する」
 とよく言われています。私たちは小説家ではありませんが、参考にすることは大事です。

 いろいろな方法がありますが、ここでは一つ示したいと思います。それは、

 会話文、心内文から入る

 ということです。
 これを行うと次の二点が達成できます。

  1. いきなり事件の山場に入れる
  2. 読者をおや? っと思わせることができる。
 です。
 次の二つの文章を比べてみて下さい。
a
合唱祭の成績の発表の瞬間が近づいてきた。実行委員の先輩がステージに向かっていく。私は最優秀賞は絶対うちのクラスだと思ってた。(あ〜神様!)この時は祈りに祈った。
 
b
(あ〜神様!)この時は祈りに祈った。実行委員の先輩がステージに向かっていく。私は最優秀賞は絶対うちのクラスだと思ってた。合唱祭の成績の発表の瞬間が近づいてきた。

 文の内容はすべて同じでありますが、印象は全く違うのではないでしょうか? いきなり
 
(あ〜神様!)
 
と書き始めてあれば(なんだろう?)と思って、この先を読んでいきませんか?
そしてこれで事件(この場合、合唱祭の成績発表)の山場に入れるのです。

---------- 余談開始 ----------

 手書きで文章を書く場合、途中で思いついたことを書き足すのは結構面倒な作業です。文章に書いているときのリズムというのも大事ですので、一度書き始めたらできれば一気に書いてしまうことが大事です。

 中途半端に覚えている漢字でも、辞書を引くよりは曖昧(あいまい)で良いですから書いてしまうことの方が良いようです。そして、その漢字の横に線を引いておき、後で見直すときに辞書で確認すればいいのです。

 しかし、これも君たちがワープロを本格的に使い始めると、かなり改善されると思います。私もこの文章を書くときに何回も書き直しつつ書いていますが、書き直すことに何の苦痛も感じませんから。

---------- 余談終了 ----------

推敲する

 書き終わった文章を、確認してさらに良いものにするために練り上げることです。
 一番簡単で確実な方法は、

 自分で声を出して読み直す

 ことです。ポイントは、声に出して読むと言うことです。こうすると文章の流れに澱(よど)みがあるかないかが良く分かります。
 また読み直すときはできれば、

 書き上げてから一日以上時間をおいてから読む

 ということが大事です。
 書き上げたばかりの文章は独特の熱を持っています。また、書き上げた本人にも完成させた熱い思いがあります。そこで書いた本人には非常によい文章に思えるものです。しかし、読むのはあなたではなくて他人です。他人にはその熱が伝わりません。

 一日おいて読み直すことで、その熱が冷めたころに読めます。そうすると書いていたとき、書き上げたときには気が付かなかった文章のアラを発見することができます。

 私の場合、奥さんに読んで貰ってます。読んで貰える人がいる人は、やってもらうといいですよ。

正式なタイトルをつける

 書き始めの時には、仮のタイトルを付けておきました。とりあえずのタイトルを付けておかないと、書きにくいと言うこともあるからです。

 ところが、最初からキチンとしたタイトルを付けてしまうと、それに縛(しば)られて、文章に伸びが出ないこともあるのです。

 そこで書き終わった今、正式なタイトルを付けるのです。では、タイトルとはいったいなんでしょうか?

 書く側の人から考えれば、「書いてある文章を一言でまとめたもの」となります。つまり、ディベートのラベリングですね。

 しかし、読む側の人から考えればタイトルは
「読みたい文章を探すための情報」
となるわけです。

 タイトルの付け方はいくつかあります。ただ、次のことは守らなければなりません。
 
 何について書かれているものか、タイトルを読んで「ある程度予想」できるもの。
 
です。

 当たり前と言えば、とても当たり前ですが自分勝手なタイトル過ぎて、読む方がなんのことだか分からないということがあります。そのことを防ぐために、「副題」をつけることもあります。たとえば、

『封筒が開いた!』
 というタイトルを見て、君たちは何を思うでしょうか? プロ野球のドラフト会議を思う人もいれば、ディベートの肯定側と否定側を決めるくじを思う人もいれば、お年玉の中身を確認するときを思い浮かべる人もいるでしょう。

 ということは、逆に言えば何について書かれた文章なのかが分からないということなのです。ここに副題として、

 『封筒が開いた!』
  ーー合唱祭 発表の瞬間ーー
 と入れば、
 (そういうことか)
 とほとんどの人は納得してくれるでしょう。

 しかし、なぜ封筒なのか? が分かりません。このように(なんだろう? )と思わせる部分があったほうが本文を読みたいと思わせることができていいのです。ですから、「ある程度予想」と書いたのです。

 では、タイトルの付けかたがうまくなるためにはどうしたらいいでしょうか? 私は三つの訓練の方法を考えています。

 一つめは、いくつものタイトルを見てみて、なぜこのタイトルが良いのか考えてみるという方法です。

 以前書きました向田邦子さんのエッセイには『父の詫び状』というのがありますが、他にも『夜中の薔薇』とか『眠る盃』などがあります。これらのタイトルと文章の関係を見ると、
 (なるほどもっともだ)
 と勉強になることがたくさんあります。

 二つめは、人につけて貰うというものです。

 自分で書いた文章に、自分でタイトルを付けておきます。そして、タイトルを見せないで友だちに自分の文章を読んで貰い、そのタイトルを考えて貰います。すると、自分では思いも付かなかったタイトルを貰えることがあります。

 三つめは、世の中にある文章に自分でタイトルを付けてみると言うことです。

 たとえば、新聞のコラム(一枚目の一番下の文章)などは特にその日のタイトルがついていません。そこにタイトルを付けてみるのです。
 もし、それが辛いのであれば新聞の四コマ漫画でもいいでしょう。その日その日の「コボちゃん」にタイトルを付ける。一ヶ月もやればかなり力が付くはずです。

つづく

いろいろな人に読んで貰って、感想を貰う

 タイトルもできてやっと文章が完成しました。いよいよ、読んで貰うことになります。

 学校で書いた文章の第一の読者は、一般的には先生になります。

 私は君たちの文章をたくさん読む機会があります。なかにはとても面白い文章、ためになる文章、うなずく文章があります。もっと言ってしまうと、ファンになってしまうぐらいうまい文章もあります。

 (これを私だけが楽しむのは良くないなあ)

と思ってかつては

  1. ワープロに打ち込む
  2. 文集にする
 などをしてきましたが、これはかなり負担がありました。私に負担があるとどうなるかというと、君たちに文章をたくさん書かせることができなくなってしまうのです。

 インターネットの世界ではメーリングリストという、簡単にいうと「電子交換日記」があります。そのメーリングリストでは、そこに参加している人たちの意見にコメントをつけることができます。

 このとき、自分の書いた文章にコメントが付くととても嬉しいものです。

 あるとき、(これだ!)
 と思いました。そうです、あの「書き込み回覧作文」です。

 教室を一周して返ってきた自分の原稿用紙を手にしたときはどんな思いでしたか? 嬉しかったでしょう(^^)。

 楢原中学校も、教育委員会の予定では来年か再来年にはコンピュータ室のコンピュータも新しいものになります。そのコンピュータはインターネットに接続できるものになる予定です。

 しかし、インターネットにつながったとしても、それを使いこなすための基本ができていなければ宝の持ち腐れです。また、使いこなす基本ができていても、インターネットの向こうにいる人たちに伝える内容を持っていなければ、これも持ち腐れになります。

 二学期の後半は、合唱祭の作文を学校のコンピュータを使ってワープロの文章に変換しフロッピーに保存しました。授業中にも話しましたが、これによってワープロを使いこなすための基本であるタッチタイプを学びました。また、フロッピーに保存することで、個人文集が作れるようになり、クラスのフロッピーに保存し、これをまとめることで学年の文集ができるようになるのです。

 そうしておけば、楢原中学校のコンピュータがインターネットにつながったとき、君たちの作文を、すぐに全世界の人たちに見て貰えるようになるわけです。

 まさに、「いろいろな人に読んで貰って、感想を貰う」ができるようになるはずです。

 しかし、この連載で私が常に言い続けてきたように、全世界の人が読んでくれる環境ができたとしても、全世界の人は「面白くて、読みやすい」文章しか読んでくれません。

 そうであるからこそ、読まずに入られなくなる文章を書ける力を育てていきましょう。そうすれば、全世界の人と、コミュニケーションする喜びをたくさん得られることになると思います。

 今回の授業で触れられなかったものは、「構成・内容の比率」「箇条書きの使い方」「枠囲い」「レイアウト」「フォント」「イラスト」「図示」などがあります。これらは更に読みやすい文章にするために、大事なポイントです。

 君たちの成長の様子を見ながら、教えていくことにしましょう。

 次号は、ここまでをまとめます。


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